days of cinema, music and food

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Coraline


ヘンリー・セリックのモデル・アニメーション映画の新作『コララインとボタンの魔女 3D』に行って来ました。
土曜13時55分からの回、ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘の劇場は、ほぼ満席。
子連れが目立ちます。
映画が終了後は、あちこちで「怖かったー」という声が上がっていました。


そう、ニール・ゲイマン原作による本作は、グロテスクなヴィジュアルとブラック・ユーモアが満載されたファンタシー映画。
現実世界では余り両親に構ってもらえない少女コララインが、越してきた新居で謎のドアを発見。
夜中にそこを通り抜けると、両親・近所の人々が優しく、楽しく接してくれるのです。
但しその世界の住人は、目の代わりにボタンが顔に付いているのです*1


現実世界はモノトーン。
ドアの向こうはカラフルな色使い。
向こうの世界は夜なので、カラフルな色が映えつつも下品になりません。
この色彩設計が素晴らしい。
モデル・アニメーションも近年の作品らしく、複雑なキャメラワークとCGの助けもあって、緻密なものとなっています。
アニメーションらしく飛躍と省略が目立つ映像ですが、同時に詳細なデティールも目立っています。
例えば冒頭。
ボタン目の人形が作り変えられる様子を丹念に映し出したもの。
この場面の意味は映画の終盤になってようやく分かるのですが、人形の手によって人形が再生されていくという趣向になっているのです。
しかもかなり怖い。
映画の基調はこの場面で打ち出されました。


極端で個性豊かな登場人物、カラフルな色彩、目を奪うようなアニメーション、ブラック・ユーモア、テンポの良い語り口、スリリングな展開。
これらが溶け合い、交じり合った本作は傑作です。
ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』が素晴らしい映画になったのは、ヘンリー・セリックの手腕によるのものだったと、本作を観た方ならば納得がいくことでしょう。
「やっぱりお家が一番」「何でも代償はあるのだよ」といったテーマを、分かりやすく且つ大人も楽しめるような味わいに仕上げたところに、この作品の面白さがあるように思いました。


尚、本作は日本では吹き替え・3D版のみの上映。
ダコタ・ファニングテリー・ハッチャーの声を聞こえないのが残念ですが、映像を楽しむ事に集中出来るのは有難い。
座席は左手後方だったからか、画面右側が若干暗く観えました。
3D映画は画面が暗くなると目立つのです。
その3D効果は、時折り飛び出すような描写がありましたが、ミニチュアモデルによる背景の作り込みが凄いのが分かる、奥行重視の映像主体でした。
これも近年の3D映画らしいと思いました。

*1:以前ご紹介したジョー・ヒルの傑作短編集、『20世紀の幽霊たち』収録の『年間ホラー傑作選』を思い出させます。嫌悪と恐怖で心かき乱される傑作・怪作です。