days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Peter Gabriel "Scratch My Back"


先日予告したようにピーター・ガブリエルピーター・ゲイブリエル)初のカヴァー・アルバム『スクラッチ・マイ・バック』邦盤がリリースされました。
収録曲は次の通りです。

  1. Heroes (David Bowie)
  2. The Boy in the Bubble (Paul Simon)
  3. Mirrorball (Elbow)
  4. Flume (Bon Iver)
  5. Listening Wind (Talking Heads)
  6. The Power of the Heart (Lou Reed)
  7. My Body is a Cage (Arcade Fire)
  8. The Book of Love (The Magnetic Fields)
  9. I Think it's Going to Rain Today (Randy Newman)
  10. Apres Moi (Regina Spektor)
  11. Philadelphia (Neil Young)
  12. Street Spirit (Radiohead)


1はデヴィッド・ボウイの名曲ですね。
2はポール・サイモンの1986年の大ヒットアルバム『グレイスランド』からの2ndシングルとしてリリースされた曲。
知っている筈なのですが、今回の演奏ではまるで記憶にありません。
5はデヴィッド・バーンブライアン・イーノの作曲。
弟が持っていたトーキング・ヘッズのアルバムに入っていたかと思います(曲自体は記憶無し)。
9はランディ・ニューマンのデヴュー・アルバムから。
11はジョナサン・デミ監督、トム・ハンクスデンゼル・ワシントン主演の映画『フィラデルフィア』のテーマ曲です。
12はレディオヘッドのヒット曲です。


…と、元々の曲は有名アーティストのものだったりするのですが、私が知っていた(記憶にあった)曲は1、8、11ぐらい。
1なぞは歌詞をよくよく聴くと、確かにあの曲だと気付くといった按配でした。
ぼーっと聴いていても分からなかったでしょう。
それもこれも、このアルバム、演奏が全てオケだからなのです。


ピーガブ曰く「アーティストは自由を与えられるよりも、何か制約があった方が良い」とのことで、今回自らに科したのは「ドラムとギターはなし」という条件でした。
じゃぁキーボードとベースのみ?といった方向に進まずに、オーケストラ演奏になっています。
そのオケは弦と金管のみ。
木管や打楽器はありません。
しかも8でのコーラスで娘メラニーが参加しているのと、一部コーラス隊が入っている曲を除き、全てピーガブ1人でハモりも無く歌っています。
こんなアルバムなので、聴き易いかどうかと言われると、「聴き易くはないアルバムです」と答えざるを得ません。
そう、このアルバムを聴くのは、ソロピアノとヴォーカル1人のみのジャズ・アルバムを聴くのに似ています。


ではダメなアルバムかというと、もちろんそんなことはありません。
やや声域の狭いしわがれ声には、年輪を重ねた温かみが加わりました。
その声が弦と金管主体の地味な音色に乗せられると、暗闇に仄かな灯りが見えるようで心地良い。
余りの心地良さで、最初はアルバム中盤でうたた寝をしてしまったくらいでした。
知っている曲もそうでない曲も、ピーガブの曲として繰り返し聴けます。
噛めば噛むほどスルメのように味が出る、などと言う常套句を使いたくなるのが、『US』以降の彼のソロ・アルバムですが、本作もその中に入れておきましょう。


このアルバムの対比として、原曲を歌ったアーティストたちが、ピーガブの曲をカバーするとのこと。
タイトルは『スクラッチ・ユア・バック』になるそうです。
また、ピーガブ自身もソロアルバムの準備を始めているとのことです。
まぁしかし、2002年の『Up』リリースの際には「半年以内に次のアルバムを出す」と言って7年半も経ってしまった彼のことですから、気長に待つ事にしましょう。


スクラッチ・マイ・バック

スクラッチ・マイ・バック

日本盤には英詞・日本語対訳の歌詞カードが入っていません。
ピーガブ自身のライナーノーツ和訳、ちょっとした解説以外は、輸入盤と差異は無さそうですね。