days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Heavy Rain


PLAYSTATION 3のパッケージ・ゲームを購入したのは久々です。
HEAVY RAIN -心の軋むとき-』を10時間程度でクリアしました。
いわゆるアドベンチャー・ゲームをプレイするのは初めてでしたが、中々楽しめました。


雨季に子供を溺死させ、現場に折り紙と欄の花を置いていく折り紙殺人鬼(Origami Killer)。
どうやら自分の息子が殺人鬼にさらわれたらしい建築家のイーサンは、犯人から提示された試練を乗り越え、必死になって息子を救出しようとします。
FBI捜査官のノーマンは最新鋭の捜査技術ARI(Added Reality Interface)を用い、現場に残された証拠から犯人を追います。
不眠症に悩まされているジャーナリストのマディソン(キャリー・アン・モス似)もまた、事件を追い、イーサンに接触します。
元警官である私立探偵のスコットは、事件の調査依頼を受け、被害者である子供たちの遺族に会い、事件を追います。


劇中は序章後の現代では常に雨が降っており、音楽もストリングス主体の重たいオーケストラ。
そう、ハワード・ショアのあの重苦しい、『セブン』の音楽です。
音楽だけではなく、『セブン』からの影響が非常に大きいのも特徴です。
あの映画でブラッド・ピットモーガン・フリーマンがジョン・ドウの部屋のドアを蹴飛ばして入る場面や、足を使った追跡場面など、このゲームにはあの映画と似た場面が幾つかあります。


イーサンが取り返しの付かない悔いを残し、また心に傷を負う序盤はゆったりしていますが、誘拐事件が起きてからの展開は速く、次が気になる話運びになっていて、止め時が難しいです。
スリリングな恐らくは『24』などのテレビシリーズと、プレイヤーが操作するゲームの融合がこのゲームの開発目標だったと思われます。
プレイしていて続きが気になるという点で、このゲームのプロットは成功しています。
但し、面白いというのとはちょっと違うかも知れません。
嫌な展開で嫌な気分になるのではないか、そうならないように、と頑張ってプレイしてしまう感じです。
こういった体験は緊張感のある独特のものでした。
頻繁に出て来る分岐でプレイヤーが決断した結果が、物語に影響を及ぼしていくようなのですが、当然ながらフローチャートがある訳ではないので、決断と分岐の実感は薄い。
デッドライジング』では物語のフローチャートが表示されるのを思い出しましたが、今回はそれがなくて正解でしょう。
よってゲームをしているという実感よりも、ドラマを見ているという感じが強く、「ゲームをしたい」という向きには余り歓迎されないゲームとも言えます。


物語主体のゲームですが、主人公4人を操作する場面は結構あります。
皿を並べたり、目玉焼きを作ったり、歩いたり、時には走ったり、物を取ったり、ドアを開けたり、傷の治療をしたり、相手と戦ったり。
日常の動作から生死に関わる危機的状況まで、画面に表示されるアイコンで色々な操作を求められます。
PS3のコントローラーはXbox 360のそれに比べ、特にシューティング系では使いにくく、違和感を感じていましたが、スティックや各ボタンを画面に合わせて押したり操作したりするこのゲームでは、特に問題ありませんでした。
操作する人物が決断を迫られる数々イヴェントでは、中々緊張感を味わえます。
必死の格闘やカーアクション、殺人者との対決などでコマンド入力を要求されると、冷や冷やしました。
というのも、このゲームにはゲームオーバーの概念が無く、極端な話、主人公4人が全員死亡しても物語は続く、と聞かされていたのです。
となると、どうしても殺されてたまるか、と思ってコントローラを持つ手にも力が入ろうというもの。
特に危機的状況下においてスプリット・スクリーンになると(これも『24』の影響でしょう)、操作している人物が映っている画面と、迫り来る危機が映っている画面が同時に目に飛び込んで来て、こちらの緊張度も高まります。


ではゲームらしい楽しさが無いのかというと、そうでもありません。
私はFBIの捜査技術ARIを使っての捜査が楽しめました。
犯行現場などで痕跡や証拠を見つけ出し、ヴァーチャル・リアリティ空間で分析します。
ここだけ近未来SF映画のようになっていて、ゲームならではの飛躍が面白いものとなっています。


グラフィックは人物のアップなどはかなり精巧だと思います。
またプレイアブルでないイヴェントでの動きもモーション・キャプチャーされているだけあって違和感が無いのですが、プレイアブル画面に切り替わるといきなり人物が棒立ちになっていて、興が削がれます。
テレビドラマとゲームの融合という点で、余りまだうまく行っていないのでは、と思いました。


本作の肝は、朝起きてシャワーを浴びたり(海外版ではトイレに入って用を足したり出来るようです)、服を着替えたりといった日常の動作を、プレイヤーの意思で行えることにあります。
こういった操作を煩雑だと思うか否かで、登場人物に対する共感度も変わってくることでしょう。
一方、人物を歩かせるのに一苦労する方も多いと思います。
画面は3Dで多少はキャメラが動きますが、アングルはほぼ固定。
これはシネマティックな効果を狙ったということでしょう。
その中を歩く場合、『バイオハザード』1-3までと同様のいわゆるラジコン操作で人物を操作するので、真っ直ぐ歩くだけなのにある程度の慣れが必要です。
操作を誤ると直進すら難しい。
よってシリアスな場面なのに、仏頂面した人物が背筋をピンと伸ばしてあっちへひょこひょこ、こっちへひょこひょこ歩く笑える場面に変貌することもしばしば。
Lスティックで方向を定めながら、R2トリガーで歩かせる(もしきは走らせる)という操作が、難易度を高めています。
普通にLスティックを倒して歩かせるので良かったのでは、と思いました。


各所で話題になっているバグですが、私もアップデート後にも関わらず遭遇しました。
1つめはグラフィックのバグ。
序盤でイーサンが自分の子供を肩車するくだりがあるのですが、肩車した子供のお腹からイーサンの顔面が飛び出ているのは笑えます。
2つ目は音飛びで、ときたまありました。
デフォルトは日本語音声のみで字幕は無し。
しかし私は日本語音声+日本語字幕表示にしていたので、会話の途中で音がぶつぶつ途切れても、字幕で内容を追うことが出来たのは幸いでした。
3つ目はセーブデータのバグ。
チャプター5が終了し、チャプター6に入ってセーブ中のアイコンが終了後、通常手順でゲームのメインメニューに戻り、ディスクを停止し、本体の電源をメニュー上から切断したのですが、翌日、そのデータをロードして続きを開始出来ませんでした。
3度やっても画面が真っ暗で何も始まらず、PSボタンを押しても何も起こらないので、仕方なく電源を強制切断。
再起動し、クリア後のチャプターは好きな箇所をプレイ出来るので、直前の箇所を選択して再開。
やり直したイヴェントもありましたが、止むを得ません。


日本版はCEROの規制により、シャワー場面などでのヌードや、セックス描写(海外版では操作します)がカットされています。
恋愛という要素も人物への感情移入の観点からしても大きなものであるだけに、また開発者のインタヴューなどを読むと、大人向けのポルノではないゲームとして必要な要素だと言っていることから、削除は残念なことです。
ただ、1度クリアすると英語字幕でも内容は理解し易いでしょうから、どうしても規制がイヤだという方は海外版を購入して遊ぶ、という手もあります。
20種以上のマルチエンディングらしいので、海外版でも新たな発見があって楽しめるのではないでしょうか。


取り敢えずクリアすると、憤怒の思いを抱いたままの人物もいたので、やや苦味の残る結末でもありました。
しかしこれも含めて、私なりに納得の行くエンディングを迎えられました。
HEAVY RAIN』はぎこちないところはあるものの、総じて満足度は高いゲームだったと言えます。


Heavy Rain (輸入版:北米) - PS3

Heavy Rain (輸入版:北米) - PS3