days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Sherlock Holmes


日曜朝10時10分からの回、30人弱の入りでしょうか。
映画『シャーロック・ホームズ』を観ました。
この名探偵が活躍するアーサー・コナン・ドイルの小説に夢中になった方は多いかと思いますが、私もその1人。
因みに妻はルパン派で、私はホームズ派。
モーリス・ルブランのルパンも面白く読めましたが、登場するホームズ像はコナン・ドイルも文句を言ったというくらいに悪意に満ちたものでした。
その点が印象を悪くしています。


とは言え、小説のホームズ像も奇人変人そのもので、余りお近づきにはなりたくない類の人でもあります。
アヘン中毒で室内で銃をぶっ放し、深夜にヴァイオリンを弾くというはた迷惑さ。
そりゃワトスンも出て行くわ、というのは事情は少々違うもの(結婚して出て行きますからね)、そういったホームズ像を本作に取り入れているのが、実はホームズ好き、もしくはかつてホームズ好きだった人に対しても敷居を下げている要因になっていると思います。
というのも、もし本作の予告編をタイトル無しで観たら、まず間違いなくホームズが主演の映画に見えないから。
大体にして演じるのはアメリカ人のロバート・ダウニー・Jrです。
何で小柄な彼がホームズを演じるの、と言いたくなりますが、映画を観たら納得してしまいました。
前述したような奇行が目立つ皮肉屋で頭脳明晰、かつ推理をいちいち述べるのは原作像に近いものですが、今回のホームズは小回りが効く武闘派。
頭も動けば口も動き、同時に身体も動きます。
まぁしかし、原作のホームズも武術の達人でもあったのですから、いささか拡大解釈な面はあっても、大きく外れている訳ではありません。
だからダウニー・Jrでも良かったのでしょう。


となると、軽めのホームズに合うワトスンとして、ジュード・ロウもぴったり。
いささかツンデレ気味のワトスンは、これまた元軍人なので身体が動くという設定。
原作ではいささかホームズに馬鹿にされていた感のある彼が、ここでは結構頭も良く見えます。
また、原作ではホームズの身長が180センチ(190センチとの説もあり)なのに対してワトスンは175センチ(165センチという説もあり)。
IMDbではダウニー・Jrが174センチ、ロウが182センチとなっていて、身長差が逆転していますが、しかしこれもまた、役柄の違和感の無さでOKでしょう。
ホームズがアイドルだった私は大人になったら身長が180センチ欲しかったのですが、残念ながら2センチ足りなかったのを思い出しました。


閑話休題
ホームズとワトスンが動くのだったら、ホームズが唯一惚れた女性とされているアイリーン・アドラーも、利発なレイチェル・マクアダムスが演じていて、これはもう映画の路線は決まったようなもの。
身体が動く主人公2人と活動的な女性を得て、映画は派手なアクションと爆発が連発する娯楽大作になっています。
ここら辺、プロデューサーのジョエル・シルヴァーの趣味もあるのでしょう。
ガイ・リッチーらしくやや神経症気味の編集が気に障る瞬間もありますが、猛スピードで駆け抜けようとします。
観ている間は左程退屈しないし、派手な特撮による迫力ある瞬間もあるものの、思っていたよりも物語が弾まず、特にスリリングと感じることはありませんでした。
どうも話運びに乗れなかったようです。
主人公がドンピシャな推理を発揮する映画で面白い映画は、実は少ないように思えます。
最近だと『ダ・ヴィンチ・コード』や『天使と悪魔』、あるいは少々以前のだと『ダイ・ハード3』とか。
これは主人公の解説の時間を、ただ単に観客が眺めるだけの時間になってしまうからでは、という気がします。
そこを何とか面白く見せてくれれば、シドニー・ルメットの傑作『オリエント急行殺人事件』のようにワクワクさせられるのですが、ガイ・リッチーはそこら辺に余り興味が無かったのか。
ホームズの推理を、重要事件も些細な事項も、ただただ並列に羅列しているだけに見えました。


悪役のマーク・ストロングは如何にもな悪党振りを見せてくれますが、元気な主人公たちに対して魅力に乏しく感じました。
ホームズとワトスンに時間を取られて、単なる類型的な悪役像から抜け出ていないからでしょう。
またハンス・ジマーの音楽は面白いと思いつつ、使われ方が過剰でうるさく感じました。
これはジマーの責任だけではなく、ガイ・リッチーのセンスの問題でもあります。


ともあれ、早くも来年製作予定の続編が決定しているとのこと。
1度観れば十分な映画ですが、次回作も気楽に楽しみたいと思います。