days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Shutter Island



午前中に観た映画で気を良くし、昼過ぎからも映画鑑賞。
映画は大好きな監督マーティン・スコセッシの新作『シャッター アイランド』でした。
12時30分からの回は20人程の入りです。


1950年代のボストン近郊にある島は、精神異常の犯罪者ばかりを集めた監獄精神病院となっています(アーカムアサイラムみたいなものですね)。
厳しい自然環境と厳重な監視により、誰も出られないシャッター・アイランドと呼ばれていたのです。
そこにやって来たのが、密室から忽然と消え去ったという女囚人の事件の捜査にやって来た連邦保安官レオナルド・ディカプリオとその相棒マーク・ラファロ
事件を捜査する内に、ディカプリオには別の目的があるらしいことも分かって来ます。


映画本編の上映開始前には、仰々しくも「この映画にはだまされないで下さい」とばかりに注意書きがしつこく出て来るのが、まずは興ざめです。
こんなことをされたら、純粋に映画そのものを楽しめなくなってしまうではないですか。
実際に観てみるとネタは途中で分かってしまいます。
デニス・ルヘインの原作は未読ですが、スコセッシが真面目かつ丁寧な映像作りをしているので、まぁ予想が付いた方も多いのではないでしょうか。
となると、予想された結末を越えたネタが待ち受けているかどうか、が最後まで観させる最大の興味となるのでしょうが、残念ながらそこまでは行きませんでした。
しかし結末の苦さは心に残るものです。


近年のスコセッシは往年の新しいものを見せてくれるような前衛性やパワーが失われつつありますが、それでも力量自体はさすが。
大袈裟なキャメラワークや編集、音楽の使い方など、一昔も二昔も前の怪奇映画を観るかのような楽しさに溢れています。
これを楽しめるかどうかで、古臭い映画に感じられる向きもありそうです。
実際、午前中に観た新人映画の新しいパワーに比べると、古臭さは否めません。
しかしこれは大ヴェテラン監督の華麗なる技を余興として楽しむ映画とも言えそうです。


スコセッシの盟友、ロビー・ロバートソン音楽監修によるリゲッティとブライアン・イーノの音楽が同居した世界は、中々快適な悪夢として創造されていて、これはこれで面白い。
そして世界を彩るのは、ベン・キングズレーマーク・ラファロマックス・フォン・シドーパトリシア・クラークソンテッド・レヴィンミシェル・ウィリアムズエミリー・モーティマージャッキー・アール・ヘイリーイライアス・コティーズジョン・キャロル・リンチといった、一癖も二癖もある役者たち。
彼らの演技に比べると、熱演しているディカプリオはここのところの出演作で続いている苦悩演技で、いささか分が悪く見えてしまいます。
彼にはクリストファー・ノーランの新作『インセプション』に期待したいですね。


近年のスコセッシ映画の多くを担当しているロバート・リチャードソンの撮影も、荒れた画と緻密な画、褪せた色彩とリッチな色彩の使い分けもされていて、見ごたえがありました。