days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

MT車の魅力などなど


kajugumiさんやHAMAさんがMT車をそれぞれご購入されたとのこと(こちらとかこちらとか)。
めでたいことです。
納車までもわくわくしますし、納車されてからも運転が楽しくなることでしょう。


私も十数年MT車を運転していますが、もうAT車には乗れない(乗りたくない)ですね。
gumiさんとHAMAさんの御2人の記事に触発されて、当blogに珍しく車ネタを書いてみることにしました。
まずお断りとして、私自身は車に全く詳しくなく、よって特に車好きでもありません。
また、日常でAT車を乗り回していたのも十数年前。
AT車を運転するのは、今ではレンタカーか修理等の代車くらいです。
その度に妙に運転がたどたどしくなります。
MTのときと違って、何故か手元のシフトレバーを見てしまったり。
そんな人間が書くので、かなりバイアスが掛っています。
因みにAT車を毛嫌いしているのでもありません。
飽くまでもMT車が好き、という話です。
それをご承知の上でお読み下さい。


世間一般では既に過去の遺物か、もしくは余程の車好き用と思われているマニュアル車
実際、新車・中古車問わずに今売られている車の殆どがオートマ車なのが示している通り、実際に運転している方の割合はかなり少ないと思われます。
ブレーキランプを見るとAT車MT車か分かる場合も多いのですが、やはり街を走っている車の殆どがAT車のようです。
レンタカーではまずお目に掛かれませんし、私の周りでも運転している人は1人も居ません(もっとも、周りは都心在住の独身者というそもそも車が要らない人か、家族持ちが殆どなので、MT車を持っている層と余り重ならない可能性があります)。
特に都心では渋滞が多いので、よく「マニュアルは疲れるからイヤだ」などと敬遠されてもいます。


しかし本当に渋滞だとMT車は疲れるのか。
私自身の経験では、MT車だから疲れるというのは殆どありません。
AT車でもMT車でも、渋滞時には右足のアクセルとブレーキを踏んだり離したりが主な動作となります。
渋滞だからと言ってシフトチェンジを頻繁に行うなど、殆どしません。
本当の渋滞時は、大体1速か2速の切り替えくらいで、動作の殆どが右足の切り替え。
AT車でも渋滞時は右足を頻繁に使うではないですか。
クリープ現象があっても、いつでもブレーキを踏めるように右足を待機させておくでしょう。
よって右足が疲れるのは、トランスミッション方式に関係ありません。
これは実家のAT車を借りたときに実感したことです。
MT車だから疲れるというのは、思い込みに過ぎないのではないでしょうか。


シフトレバーによるギアチェンジが面倒臭い、という声もよく聞きます。
なるほど、オートマ車だと車が勝手にギアチェンジしてくれますからね。
ハンドルとアクセル、ブレーキにだけ気を付けていれば良いので、楽と言うのはありましょう。
それに比べてマニュアル車では、加えてギアチェンジしなければなりません。
いちいちエンジンの回転に合わせて変えなくてはならないので、面倒というの声も分からなくもありません。
でも考えてみましょう。
AT車は車が勝手にやってくれますが、MT車は自分でやらなくてはならない。
つまり「AT車は車に乗っている感じ。MT車は車を運転している感じ」なのです。
これが私自身が考えるMT車最大の魅力です。
単純に乗っているのではなく、自分で制御している。
これは実感として大きく違います。
アクセルを踏み込むと、勝手にどんどんスピードが上がるAT車
アクセルを踏み込んでも、ある程度のスピード以上は勝手に上がらないMT車
これは全く違います。


スピードを出す場合だけではありません。
MT車だと微調整も楽ちん。
例えば、段差のあるバックでの車庫入れなどのアクセルに微調整が必要な場合、AT車だとアクセルを吹かしてしまうか足りなくなるかになることもあります。
前者の場合だと危険ですし、後者の場合だと段差を乗り越えられません。
しかしMT車だと、半クラッチを効かせながら少々の段差など自分で調整しながら簡単に車庫入れも出来ます。
まさに自分で運転している感覚です。


MT車だと坂道発進が面倒だし危ない、という声もあります。
はい、それは認めましょう。
半クラ坂道発進する方も多いと思いますが、私も同様。
しかも半クラが得意だったのが災いして、クラッチを交換する羽目になったこともあります。
AT車クラッチ交換など、殆どあり得ないですからね。
今住んでいる界隈は立体駐車場が多く、週末の日中は渋滞も珍しくない状態です。。
立体駐車場の坂道での半クラ発進がクラッチに負担を掛けているのは、想像に難くありません。
しかも以前乗っていたホンダ コンチェルト(通称「コン太」と呼んで楽しませてもらいました。その楽しくも悲しいお別れ旅行記事はこちらです)は、クラッチが固くとも手前だったので、半クラも簡単でした。
が、今のっているアウディA4 クワトロ(通称:トロ)は、買った当初はクラッチがすり減っているのか??と思ったくらいにかなり奥で繋ぎます。
よって坂道発進半クラは少々難しい車種になっています。
取扱説明書にも、半クラはやめてね、と書いてありますが、さてコン太はどうだったのかな。


エンストが怖い、イヤだ、という声もあるようです。
いいえ、そんなもの怖くも何ともありません。
自慢ではないですが、エンストなどよくやっていますよ(まぁ、たまにですけれども、えへん)。
エンストをするのはまず1-2速の場合。
私の場合は慌ててエンストというのはなく、大体が気を抜いたときに起こしています。
仮にエンストしても、落ち着いてキーを回してエンジンをかけさえすれば良いだけの話。
怖くも何ともありません。
交差点の真ん中だろうが、クラクション鳴らされようが、堂々と再始動しましょう。


こんな面倒なことがあっても、やはりMT車を買って良かったと思います。
今のアウディ自体が乗っていて楽しい車だから、というのもあります。
コン太からの買い替えのとき、妻は「ベンツのS、しかも黒いのが良い」(黒社会ですか…)などと言っていたので中古で探したのですが、予算と気に入った見掛け(これ大事)が合ったものが中々見つかりませんでした。
それでもと、取り敢えずヤナセにてEだったかを試乗したら、これが運転しやすかった。
大きいにも関わらず小回りが効き、取り回しが楽で魅力的した。
運転しやすいし、安心感もあるけれども、何か物足りない。
私にとって最大の欠点は、そうAT車だったのです。
その同じ日に見付けたのが今乗っているトロ。
出会いについては過去記事にあるので割愛しますが、「試乗時の私の表情が全然違う」と妻が言ったくらいに運転が楽しかった。
路面を感じられるくらいに地べたに密接したかのような、力強い4輪駆動の感覚もそうですが、自分の意図したスピードが出るのは、やはり楽しい。
シフトチェンジって楽しいと思わせてくれます。
ベンツは運転していても「乗っている」感じでしたが、こちらは「運転している」感じなのですから。


私のニマニマ振りを観たのと、「ベンツはもっと自分たちが年食ってからにしよう」と変心したのもあって、妻もあっさりとこちらでOKを出してくれました。
どちらも中古とは言え、値段もかなり違いましたからね。
車でローンなどとんでもない、というのもありましたので。
それと妻もMT車を普通に運転出来るというのは大きかったです。


但し、妻は「将来はMT車という縛りよりも、色々な車に乗りたい」と言っています。
今から子供をMT車好きにして洗脳しておきますか。
最近真似っ子の娘は、運転席で運転させろと言います。
運転席は動かすものが多くて楽しいようです(トップ写真)。


近年のMT車がカッコ良かった映画だと、ぱっと思い浮かぶのは『RONIN』と『007/慰めの報酬』です。
何を隠そう、アウディでカッコ良いと思ったのは『RONIN』のフランス南部の市街地での激走カーチェイス場面ですし。

RONIN [Blu-ray]

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この映画のS8を観なかったら、今のトロに乗ることも無かったでしょう。
ジョン・フランケンハイマー監督、ありがとう!
映画後半でのカーチェイス場面でも、シフトチェンジをするショットを挟み込む編集がカッコ良かったです。
この映画によって、フランケンハイマークライヴ・オーウェン主演のBMWのCFフィルムを監督することになりました。
BMWの企画会議でのプレゼンの場で、「まずはこれを観て下さい」とプレゼンターがこの映画のカーチェイス場面を上映し、フランケンハイマーが起用されることになったそうです。
その結果がこの仕事です。

  • BMW Films - The Hire - Ambush


脚本は『セブン』などのアンドリュー・ケヴィン・ウォーカーが、撮影監督がブライアン・シンガー作品のニュートン・トーマス・サイジェルが担当していたりで、WEB限定の短編コマーシャル・フィルムでも何気に豪華です。
このシリーズ、クライヴ・オーウェンを主演にアン・リーら映画監督を起用して話題でしたが、その第1弾がこれだったのです。
広告の車が機銃でバリバリ撃たれたり、衝突してへこんだり、ライトが壊れたりなど、日本のCMだったら考えられないかも、と最初に観たときに思いました。
でも加速や制動など、何気に車の性能をアピールしているとどこかで読みましたが、ナルホド。
ちゃんと広告としての役目も果たしているのですね。


慰めの報酬』冒頭のアストン・マーチンも、シフトチェンジのショットが入る編集でした。
ボロボロになってもカッコ良い〜。

『RONIN』も『慰めの報酬』も、編集の意図としてはリアリスティックで生々しい映像効果を狙ったものでしょう。
シフトチェンジは運転者の肉体と自動車を繋ぐ行為とも呼べるのではないでしょうか。
MT車を「運転する」のは、「一体化する」に近いものなのかも知れません。
これがMT車を運転する最大の魅力ではないでしょうか。


余談です。
機械と肉体の融合というとデヴィッド・クローネンバーグ映画のテーマですね。
カーマニアのクローネンバーグ作品と言えば『クラッシュ』です(『ファイヤーボール』というレース映画もありますが未見なので)。

ヘンな映画でしたが、ハワード・ショアの無機質音楽と相まって私は結構好きです。