days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

"Crouching Tiger, Hidden Dragon" on Blu-ray Disc


「この映画の中国語って、変じゃありませんでした?」
そう言ったのは、かつて中国に留学した友人・涼さんでした。
どういうことかというと、主演のチョウ・ユンファミシェル・ヨーの北京語のイントネーションが変だということでした。
そこで私は彼女に、チョウは香港出身、ヨーはシンガポール出身で、映画の監督アン・リーがDVDの音声解説で「2人の発音は勘弁してやってほしい」と言った旨教えてあげました。


何の話かと言うと、アン・リーのマーシャル・アーツ映画の傑作『グリーン・デスティニー』のことです。
DVD-VIDEOは既に手元に無いので、昨夏Blu-ray Discを買っていたのを、今頃になってようやく観ました。
劇場公開当時、今は無き渋谷東急で観て、アクション場面の激しさと迫力に興奮したものです。
特に映画開始15分後の追撃戦は、タン・ドゥンの太鼓を用いた音楽も効果的で、迫力満点かつアドレナリンが放出されて、何度観ても興奮してしまうのに我ながら驚いてしまいます。
当時書いたレヴュー(こちら)を読み返しても、映画全体をかなり褒めていますね。


私自身のこの映画のイメージは緑です。
邦題に「グリーン」とあるからではなく、またその剣ではなく、竹林の緑のイメージです。
チョウ・ユンファチャン・ツィイーの闘いの場面は、優雅な竹と2人のワイヤーワークによる動き、そして挿入されるスローモーションとキャメラワークによって、忘れがたいものとなっています。


今回のBDでの試聴では、AVアンプPioneer VSA-AX3の音量は-12dbで丁度良かったです。
音量を上げても音はかなり良かった。
タン・ドゥンの音楽、ヨーヨー・マのチェロの響きといった音楽だけではなく、効果音も迫力がありました。
写真の場面など、DVD-VIDEOリリース当時はよくAV系イヴェントにてデモでよく使われていましたが、ここは今回のBD版でも聴き所になっています。
ミシェル・ヨーがとっかえひっかえ武器を変更するので、それぞれの武器の音がバラエティ豊かに聴こえて楽しい。


今見直すと、戦いに疲れた剣士チョウ・ユンファの佇まいが印象に残りますね。
そしてやはりチャン・ツィイーの輝き。
彼女を見出したアン・リーの目利きぶりもさすがです。
彼は後に『ラスト、コーション』という傑作で、タン・ウェイを見出すのですから。
それと何気に見逃せないのが、市場や後半に大立ち回りの場となる食堂などの、市井の人々の活気のある描写です。
食事する場面が元気な映画は、観ていて元気が出て来ませんか。
もっともこの映画は、結ばれることの無い2組の男女の物語ではありますが。


画質は新作映画には負けますが、劇場でのいかにもフィルムライクな映像を髣髴とさせるようで、これはこれで内容に合っていたものだったと思います。
アクションの迫力に吸い込まれるように魅入るのも良し、静かな佇まいのドラマにしんみりするのも良し。
中国では「こんなの武侠映画じゃない」と批判があったそうですが、そうではなく、優れたアクション・ドラマ映画として楽しんでもらいたいものです。
この映画がお好きな方にはもちろんですが、まだ未見の方にもお薦めしたいBDです。