days of cinema, music and food

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archaic "pega-pega"


先日のジャズ・バーでのライヴにて購入した、仙道さおり(パーカッション)と林正樹(ピアノ)のユニット、archaic(アルカイック)の2ndアルバム、『pega-pega』をご紹介します。
先の記事で「聴いてびっくりした」と書きましたが、さて何にびっくりしたのか。


インディーズCD一般に対する私の印象(偏見とも言います)は、「音質が悪い」。
これに尽きます。
高域が詰まり、低域不足。
マイクの本数が少ないからか、広がりに欠けた音場の真ん中で団子に固まる楽器。
こんな印象でした。
仙道さおりのパーカッション演奏に感激し、パーカッションをCDで楽しみたいと思ったのが、本作購入の最大の動機です。
多少音質が悪くとも、内容も変わったアルバムで楽しいだろうし、パーカッション演奏も素晴らしいだろう、という程度の期待でした。
帰宅して封を切るとき、仙道のサイン入りと今頃気付き、ちょっと嬉しい。
彼女の演奏時のクールな美貌と、接客時の人懐っこい笑顔と礼儀正しさの差を思い出したりします。
そんなときにふと帯に眼をやると、こうありました。


「ヘッドホンで、ラジカセで、そして自慢のオーディオで、久々に爆音の快楽を! 赤川新一」
誰だ赤川新一って。
知らないぞ。
どうやらレコーディング・エンジニアで、今年開催されたハイエンドショウトウキョウ2010 SPRINGにも登場した人のようです。


へえー、そんなプロが「爆音の快楽」と言うんだ。
期待値が微熱のように上がります。
でも単なる太鼓持ちかも、という疑いの耳でBDP-LX91のトレイに乗せ(もちろん除電します)、プレイヤー側のロードを待ってから再生すると。


おや!
音が良い!
音場も左右に広がり、煌びやかなピアノの演奏をメインに、高域まで伸びた金属系パーカッションと中域の芯のあるパーカッションが絡まり、聴くこと自体が快感になって来ます。

ここではピアノもパーカッションも、残響する余韻さえ音色なのです。
つまり全体に見通しが良く、空気感まである録音。
いえいえ、単に音が良いだけでは私の場合は余り楽しめないのですが、これは楽曲と演奏も気に入りました。
CD購入時、仙道さおり嬢から「ジャケットも自分で描いたんです」と言われましたが、その可愛らしいジャケットに騙されてはいけません。
もちろん可愛らしい曲もありますが、同時に硬派な一面を見せてくれるアルバムでもあります。
演奏的に高度らしきものも多く聴こえるものの、そんなことを意識させない、これ見よがしでない娯楽性とのバランスが良い。
仙道のパーカッションは、先日のライヴでは音を叩き出す印象が強かったのに対し、こちらは音を紡ぎ出すことに工夫が凝らされていました。
楽曲も一本調子にならず、飽きが来ません。
それに何より、多彩な音色が聴いていて心地良い。
ピアノもパーカッションも曲に奉仕すると同時に、両者は曲の主役でもあります。
楽器と奏者、楽曲の幸福な融合に思えました。


再生する際には、綺麗な残響音の醸し出す空間を綺麗に出したいものです。


さてこのCD、危険なCDでもあります。
何かというと、重低音・超低音が多く入っているから。
週末の昼にホームシアターにて悦に入って聞いていたら、妻から「昼寝している娘が起きてしまう」と注意を受けました。
「どんどんという音がかなり漏れている」とのこと。
音圧にも喜んで、ついうっかり音量を上げていた父の巻でした。


このアルバムが気に入ったので、1stアルバムも聴いてみようかな、という気になりました。
1stは熱帯雨林さんでは扱っていないようですが。

pega-pega

pega-pega


前述の帯の裏側を見たら、赤川新一の簡単なプロフィールが紹介されていました。
本人曰く、「今回は「大空間による快感を伴うサウンド」をレコーディングする事に成功したという。」とありました。
何だ、このアルバムのエンジニアでもあったのか。
でもその言葉には、全くもって同意します。


仙道さおりの演奏で、久々にパーカッションの楽しさを思い出しました。
音質に関係無く、パーカッションが面白いCDを幾つか不定期にご紹介しようと思います。