days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Audio Commentary on "Casino Royale"


何度も何度も紹介している『007/カジノ・ロワイヤル』。
DVD-VIDEO、1枚ものBlu-ray Discと持っていますが、2枚組Blu-ray Discに買い直した理由の1つが、新たな特典として音声解説が収録されていることです。
元々LD時代から特典の類は大好きでしたが、もしかしたら最も好きな特典は音声解説かも知れません。


珍しいメイキング映像やスタッフ&キャストへのインタヴューなど、映画ソフトの特典映像は楽しいものも少なくありませんが、より細かく突っ込んだ話が聴ける場合が多いのが、この音声解説です。
本編の映像を再生しながら、オーディオトラックでスタッフやキャスト、映画評論家などがコメントするというこの特典は、一体誰が考えたものか分かりませんが、素晴らしいアイディアだと思います。
映像が無い分、本編を実ながら「実はここの場面はね…」といった裏話や、場面や映像の意味などまで聴ける場合もあるのですから、これは美味しい。
難点は本編を観ながらになるので、その分時間が掛かること。
当然ながら1時間半の映画は1時間半ほど、2時間半の映画ならば2時間半近く掛かってしまいます。
それでも「当たり」の音声解説の場合は、そんな時間が豊かに過ごせます。


LDではまだ少なかった音声解説も、DVD-VIDEOの時代になってからは収録も増えて来ました。
ジョン・カーペンターカート・ラッセルの『遊星からの物体X』(LDと同じもの。DVDは英語版のみ収録だが、解説書に対訳あり)など楽しかった。
今のところ詰まらない音声解説が無いのはリドリー・スコットです。
グラディエーター』、『ブラックホーク・ダウン』など、どれも非常に面白い。
自信がありながらも、色々と意味や製作の裏側などについて、まんべんなく話してくれます。
ブレードランナー』も楽しみにしています。


一方、詰まらなかったのがティム・バートンの『スリーピー・ホロウ』。
「素晴らしい」などとスタッフやキャストへの賛辞ばかりで、殆ど内容が無く、しかも間が空くのが非常に多い。
まぁバートンらしいのでしょうけれども、これはファンの私でもかなりきつかった。
口ベタだからか、間が空いても面白かったティム・ロビンスケヴィン・ベーコンの『ミスティック・リバー』とは大違いです。
あちらは暗い映画でも如何に撮影現場が楽しかったのかや、アクシデントさえも本編に使ってしまうイーストウッドの演出術などについて等、面白さ満点でした。
意外に詰まらなかったのがポール・グリーングラスの『ボーン・スプレマシー』及び『ボーン・アルティメイタム』。
期待ハズレで面白くなく、どんなことを話していたのかも忘れてしまいました。


と長々書きましたが、この『カジノ・ロワイヤル』も大当たりに入ります。
コメントは監督マーティン・キャンベルとプロデューサーのマイケル・G・ウィルソンです。
BDの時代になって、音声解説も単に音声だけではなく、喋っている様子も小さい映像として収録されるようになりましたが、これもその類になります。
2人が和気藹々と撮影当時の苦労話などについて盛り上がっているのが、非常に面白い。
印象的だったのは、編集のスチュアート・ベアードに対する何度もの絶賛。
ケン・ラッセルの初期作品やリチャード・ドナーの『オーメン』などの編集で知られる彼ですが、監督作品にも『エグゼクティブ・デシジョン』という傑作もあります。
アクションやサスペンス描写の編集は特に素晴らしいですからね。


キャンベルとウィルソンによると、ダニエル・クレイグは非常にアイディアマンでマジメ、努力家。
ジュディ・デンチは大女優なのに常に演技について心配している等など。
ダニエル・クレイグがボンドに決まったときに、ボンドに相応しくないとして誹謗中傷が酷かったのが当時は話題になりましたが、非難の理由としてクレイグがオートマ限定免許だから、というのがありました。
ところが実際にはクレイグはオートマもマニュアルも運転出来るとのこと。
そこで2人は「なぜ あんなデタラメが(マスコミに広まったのか)?」と笑っていました。
また、画像にあるアストン・マーティンDB5(悪党ディミトリアスから巻き上げたもの)は、AT車MT車の2種が用意されていたそうです。
殆ど登場しないのに何と贅沢な。


解説で興味深かったのは、デジタルによるVFXを貴重なツールとして意識しているという点です。
例えば、私も大好きなシャワールームでの場面(こちらに画像を掲載しています)。
精神的ショックを受けてシャワールームにいるエヴァ・グリーンをなだめるクレイグが、グリーンの指を2本しゃぶります(文章にするとイヤらしい)。
ここは1発でOKが出た長回し撮影だったのですが、試写のときに不評だったとのこと。
実はクレイグがしゃぶる指は4本だったので、指へのフェティシズムと受け取られてしまったのだとか。
そこでデジタルVFXの出番となり、映像が修正されてクレイグがしゃぶるのは指2本になったのだということです。
結果的に名場面になったのですから、恐るべしデジタル修正!


これも意外で面白かったのが、映画の後半の多くを占めるカジノの場面。
劇中のゲームの連続性を保つべく、テイクを重ねるごとにチップやカードを元に並べ直さなくてはならなく、キャンベルによると「悪夢のようだった」とのことです(笑)。