days of cinema, music and food

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Salt


アンジェリーナ・ジョリー主演、フィリップ・ノイス監督の大作アクション・スリラー『ソルト』を観て来ました。
公開初日の土曜21時10分からの回、309席の劇場は9割の入り。
快調な観客動員のようです。


優秀なCIA工作員のイヴリン・ソルトは、愛する夫と幸福な日常を送っていました。
しかし突如現れたロシアからの謎の亡命者によって、ソルトは大統領暗殺を企てている二重スパイだとの容疑を掛けられてしまいます。
窮地に陥ったソルトは逃亡を企てますが。


ジェイソン・ボーンの女性版といった趣きのヒロインを、アンジェリーナ・ジョリーは存在感たっぷりに演じています。
『ウォンテッド』くらいから痩せ過ぎなくらいに痩せている彼女ですが、それが元々美醜のバランス際どい容姿に凄みを加えています。
アクションが出来る今のハリウッドスター女優で、ここまで迫力のある表情を出せる人はいないのではないでしょうか。
まずはその点でキャスティングは成功しています。
アクション慣れしている彼女ですから、近接戦などの動きも悪くなく、銃撃も手馴れたように見えました。


映画は最初の30分が傑出しています。
アクション、アクション、アクションと息をもつかせぬ迫力ある展開で、あれよあれよと映画に乗せられてしまいました。
フィリップ・ノイスの演出はテンポ良く、名手スチュアート・ベアードの編集も歯切れ良い。
さぁて、序盤をアクションで乗り切ったから、ここからはどんな話を見せてくれるのかな…と思っていたら、その後もずっとアクション、アクション、アクション。
そしてエンドクレジットが始まったのでした。


脚本は『リベリオン』などのカート・ウィマー。
女性版ジェイソン・ボーンを狙った脚本なのでしょう…と言いたいところですが、元々はトム・クルーズ主演の企画で始まったのは既報の通り。
クルーズ降板後にジョリー登板になったのも話題になったものでした。
内容は色々なスパイ・スリラーの良いとこ取りを目指したもののようですし、話自体は非常に面白い。
スケールの大きな話に展開していくのも意外でしたし、明らかに続編を製作する気が見える終幕も含めて、まだ本作は壮大なキャンバスの一部なのでは、と思わせます。
しかし意外性のある脚本も、スターを主役級3人を起用し、大作ハリウッド映画となった時点で、途中からは先が読めてしまっていました。
「スター起用のハリウッド大作映画」という枠組みが、物語の意外性や驚きを殺してしまっているのです。
ソルトは本当に二重スパイなのかという疑惑も中盤で読めてしまうし、その他の役者の起用方法でも色々と分かってしまいます。
結果的に、『ソルト』は、最初から最後まで飽きずに観られる娯楽アクション・スリラーではあるものの、それ以上でも以下でも無い、巷でよく言われる「典型的ハリウッド大作映画の1本」になってしまっているのでした。


ソルトを信頼している上司役リーヴ・シュライバー、ソルトを追撃するCIS捜査官キウェテル・イジョフォーらは適役。
謎の亡命者役は見た顔だと思ったら、ポーランドの俳優ダニエル・オルブリフスキーでした。
パンフレットに「『ブリキの太鼓』の」とあったので、一瞬誰かと思ったのですが、あぁ、あの役でしたか。
若くて細くてハンサムだった。
もう30年前の映画になるんですねぇ。