days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

The Crazies


ジョージ・A・ロメロの『ザ・クレイジーズ』(1973)のリメイク、『クレイジーズ』を鑑賞しました。
土曜21時35分からの回、20人くらいの入り。
女性は1人のみ、後は全て男性ばかりでした。
この男性率の高さは、アニメではなく洋画ではちょっと異例かも(^^;
オリジナル版が好きかロメロが好きか、な観客が多いと見ました。
かくいう私はオリジナル版は知っているけれども未見、ロメロは…演出家としてはどうなんでしょ?
ちょっとかったるいしね、という立場。
『ゾンビ』、『クリープショウ』、『死霊のえじき』、『ランド・オブ・ザ・デッド』は面白かったし、特にこの中で最初の3本は好きという考えです。


さて映画はアイオワ州の田舎町で、突如人々が狂い出すという事件が続発します。
湖に墜落した軍用機に何かが積載されていたらしく、それが飲み水として町に流れてしまっている、飲んだ人から狂いだしているのでは、ということになります。
そして事件から2日後に、町が軍に包囲・隔離されてしまいます。
軍から逃れた保安官デヴィッド(ティモシー・オリファント)は助手のラッセル(ジョー・アンダーソン)と共に、妻ジュディ(ラダ・ミッチェル)を救出に向かい、軍の包囲から脱出しようとします。


内容は細菌兵器の漏洩事故が巻き起こす惨禍と、軍部の恐るべき行動という、如何にも1970年代調なのは否めません。
映画『カサンドラ・クロス』やスティーヴン・キングの大作『ザ・スタンド』に通じるものがありますね。
もっとも本作は、それらに比べてかなり小ぢんまりとしたもの。
災害の規模や菌の特性、脱出した他の人々、軍部の実態などは全く分からず、飽くまでも田舎町の保安官という市井の人の視点でのみ描かれています。
これはこれでありのアプローチでしょう。


監督はブレック・アイズナー。
処女長編監督作品である前作『サハラ 死の砂漠を脱出せよ』は見ていませんが、本作を見る限りはホラーもアクションも好きそうな感じです。
全体にテンポ良く、狂人が襲い来る場面も含め、要所要所は怖く撮ろうと頑張っています。
上映時間101分を飽きさせず、ぽんぽん進める手腕は褒めたい。
但し映画全体の緊張感はやや少な目。
幹線道路を主人公ら数人が横一列に並んで歩いて脱出しようとする等、ホントに軍に見つからないようにしているのかね、といった描写が興を削ぎます。
また、夫が妻から離れると、妻が狂人に襲われるという趣向が繰り返されるのも、またかと笑えます。


緊張感が削がれた最大の原因は内容の古さによります。
映画が製作された1970年代初頭は、政府によるメディア・コントロールが上手く行っていた場合もあったのに対して、今やTwitterYoutubeなど、一般市民によるメディア化が進んだ現在で、こんな大規模の「封じ込め作戦」を行っても情報が漏れてしまうのではないか、という疑念が、鑑賞中は脳裏を離れずじまいでした。
イラク戦争などアメリカ国外での出来事は、政府によるメディア・コントロールが当初はそれなりに功を奏していましたが、この映画のように国内では無理でしょう。
一応、劇中では電話・ネット・携帯が使用不可になっていましたが、それでも他に脱出した人々が携帯使用圏内に辿り着けば、一挙に情報は拡散する可能性は否めません。
そんな現代において、バレてしまったら政府転覆の可能性がある作戦を、政府が実行するのかと思ってしまいます。


それでもラストは結構締まっていて、これは印象度が若干良くなりました。


近年はホラー映画で手術用丸ノコを使うのが流行りなのでしょうか。
ロバート・ロドリゲスは『グラインドハウス』で登場させ、イーライ・ロスは『ホステル2』でも使っているとのこと。
ロスは『グラインドハウス』で使われていたら、自分はやらなかったよとインタヴューに答えていますが、まさか本作のスタッフは知らなかった筈は無いでしょう。
パクリとは言え、まぁやってみたかったのかも知れませんが、あの場面はオリジナルな趣向も欲しかったですね。


鑑賞中、音楽は誰だったっけと思っていたらマーク・アイシャムでした。
近年のアイシャムはメロディラインが印象に残らないものが多いような気がします。
本作の場合は場面場面にスリリングで不気味な曲を付けていて、効果的ではありました。