days of cinema, music and food

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"Se7en" on Blu-ray Disc, LaserDisc & DVD-VIDEO


先日購入したデヴィッド・フィンチャーの『セブン』のBDを鑑賞しました。
見直したのは相当に久々ですが、いやいや、現代でも通用する力作・傑作ですね。
渋東シネタワーで最初に観たときはいささか中だるみを感じたものですが、LD、DVDと見直すに連れて好きになった映画です。


まぁしかし、こんなビョーキな映画を好きになるとはこれ如何に、という考えもあるでしょう。
私見ではビョーキ映画やホラー映画の類を楽しめるのは、精神が健康状態の証じゃないか、と思うときがあります。
疲れていたり、落ち込んでいる場合には観たくないですからね。
とは言え、かなり個人の嗜好に左右されるという前提あっての事ですけれども。


ビョーキな冒頭タイトル・デザインは、様々な模倣を生んだカイル・クーパーによるもの。

日清カップラーメンのTVCFまで担当したりでちょっとしたお祭騒ぎでしたが、同SFは余り美味しそうに見えず、デザインとしては失敗だと思ったものでした(T-T)


何度観ても主人公のモーガン・フリーマンの落ち着いた演技が素晴らしい。
知的で貫禄がありながら軽妙という、相反するような性格を持ち合わせた人物を演ずるとき、この人は1番輝いていると思います。
近作では『インビクタス 負けざる者たち』のネルソン・マンデラ役がそうですよね。
だから薄っぺらい悪役を演じた『ドリームキャッチャー』では詰まらなかったのだと思います(『ウォンテッド』はまぁまぁ)。
それでも何度も見直すとこのウィリアム・サマセット刑事、余りに先見の明があり過ぎる名探偵ですよね。
え!?どんな根拠が?と思う台詞もあるにはありますが、フリーマンの説得力満点の台詞回しで何となく納得させられてしまいます。


役者ではジョン・ドウ役ケヴィン・スペイシーも強烈ですね。
公開当時は『アウトブレイク』くらいしか印象に無かったのですが、この役を「スーパーアクター」と評した『ローリングストーン』誌の映画評論家ピーター・トラヴァースの評は的確でした。
この後の活躍はご存知の通り。
少々オーヴァーアクトですが、それがこの人らしいし、またこの役に合っていると思います。
但し感情が高ぶる場面では、「徹頭徹尾冷静でいて欲しかった」と言った私の友人もいたように意見が分かれるかも。
公開当時は私も同意見でしたが、ジョン・ドウが飽くまで人間であり、人間離れしたレクター博士とは違うのだ、という意味でもこれで良いかなと思えるようになりました。


出番は短いですが、グウィネス・パルトロウも良かった。
幸薄そうな顔立ちと役柄が似合っていただけでなく、食堂の場面など心揺らされるものがあります。


彼らに比べるとブラッド・ピットは熱演しているものの、演技力が明らかに見劣りします。
ではミスキャストかと言うとさに非ず。
感情的で無能な若造が破滅への道を辿るという内容に合ったものでしょう。
後にフィンチャーと組む『ファイト・クラブ』や『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』などでも、役は合っていました。
どの役も演技力よりスターの持つ説得力が重視される役ばかりでしたので、フィンチャーはピットの個性をきちんと掴んでいるのですね。


まぁでも、この映画の真のスターはデヴィッド・フィンチャーでしょう。
ハッタリ上手な演出は素晴らしい。
いやいや、これは褒め言葉です。
フィンチャーは伝えたいテーマ等の内容云々ではなく、基本的にはハッタリ演出力の監督ではないかと思います。
映画とは脚本次第で出来が左右されますが、この人の場合はそれが激しい。
それもハッタリ監督だからではないか、と今回の鑑賞で思いました。
もちろん大好きな監督ですけれどもね。


意図的に観客の神経を逆撫でにするような編集、画、音の一体がこの映画とも言えます。
となるとパッケージソフトにも質が求められるというもの。
その点、もう少し厚みが欲しいなぁと思った以外は、特に不満もありませんでした。
シャープで陰影に富んだ画は解像度も素晴らしいし、調整された色彩も魅力的です。
ノイジーな音や雨音などのサラウンド、耳をつんざくような銃撃音など、フィンチャーの盟友レン・クライスのサウンド・デザインも高音質で再現されていました。
ハワード・ショアの音楽もコケ脅しが効いていて、フィンチャーの演出と相乗効果を生み出しています。


さて世間には同類の方もいらっしゃると思いますが、ハイ、ワタクシもこの映画のパッケージ・ソフトにはそれなりに投資済みです(^^;
悪名高い東宝からリリースされた8,800円もしたLDに、9,800円もしたDVDと、よくもまぁ足元見られっぱなしで出費したものだと、今回改めて思いました。
アメリカはCrtiterion版LDやDVDを持っている方もいるでしょうが、そこまで行かずとも十分に散財男の有資格者を自任していますよ、ハイ。


前述したようにぼったくり価格の東宝ディスク2種。

どちらも品質は良かったです。
特にLDは音が強烈でした。
対してDVDは音の薄さが一部で話題になっていました。
私も比較したら同じように感じたものです。


DVD版は本編ディスク、特典ディスク、ブックレット入り。


本編ディスクにはブラピのテレカが入っていました。

携帯電話が登場しない本編同様に時代を感じますね。


特典ディスク。

この内容が非常にマニアックで、全体を俯瞰するいわゆる「メイキングもの」の類が一切入っていませんでした。
ジョン・ドウのノートブックの裏話、タイトルデザインや別エンディングのストーリーボードなどが収録されていました。
脚本家アンドリュー・ケヴィン・ウォーカーの話等聞きたかったのですが、それは3種ある音声解説を聴いてくれ、と言う事だったのでしょう。
これら特典は今回のBDにも収録されています。


詳細なブックレット。



各殺人や場面の解説など、故みのわあつお執筆と思しき文章が大量にあって、読み応えあり。
無論、カイル・クーパーにも触れています。


今回のBDは、先日の記事に書いたように英文そのままのコミックが残念なものの、紙媒体も入っていますし、満足度はそこそこあるかな、と。
但し価格を考えたら廉価版でも問題無いでしょう。
ディスクの質は素晴らしいですので、こちらはお奨め出来ます。

セブン ブルーレイ コレクターズ・ボックス(初回数量限定生産) [Blu-ray]

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