days of cinema, music and food

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Total Recall: The Deluxe Edition


先日複数枚購入したサントラCDの内の1枚。
ポール・ヴァーホーヴェンジェリー・ゴールドスミスのコンビ第1作に当たる『トータル・リコール』をご紹介します。
ヴァホのゴールドスミス好きはかなりのものらしく、当時のインタヴューでは「本当は『ロボコップ』も彼でやりたかったんだ。でも彼はギャラが高いからね」と言っていたものでした。
リップサーヴィスもあったのでしょうが、でもでもすよ、『ロボコップ』はバジル・ポールドゥリスの名曲があったからこそでは。
それってポールドゥリス可哀想でしょ、なんて思ったものです。
ともあれ、ヴァホ初の高額予算映画で念願叶ってゴールドスミスを起用出来、相思相愛となった2人はその後『氷の微笑』、『インビジブル』と組むことになります。


さてこの映画、フィリップ・K・ディックの短編『追憶売ります』の長編映画化などと言っても、あちらのパラノイア的ディック世界転じてユーモラスなオチもある雰囲気とはかなり変わり、超暴力的SFアクション映画になっていました。
主演がアーノルド・シュワルツェネッガーだからそれもアリかなと思いつつも、全てが白い光に包まれるラストにおいて、意外にも実はディック的世界の忠実な映画化ではないか、とも思わされたのでした。
つまりは最初にリコール社行った以降が全て主人公クウェイドの夢であり、精神が暴走して崩壊してしまった…とも解釈出来るのではないか、と。
そう思っていたら、DVD-VIDEO版でのヴァホ&シュワ音声解説では、ヴァホの解釈はそのようとの事で、成る程なぁと納得したのです。


劇場公開当時もCDを買い、居間で何度も何度も聴いていたら、母親から「うるさい」と言われた激音楽。
このCDは今まで未収録だった曲も収録した豪華版。
順も曲名からすると殆ど映画登場順のようです。
いやぁ今聴いても古さを感じさせず、素晴らしい。
ゴールドスミスの音楽は、いきなり流れるようなオープニング・クレジット曲が前述のバジル・ポールドゥリスの『コナン・ザ・グレート』ソックリと一部で話題になりましたが、私自身はあちらの旋律は記憶に無いので違和感無く聴けました。
頑固者ゴールドスミスも自らのコンサート等でも演奏している曲なので、本人は盗作ではないとの意思表示なのでしょう。
しかし本編ではその主旋律は本当に殆ど流れず、激しいアクション音楽主体となっていきます。
このアクション音楽が緊張感満点、迫力満点でありながら、手を変え品を変えで次から次へと聴かせます。
変拍子も含めて非常に緻密で面白く、しかも全体のトーンが整っている。
この音楽を巨大な建築物に例えた人が居て、上手い事言うなぁと思ったのですが、ゴールドスミスのアクション音楽集大成と言っても過言ではありません。
オーケストレイションも含めて音作りは無駄が無く、1つ1つの楽器の音色を効果的に使うか腐心しているのもこの人らしい。
その点でシンセも楽器の1つとして使っているのもらしい。
演奏はまたもやナショナル・フィルで、リズムが重要なこの音楽で寸分狂わぬ演奏が気持ち良い。


これもまた、ゴールドスミスの傑作映画音楽なのです。

Total Recall: The Deluxe Edition (1990 Film)

Total Recall: The Deluxe Edition (1990 Film)


こちらは通常盤です。

Total Recall: Original Motion Picture Soundtrack

Total Recall: Original Motion Picture Soundtrack