days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Super 8


SUPER 8/スーパーエイト』を観て来ました。
公開2日目の土曜0時25分からのレイトショウは30人程の入り。
時間帯を考えればそこそこの入りかも知れませんが、劇場は赤字でないのかなと思いました。


1979年、オハイオ州の町リリアンの夏。
事故で母親を亡くしたジョー(ジョエル・コートニー)は警官の父ジャクソン(カイル・チャンドラー)と一緒に暮らしていました。
彼の楽しみは仲間達と一緒に8ミリ映画製作をする事。
憧れのディック・スミスの本で学んだ特殊メイクの技や、ミニチュア製作に器用な腕をふるっていました。
ある晩、女優として引き入れたアリス(エル・ファニング)ら仲間たちと深夜の駅で撮影をしていたところ、偶然にも列車事故に巻き込まれてしまいます。
そこから不可解な出来事が町を襲い始めたのです。


スーパー8とは、昔懐かしき8ミリ・フィルムの規格の事です。
このタイトルにはピンと来ましたが、予告編ではSFものっぽいし、さてどんな映画になるのやらと思ったものです。


世間では何故か評価の高いJ・J・エイブラムス
それらの多くは、大ヒットしたTVシリーズエイリアス』や『LOST』に対するものなのでしょう。
どちらも観ていない私は、映画監督として殆ど評価していません。
映画進出した前2作、つまり『M:i:III』や『スター・トレック』での仕事振りでの私の意見は、「知能指数が低く大画面を使いこなせない監督」というものでした。
頭脳ではなく安易に暴力に訴える主要人物の行動は、それぞれの元となった往年のTVシリーズに比べて劣化しているし、せせこましい画面作りは映画館で映画を観たという満足感とは程遠いもの。
何でこんなので評価が高いのやら、と未だに不思議です。
しかししかし本作における前評判はやけに高い。
Twitter等でも、現地や試写で観た批評家や映画好きの間で盛り上がり始めています。
おまけに本作のプロデューサー、スティーヴン・スピルバーグへのオマージュ満載だというではないですか。
そうなると私の期待値も自然と高まろうというもの。
さてどうだったでしょうか。


…と長々前置きを書いてしまいました。
実際に観てみると、私の中ではJJに対して多少は好感度が上昇しました。
自主映画製作の喜びや、全編に散りばめられた映画ネタ等、観ていて単純に楽しい。
『未知のと遭遇』を思わせる題材ですが、グレッグ・ジーン製作のミニチュアによるランドスケープ・ショットを思わせる同作の映像(町全域を俯瞰するショット)もあるし、当然のように『E.T.』、『JAWSジョーズ』、等も想起させます。
目配せはスピルバーグ作品に留まりません。
観たところジョー・ダンテの怪作『エクスプロラーズ』もあれば、鉄鋼の町という設定だからか、ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』までありました。
特に後者は少年達の自主製作映画がゾンビものなので当然でしょう。
監督少年の部屋にもちゃんとポスターが貼られています。


各要素は申し分ありません。
映画作りの情熱、淡い初恋、亡き母への想い、父との確執、友情、襲い来る怪異、テレパシー、怪物、空飛ぶ円盤。
これらが満遍なく散りばめられています。
しかし私は映画自体は左程感心しませんでした。
印象が軽くて直ぐに忘れそうなのは演出の線が細いからでしょうか。
いえ、それだけではないでしょう。
例えば父との葛藤には底の浅さを感じてしまい、心理面の踏み込みに脚本家としての思慮不足を、メリハリの無い、起伏の少なさに監督として力量不足を感じてしまいました。
色々と許してしまいそうになる瞬間は多々あるのですが。
それはノスタルジーであり、映画愛でありますが、単にそれだけではやはり1本の映画としての評価を高くは出来ません。
素晴らしい仕上がりになりそうな場面に事欠かないのにそうはならず、ドラマが表層的なので盛り上がらず、最後まで歯がゆい思いをしました。
スペクタクル描写1つ取っても、例えば序盤の列車事故場面も派手で長く、音響も凄いのに、劇場の大画面に飲み込まれそうな臨場感を感じられず仕舞でした。
やはり師と仰ぐスピルバーグとは格が違います。
やはりJJは実際に映画を書いたり監督したりするよりも、企画屋の方が良いのではないでしょうか。
実際、近作もJJがプロデュースした『クローバーフィールド/HAKAISHA』同様に巧妙な宣伝方法が光りますし、売り方が上手いと思います。


この映画の魅力で大きいのはエル・ファニングでしょう。
表情や仕草が可愛く、また家庭の境遇や性格なども含めて非常に魅力的に描かれ、主人公でなくても思わず恋してしまいそうになります。
キック・アス』のクロエ・モレッツといい、エルといい、特に美少女でもないのに魅力的な女優が大画面で元気なのは面白い現象です。
これもまたリアリズムという点で、ある意味映画に夢が無くなってしまった証しでもありますが。