days of cinema, music and food

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The Tree of Life


テレンス・マリックの『ニュー・ワールド』(2005)以来となる監督作品、『ツリー・オブ・ライフ』を観て来ました。
公開4日目のお盆休み突入の平日月曜20時からの回、170席の劇場は30人の入りです。


今は建築家をしているジャック(ショーン・ペン)が、アメリカ西部の田舎町で厳格な父(ブラッド・ピット)と優しき母(ジェシカ・チャステイン)の元で育てられた過去を振り返る様子と、同時に宇宙の起源、地球の誕生、生命の誕生、恐竜時代とその終焉という壮大な映像と交錯させ、生と死、時間等を描いて行きます。
予想以上に脱構築されたドラマと、前衛的な映像の氾濫に、少々の驚きを持って観ました。


何よりも映像が素晴らしい。
特に壮大な宇宙史/地球史は圧巻です。
視覚効果コンサルタントは懐かしやダグラス・トランブル
2001年宇宙の旅』のスターゲイト場面に始まり、『未知との遭遇』、『スター・トレック』、『ブレードランナー』、『ブレインストーム』と、美しい光が特徴の特撮を創り出して来た、映画史に残る技術者でありアーティストです。
ここまで個性のある視覚効果監督は、映画史でも唯一無二の存在でしょう。
個性的な特撮監督としては、ウィリス・H・オブライエン(『キング・コング』(1933))やレイ・ハリーハウゼンといった名前も上がりますが、彼らはストップ・モーション・アニメーター。
つまり個人作業が主な視覚効果監督です。
しかしトランブルは大人数のスタッフを従えての視覚効果監督。
本作では別に視覚効果監督がいるので、本作のトランブルの役割は、恐らくは映像の見せ方等の助言を行ったのだろうと想像されます。
それでも私のようなファンにはとても嬉しいものでした。


一方、ドラマ部分も手持ちキャメラを多用した全方位的な広角レンズ撮影で、構図も凝ったものが多い。
小さなドラマも壮大な映像に載せる事で、これもまた宇宙の一部と語っているかのようでした。
撮影監督エマニュエル・ルベツキの、これは大金星です。
興味深いのは、映像は明らかに進化論に準拠したものなのに、各人物のモノローグが信心深い事です。
科学的映像と宗教的モノローグ。
これを科学と宗教の対立/対比と見るか。
散文的ドラマは映画の後半に至って、徐々に流れが見えて来ます。
家族に厳しい厳格な父と、抑圧の中で徐々に歯向かっていく子供たち。
私は一家族のドラマも宇宙の歴史の中ではほんの一瞬であり、生と死も同様。
善良なる者が必ずしも報われる訳ではないし、人生とは不条理なもの。
宗教的であろうがなかろうが、人生は厳密には生命の大きな流れの1つであり、つまりテーマも進化論が前提のものである、と解釈しました。


と、誠に壮大かつミニマムな映画なのですが、2時間18分の上映は少々冗長でした。
シン・レッド・ライン』もそうなのですが、テレンス・マリックの演出は神がかって美しいものの、いささか長過ぎる。
あと15分は切って2時間程度に収めれば良かったと思います。
この映画は飽くまでも劇場の大画面で「体感する」ものです。
もしご覧になるならば劇場で。


ブラッド・ピットは今までに無い演技で良かった。
新顔ジェシカ・チャステインも古風でありながら新鮮でした。
ブライス・ダラス・ハワードに似ているし、本名も姓がハワードだから、一瞬血縁関係者かと思いましたが、IMDbには特にその旨書いていませんでした。
ショーン・ペンも殆ど台詞が無いながらも印象的です。