days of cinema, music and food

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Hanna


楽しみにしていた映画『ハンナ』を鑑賞しました。
映画の日の平日木曜9時00分からの回、私も含めて20人の入りでした。


16歳になる娘ハンナ(シアーシャ・ローナン)は、元CIA工作員の父エリック(エリック・バナ)と、人里離れたフィンランドの山奥で暮らしていました。
父親によって並はずれた殺人テクニックを叩き込まれたハンナは、いつしか戦闘能力では父親を越え、感情を余り持たない少女となっていたのです。
ある日、米軍特殊部隊によって捕獲されたハンナは、収容施設を脱走。
エリックと因縁のあるCIA工作員マリッサ(ケイト・ブランシェット)は、執拗にハンナを追跡します。
ハンナには父からのとある任務がありました。
その任務とは?
マリッサとエリックの因縁とは?


プライドと偏見』『つぐない』といった女性が主役の佳作文芸ドラマを連発していたジョー・ライト3本目の作品は、何とジャンルものでした。
しかも、ライトらしい長回し撮影も炸裂する、アクション・スリラー兼御伽噺だったのです。
何と言っても、凝ったライトの演出と、意外にも身体も動けるシアーシャ・ローナンの演技が見もの。
その一方で、細かいエピソードや、脇役らの感情の全てが回収されるのではなく、どこかぶっきらぼうにほったらかしになる個所もあり、いささかまとまりの悪さも感じます。
脚本にはいささか弱さを感じましたが、露骨なまでに『赤ずきんちゃん』を引用するライトの演出は、非情なアクション・スリラーの内容とあいまって、どこか異様さを醸し出しています。
ここが好悪分かれるのでしょうが、私はこの映画を気に入りました。
アクション場面はかなり本格的で、血しぶきこそ出ないものの、かなり非情な接近戦が描かれていて迫力があります。
ライトの才能の幅の広さを証明していました。


それにしても、ローナンは不思議な少女です。
美人とは違うけど独特の存在感があって。
この映画はまさに彼女あっての映画。
透き通るような白い肌と、この世の者とは思えない、どこか遠くを見ているかのような、あるいは達観したかのような瞳もあって、非情で暴力的な世界に迷い込んだ赤ずきんを演じていて素晴らしい。
アクションも編集の力を借りているとはいえ、結構身体が動いていました。
赤ずきんちゃんを追う悪役ケイト・ブランシェットの怪演も楽しい。
怪演振りでは『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』を遥かに凌ぎます。
どこか異様な映画に異形の華を添えていた狼を体現し、強烈な印象を残しました。
また、ブランシェットに雇われた殺し屋アイザックトム・ホランダーもまた、強烈。
小柄な体躯のブロンド・ヘアにジャージ姿。
これが凶暴で拷問好きという変態振り。
世間的には『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズの悪役ベケット卿と言えば、通りが良いのかな。
プライドと偏見』の滑稽なコリンズ氏とは打って変わって、印象に残りました。


いびつでも面白い映画で、楽しめました。