days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Rango


ジョニー・デップが主役のカメレオン役の声を当てたので話題の『ランゴ』をレイトショウで鑑賞して来ました。
公開初日の土曜夜21時40分からの回は30人くらいの入り。
フルCGアニメですが3Dではなく2Dなのが、今のご時世には珍しいですね。
勿論、全く何の問題もありません。


ひょんな事からネヴァダの砂漠に放り出された飼いカメレオン(ジョニー・デップ)の主人公が、とある町に辿り着きます。
そこは水不足に悩まされている町。
しかし何故か支配者である町長亀(ネッド・ビーティ)だけは水を持っていて、どうにもアヤしい感じです。
カメレオンは百戦錬磨の無法ガンマン、ランゴと名乗り、住民達(両生類、爬虫類、げっ歯類など)から感銘を受けます。
町長より保安官に任命されたカメレオンは、水泥棒を追いますが…。


ウェスタンのパロディとは聞いていましたし、実際に画面はその通り。
しかしそれプラスの、まさかのロマン・ポランスキーの名作&傑作のハードボイルド探偵映画『チャイナタウン』の組み合わせとはびっくりでした。
ネッド・ビーティがあちらでジョン・ヒューストンが怪演していた役のパロディを演じていて、服装もそっくり。
だから謎は「水」なんですね。
ウェスタンはクリント・イーストウッドマカロニ・ウェスタンです。
本人(?)も登場するけど、残念ながら声はティモシー・オリファントでした。
似ていて笑いましたけどね。


ゴア・ヴァービンスキーって監督は余り感心した事も無いし、『パイレーツ・オブ・カリビアン』3部作という駄作シリーズは全く評価出来なかったのですが、これは面白かった。
パロディに限らず細かいところまで神経が行き届いていたし、登場人物達への愛、ウェスタンへの愛、『チャイナタウン』への愛に満ち溢れています。
大味脚本家と私は認定しているジョン・ローガン(『グラディエーター』、007の新作等)の脚本も悪くないし。
もちろん、先の展開は大よそ予想通り、でもこれは『サボテン・ブラザース』等の定番のプロットなのだから、細部にこだわってくれれば結構。
何にでも溶け込める、逆に言えばアイデンティティに乏しい象徴のカメレオンの自分探しの旅にもなっていて、案外しっかりした土台がありました。


主人公ジョニー・デップは嬉々として演じていて楽しい。
脇役も少女ネズミ役にアビゲイル・ブレスリン、無法者役にレイ・ウィンストンハリー・ディーン・スタントン、それに凄腕ガンマン(?)にビル・ナイと、貫禄のある声、味のある声の顔触れでグッド('-^○)b


スタッフの働き振りも注目したい。
ハンス・ジマーのマカロニ調にロックのテイストを紛れ込ませた音楽も良かった。
主題化はロス・ロボスですよ!
プロダクション・デザイナーがまさかのマーク・”クラッシュ”・マクリーリーでした。
この人、スタン・ウィンストン・スタジオのデザイナー/メイクアップ出身で、『ターミネーター』のエンド・スケルトンの躁演や、『ジュラシック・パーク』の恐竜デザインなど手掛けていましたが、大抜擢ですね。
IMDb見てもプロダクション・デザインは初めてのようです。
そして忘れちゃいけない、撮影はロジャー・ディーキンス御大が監修。
コーエン兄弟作品でも毎回素晴らしい撮影を見せてくれる巨匠のお陰か、全体に渋い色彩が光っていました。
こんな楽しみ方も出来るとはネ。


原点を知らなくても楽しめるけど、知っている方がより楽しめる。
つまりは大人も(が?)楽しめる佳作です。