days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Arthur Christmas


アードマン製作の新作アニメ映画『アーサー・クリスマスの大冒険』を3D上映日本語吹替え版にて鑑賞しました。
公開初日の土曜13時50分からの回は殆どが親子連れで20人程の入りです。


20億個もの大量のプレゼントを、サンタは如何にして世界中の子供達に配っているのか…。
実はハイテクを駆使して、父サンタ、長男スティーヴ、それに100万人もの妖精たちの手伝いでもって、任務を次々と成功させているのです。
一家には次男アーサーがいて、とても優しいのですがドジばかりでお荷物。
ところが任務には大きな瑕疵がありました。
プレゼントを1個だけ配り忘れていたのです。
確率からすると取るに足らないと切り捨てるスティーヴと、スティーヴがそう言うならばとあっさり引き下がって寝る父サンタ。
しかしそれでは、その子が可愛そうです。
アーサーが祖父サンタと一緒に、旧型のそりとトナカイでもって、何とかその子供の為に辿り着き、プレゼントを届けようとしますが…。


冒頭からして掴みはOKです。
ここまで超ハイテクなサンタは初めて見ました。
サンタと妖精達の作戦任務が、まるで往年のTVシリーズスパイ大作戦』のよう。
危機的状況でもチームプレイで切り抜けて行きます。
そう、ここにはトム・クルーズ版『ミッション:インポッシブル』で失われたチームプレイを再現していて素晴らしい。
しかもスリル満点で可笑しいのです。


サンタが全くの善人じゃないというのは目新しくありませんが、サンタ一家というのは初めて見ました。
三代に渡る男どもは皆それぞれダメ人間。
祖父、父、長男は皆権力に固執し、見得を張ります。
主人公アーサーだって善人なのに超絶ドジです。
でも皆、悪い奴ではなく人間臭いのが良いのです。
彼ら人物の描き分けも明確で面白かったです。
また妖精たちとの関係も興味深い。
主従関係ではなく、飽くまでも協力関係なのです。
これが終盤に効いて来ます。


製作はクレイアニメウォレスとグルミット』で有名な英国アードマン・プロ。
本作はフルCGアニメで、観る前は何でクレイアニメじゃないのだと思いましたが、フルCGの意味がありました。
この規模とアクションはフルCGでないと無理だったでしょう。
ハイテク映像になっても、アードマンらしさは随所にあって満足です。
前述の『スパイ大作戦』から『未知との遭遇』等、往年の名作のパロディ(自己の過去作品含む)や、細かいメカニズムの描写がそう。
ウォレスとグルミット』だって、やたらギミックに凝っていましたよね。
さすが『サンダーバード』の国です。
また、主人公を助けるラッピング部の優秀な妖精が、飼い主ウォレスを助けるグルミットのような役割を担っていて、大活躍。
観ていて可笑しくてカッコ良かったです。


主眼となるアクションとスリルは上々。
夜明けまでにプレゼントを届けなきゃという時間制限サスペンスもばっちりで、アクションも盛り上がります。
そして最後にはホロリ。
これは良く出来たアニメーション映画なのです。


それでもやはり、アードマンにはクレイアニメを作ってもらいたいと思ってしまいました。
あの独特の手触りは観ているだけで楽しいのです。
日本語吹替えのみの上映で、主役をアテていたウェンツ瑛士も悪くなかったと思います。
でも原語版は名優をずらり揃えた豪華キャストだったんですよね。
ドジな正義漢のアーサーに、タムナスさんことジェームズ・マカヴォイ
のんびりして押しが弱く、でもサンタの座に固執する父サンタに、名優ジム・ブロードベント
かつての栄光が忘れられない祖父サンタに怪優ビル・ナイ
優しく聡明でしっかり者の母サンタにイメルダ・スタウントン
その他にもローラ・リニーエヴァ・ロンゴリアマイケル・ペイリンロビー・コルトレーンジョーン・キューザックさが参加しているのです。
これは聴きたかったなぁ。


日本では余りヒットしないでしょうが、大人も楽しめる佳作としてお薦めです。