days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Take Shelter


この土曜日は妻子不在を良い事に、桜木町横浜ブルク13にて映画のハシゴをしました。
まず1本目『テイク・シェルター』です。


妻子も居て平凡な幸福を送っていた肉体労働者のカーティス(マイケル・シャノン)は、ある日突然生々しい悪夢にさいなまれます。
黄色く粘液質の雨が降り、嵐が到来し、人々が凶暴化して自分に向かって来るのです。
目覚めても夢の生々しさは消えず、やがて彼は取り付かれたように地下シェルター作りに没頭するようになりますが。


ドラマ、スリラー、SF、ホラーとジャンル分けが難しい、でもそのどれもに当てはまるユニークな1本でした。
未知との遭遇』の主人公ロイ(リチャード・ドレイファス)は、空飛ぶ円盤を見て以来、謎のヴィジョンに取り付かれ、家庭が崩壊していきました。
それに似たようなドラマかと思ったら、当りでハズレ。
でもこれは色々な意味で裏『未知との遭遇』ですよ。
ゆったりとした緊張感が素晴らしい。


肉体労働者である主人公がちゃんと理性的アプローチを取るものの、蟻地獄に落ちていく様が怖く、他人事に思えません。
この種の映画は主人公に共感出来ず、観客は傍観者になる場合が多いのですが、その点この映画はクリアされています。
新鋭ジェフ・ニコルズの緻密な脚本と演出のお陰ですね。
マイケル・シャノンの演技も素晴らしいけど、妻役ジェシカ・チャステインってこんなに上手い女優だったとは!
理想的良妻賢母像を絵空事でなく演じていて、これって難度高い筈。
昨年から数本の出演作で見かけるますが、これが1番良かった。
他の映画も良かったですけどね。


凡庸な映画ならば、感情が爆発するチャリティ食事会の場面を山場に持ってきそうなものの、そこで主人公を突き放さず、ちゃんと守ってくれます。
それもそこまでの周辺人物の感情の道のりを描いているからです。
だから手に汗握るクライマクスは本当に緊張するし、主人公を応援したくなります。
結末は予想出来ても意味が予想を裏切り、語弊あるかもだが楽しい鑑賞でした。
お勧めの傑作です!!