days of cinema, music and food

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"Inglourious Basterds" on Blu-ray Disc


イングロリアス・バスターズ』、劇場公開時以来のBD鑑賞となりました。
劇場で観たときのレヴューはこちらです。


そして今回のホームシアター鑑賞。
いやぁ面白かったです。
クエンティン・タランティーノ作品の最高傑作は『パルプ・フィクション』でしょうけれども、実はこちらが超えていると思っています。
世間的には脚本の構成が凄い『パルプ』なんでしょうけれども。
でも監督としてはこちらが随分と進歩していると思います。



私自身が忘れがたい場面は特に2つで、今回はその再会がとても楽しみにしていました。
1つはトンネルの暗闇からカンカン音がして、「ユダヤの熊」ことイーライ・ロス演ずる軍曹が登場するところ。
もう1つが地下酒場でのくだり。
どちらも引っ張って引っ張って引っ張って緊張させる忘れがたい場面です。
特に後者はその顛末も含めてインパクト満点。
面白いのは物語としては全く不要なんですけれどもね。






ついでに本作、先日観た『おとなのけんか』に続いてのクリストフ・ヴァルツと、『SHAME -シェイム-』のミヒャエル・ファスベンダー祭りでもあります。
私がファスベンダーを意識したのはこの映画から。
どこかナルシスティック、しかし銃を向け合いながら酒をあおるところなど、男気もあってカッコ良い役ですよね。
今回再見して、『SHAME』と全く違うのにも感心させられました。
まぁしかし、この映画は終幕のヴァルツですよね。
よく喋りよく顔面が動く。
やはり笑ってしまいました。
それとヒロイン役メラニー・ロランですね。
彼女の出演作を観たくなります。


BDとしての画質・音質は悪くありません。
名匠撮影監督ロバート・リチャードソンらしいこってりとした色彩が楽しめますし、音も瞬発力がありました。
音楽は当初エンニオ・モリコーネに依頼しようとしたら多忙で断られ、モリコーネも含む既存の映画音楽からの引用という、相変わらずタランティーノらしい事になっています。
よって音楽の音質は余り良くはないのですが、これもまた味になっているのは確か。
だって映画が始まっていきなり、ディミトリ・ティオムキンが『リオ・ブラボー』(タラが偏愛する映画の1本ですね)用に作曲した『皆殺しの唄』が朗々と鳴るのですから(^^;
この曲が後年、マカロニ・ウェスタンサウンドを決定付けたモリコーネに影響を与えている、というのも面白い話です。
残念なのは各国対応のユニヴァーサル作品らしく、各章の始まりに入る字幕が日本語のみな事。
雰囲気が壊れて残念です。


特典はそんなに多く無いけれど、面白いものが多かったです。
タラとブラピがTVに出たインタヴュー映像が比較的長く、彼らの考えが分かって興味深い。
またカチンコ係の掛け声集も面白い。
ドイツ人と思しき女性が、カチンコに書かれているシーンやテイクの呼び方を非常に面白く口汚く読み上げていて、これが笑えます。
これから撮られるキャストも笑っているくらいですから。


往年のアクション俳優ロッド・テイラーも出演。

タランティーノが如何に彼を敬愛しているのか分かって、微笑ましくなります。


タランティーノ作品常連の編集者サリー・メンケへのラヴレターというべき映像集も良かったです。
テイクによってはキャストやスタッフが「ハイ、サリー」とカメラに向かって言うのですね。
そのサリーは一昨年、グリフィス公園での犬の散歩中に急死しました。
原因は猛暑によるものと思われているようです。
現在製作中のタランティーノ新作『Django Unchained』は、彼女の弟子が担当だそうです。
そんな事情を知っていると、観ていてかえってしんみりもしてしまいました。
その『Django Unchained』は、タランティーノ初の西部劇との触れ込みです。
主人公ジャンゴにはジェイミー・フォックス
相棒のオーストリア人役にはクリストフ・ヴァルツ
卑劣な悪役にレオナルド・ディカプリオ
その手下には当初ケヴィン・コスナーの予定でしたが、スケジュールの延期に伴い残念ながら降板し、カート・ラッセルが登板しています。
他にもジョセフ・ゴードン=レヴィットサシャ・バロン・コーエンサミュエル・L・ジャクソン(『イングロリアス〜』ではナレーター担当)、ドン・ジョンソンケリー・ワシントン等が出演とか。
西部劇なのでお得意の映画ネタが使えず、さて一体どのようになるのか。
キル・ビル』のように面白くともコクの無い映画にならなければ良いなぁ、と思いつつ、楽しみに待っていましょう。



本作の副読本には、以前ご紹介したムック本をお薦めしましょう。