days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

The Descendants


ファミリー・ツリー』公開初日の金曜ミッドナイトショウに行って来ました。
23時15分からのアレクサンダー・ペインの新作上映は、15人程度の入りです。


舞台はオアフ島
カメハメハ大王の末裔で、先祖代々の広大な土地を所有する弁護士マット(ジョージ・クルーニー)の妻が、ある日モーターボートの事故で昏睡状態に陥ってしまいます。
仕事ばかりして家の事はほったらかしだったマットは、17歳の長女アレクサンドラ(シェイリーン・ウッドリー)と10歳のスコッティの姉妹にどう接してよいか分かりません。
ところが妻は実は浮気をしていて、それを知らないのはマットだけだったと判明。
マットは長女と一緒に浮気相手を突き止めようとしますが…。


まず驚くのは、アレクサンダー・ペイン監督映画なのに、2.35:1のワイドスクリーンである事。
ほう、どうしたんだ?
今までは1.85:1だったのに。
でもこれは必然なのです。
末裔達(原題)が先祖達からの授かりものである土地を、丘の上から見渡して眺める場面は、この画面比でないと駄目なのです。
ワイドスクリーンに広がる美しい土地を見せるには必要な画角なのですね。


人生悲喜こもごもとは言いますが、この映画はまさにそれ。
家族としてまとまる人達あれば、離脱し、死んでいく人もあり。
みっともなくて、可笑しくて、哀しくてと、映画を体現しているジョージ・クルーニーも、今までに無い人間臭いダメ男で良い。
彼だけでなく、どの人物も多面的で血肉が通っています。
年頃娘のいけすかない今風カレシだってそう。
私も内心、「こんな若造ぶん殴ってやる」ぐらいに気持ちで観ていたのですが、物語が進むに連れ、「何だ、結構良いヤツじゃないか」と思えて来ました。
ロバート・フォスター演じるいかめしい義父だって、娘に対する愛情で溢れています。
そうだよ、人ってそうだよね。
そう思わせる映画なのです。


型通りの展開など無く、話の予想も付かないのも面白い。
下手すると散漫になりそうな、曲がりくねった内容ですが、着地する所にはちゃんと着地します。
ペイン作品らしく可笑しい場面も多い。
居心地悪い境遇の場面であっても、意地悪度は低め。
皮肉が抑えられている分、過去のペイン作品に比べて遥かにとっつきやすい映画になっていました。


目を引いたのは長女役シェイリーン・ウッドリー
この子はきっとスターになりますよ。
演技も素直で好感が持てるし、感情表現豊か。
それが媚びていません。
活き活きとしていて、いささか堅苦しくて可笑しい父との対比になっていて、これもまた映画の見所の1つとなっています。
彼女は観客との懸け橋となっていて、ときにはなよなよした父に対する観客の感情の代弁者にもなります。
ハリウッド映画の俳優層の厚みはさすがでした。
映画を観ていて、若干父親目線で観た自分にも苦笑してしまった(^^;
娘もあんな風に反抗期を迎えて手こずるんだろうな…まぁ、あすこまで美人になるかどうかは疑問ですが(←アホ)。


観光地としてのハワイにはまるで興味が無く、行った事も無ければ行く気も無かった私ですが、この映画を観ると滞在型ならば心地よいかも、と思いました。
ほぼ常に曇天気味の映像も良かった。
何より映画が終わってから、あぁ観て良かったと心の底から思えた映画。
傑作でした。


邦題は意味不明ですね。
何であんなのにしたのでしょうか。
『末裔たち』『子孫たち』だと売りにくいのは分かりますが…
何でもかんでもファミリードラマや恋愛ドラマを想起させる邦題を連発すると、逆に見分けが付かなくなって分からなくなってしまいますよ。