days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

The Muppets


『ザ・マペッツ』をミッドナイトショウ鑑賞です。
公開1週後の土曜夜22時50分からの回、観客は私を含めて10人弱でしたか。
これが面白い映画だったのです。


人間のゲイリー(ジェイソン・シーゲル)と一緒に仲良く生まれ育ったマペットのウォルター。
ゲイリーは成長していくのに、マペットのウォルターはマペットなので成長しません。
ですが2人は大変仲の良い兄弟だったのです。
ゲイリーとその恋人メアリー(エイミー・アダムス)と3人でL.A.旅行に行く事になりますが、ウォルターにとっての殿堂であるマペットシアターが、その土地にある石油目当ての資産家リッチマン(クリス・クーパー)に買われ、取り壊される事を知ってしまいます。
リッチマンの悪事を回避するには1千万ドルを集めなくてはなりません。
マペット達のリーダーであるカーミットを探し出した3人は、昔の『マペット・ショー』の仲間達を探し歩いて集め、チャリティ・ショウを行おうとするのですが。


期待とやや不安の入り混じった状態で臨んだ…というのは、小学生の時にテレビ朝日系列で放映されていた番組『マペット・ショー』が、面白いけど「そこそこ」だったからです。
ジュリー・アンドリューススティーヴ・マーティン等、私の目当てはマペットよりも有名スターのゲストだったのでした。
ですから今回、マペットが主役なのにどうかな…と思って観てみたら。
結論から言うと、『ザ・マペッツ』は素晴らしい娯楽映画でした。
歌と笑いのみならず、実際の世の中でのマペットの存在すら真正面から描き、それらのテーマから逃げていません。
例えば往年の大スターだった彼らも、今やそれぞれ落ちぶれているか、芸能界から退いて別の仕事をしており、忘れらかけられた存在な訳です。
これを正攻法で描き、それが成功しています。
しかもマペッツと人間が同居している世界という設定すら、作品世界の語り口に使っていました。
これにはやられました。
大体にして、ゲイリーとウォルターが兄弟という時点でギャグではないですか。
この手の映画は仲間探しで時間を取られるものですが、それも思いっきり簡略化しており、それもギャグにしています。
画面内では登場人物達から賑やかに突っ込みが入り、映画の展開もそれに沿ったものになっていて、それがいちいち滑っていません。
楽しいし笑えます。
虚構の世界だから本格ミュージカル映画としても違和感無く(そう、これはミュージカルでもあるのです)、しかもミュージカルとしての出来も良い。
全てが期待以上、予想以上でした。


人間側主要3人もまた、皆芸達者で愛しい。
初めて見たジェイソン・シーゲルの歌の上手さに仰天し、また本作の脚本家でもある彼の才能に仰天しました。
ちょっと太めになったエイミー・アダムスも、『魔法にかけられて』以来の久々に達者に歌を聴かせてくれて嬉しい。
それにクリス・クーパーの悪役振り。
名前からしてリッチマンですからね。
彼が予想外の芸を披露してくれるあの場面!
あそこは笑えると同時に嬉しい驚きがありました。
でもやっぱりマペッツが主役ですよ、これは。
人形遣い達の手の動作によって微妙に感情が表現されているのは、さすがに素晴らしい。
また、ショットごとに操作方法を変える伝統も受け継がれているので、本当にマペット達が活き活きとしています。
特にキャラが立っているのはミス・ピギー
キミの自信過剰振りはいつだって最高だ!


ギャグだけではなく、きちんとドラマとしても起承転結が用意されており、最後には感動もさせてくれます。
その感動の源はショウビズ賛歌です。
こんな世知辛い世の中ですから、せめて映画を観て浮世を忘れてハッピーな気分になろうよ、という映画の見本そのもの。
多幸感溢れる秀作でした。
日本では知名度の問題もあって当たっていないようですし、確かに知らない人に薦めるのは難しいかも知れません。
でもこれを観ないなんて勿体無い、と本気で思います。
これはディズニー映画なのですが、同社の往年のミュージカル・アニメ映画を思い出しました。
それの上手く行った場合のを。
マペッツ生みの親であるジム・ヘンソンの、そしてディズニー映画の、そして娯楽映画としての王道が受け継がれた作品なのです。