days of cinema, music and food

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"Saving Private Ryan" on Blu-ray Disc


プライベート・ライアンBlu-ray Discを鑑賞しました。
私自身はこれは映画史に残る映画だとは思うけれども、傑作とは思いません。
全体にアンバランスなんですよね。
ニセの回想という構成。
スティーヴン・スピルバーグ自らの残酷趣味を吐露するのが目的としか思えない冒頭の戦闘場面。
クドいラスト場面。
不出来な脚本とスピのやや暴走気味の演出もあって、正直に言って怪作だと思います。
有名なオマハビーチの場面も、戦争の恐怖を描くのにあんなに長くなくて良いのだし、大体にしてクライマクスより凄いというのはどうなのよ、とか思ってしまいます。






でもアクション映画はこの映画以前と以後ではっきり分かれました。
ストロボのような手ぶれ映像。
ビシッ!バシッ!という弾着の効果音。
リドリー・スコットのような大物監督でさえ、この驚異的な映像と音響をマイルストーンであると宣言しているくらいです。
という事で、映画としての完成度にはいささか疑問があるのですが、今でもそのパワーと衝撃度は十分持ちうる映画でしょう。
見直すのは少なくとも数年振りなのに、戦闘以外で良いなと思える場面が多々あるのを再確認しました。
生い茂る葉に雨が降り落ち、その音が戦闘に繋がる編集。戦闘の合間に地面に落ちた果物を拾って食べる兵。
死んだ兵の親への手紙が血塗れになったので書き写す別の兵。
兵士達の不満が爆発した時の中隊長の反応。
エディット・ピアフのレコードで『ラ・メール』を聴く兵士達。
他にも色々ありますが、各兵士達の人間性を上手く加味していて、例えばスピルバーグの最高傑作の誉れもある『ジョーズ』よりも、ドラマ部分の演出が雲泥の差、格段に上手くなっています。
だから逆に、全体にいびつな忘れ難い名画となっています。




後のスターや演技派の若い頃が色々見られるのも魅力ですね。
今更ながらリーランド・オーサーや、最近やたら見るブライアン・クランストンまで出ているのを知りました。
今回の鑑賞はこれも収穫です。
しかし皆、若い!
ジョヴァンニ・リビシヴィン・ディーゼルバリー・ペッパーマット・デイモンポール・ジアマッティ…。
こういうのも、ちょっと前の映画を見直す楽しみですよね。


ここ20年くらい面白くない音楽が多いジョン・ウィリアムズですが、スピルバーグ&ウィリアムズの近年の作品では、これが私的ベストです。
戦闘場面で音楽を廃しているのも成功の要因でしょう。
ラストのボストン交響楽団&タングルウッド合唱団の曲はいつ聴いても好きですね。


BDとしての画質は元の粗い画調とか結構忠実に再現しているのでは、と思いました。
かなりフィルムっぽい画調です。
音質はさすがに新作に負けるけれども、サウンドデザインは全くもって素晴らしい。
でも渋東シネタワーではタイガー戦車登場場面の重低音がもっと凄かったんですよね。
振動を感じましたから。
これはまぁ仕方ありません。
小学生のときは第二次大戦のドイツ軍戦車のプラモデルや精密紙工作に熱心だった身としては、そのタイガー戦車やヤクトパンツァー戦車、ケッテンクラートなぞが登場して、短くとも活躍するのも魅力的でした。
戦争マニア、第二次世界大戦マニアのスピルバーグらしいです。


プライベート・ライアン スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]

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