days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

We Bought a Zoo


幸せへのキセキ』のミッドナイトショウ鑑賞です。
公開2週目の土曜23時10分からの回、客は私も含めて20人弱とそこそこの入りでした。


半年前に妻に先立たれたコラムニスト、ベンジャミン・ミー(マット・デイモン)と2人の子供達。
問題ばかり起こす長男が中学を退学になったのを機に、気分も一新とばかりに新たな土地で一戸建てを買います。
理想の家だと大喜びするも、そこは閉園状態の動物園が付いていたのです。
弟思いの兄(トーマス・ヘイデン・チャーチ)の反対を押し切り、動物園を買ったベンジャミン。
全くの新しい体験ですが、数名の飼育員達と共に動物園再建が始めます。


私の大好きなキャメロン・クロウ脚本&監督の最新作です。
彼には『ザ・エージェント』『あの頃ペニー・レインと』という傑作がありますが、『バニラ・スカイ』『エリザベスタウン』と劇映画では凡作が2作続きました。
後者でやや復活の兆しが見られただけに、本来ならば期待したいところ(当時のレヴューはこちら)。
しかし本作も北米ではまぁまぁの評価しか得られなかったので、期待値を下げての鑑賞となりました。
結果的にとても楽しめました。
クロウにしては伝統的で真っ当な展開でしたが、これも実話が基になっているからでしょう。
しかし笑いや選曲、映像等、彼らしい要素もたっぷり。
ほぼ復調に近付いたようです。
クロウ作品らしく適度に感傷、適度にドライで、感動の押し付けが無いのも好ましかったです。
この内容なら怒涛の涙押し売りも可能だろうし、邦画だったらそうしていそう。
でも私はこれくらいが好きですね。
家族の再生も動物園の再生と共に描かれているけど、妻(子供達にとって母)の喪失を嘆くだけでなく、また忘れるのではなく、過去に思い返し、振り返り、そこに真正面から向き合うというのは、意外にハリウッド映画では珍しいのではないでしょうか。
ラストは子供達にとっても原初である場面の再現ともなっていて、ユニーク且つささやかな感動がありました。
こういった着眼点もクロウらしい、とちょっと贔屓してしまいましょう。


このところ良い味出してるマット・デイモンは安定して観ていられます。
普通の悩める父親という感じも良く出ていました。
近年はスターのオーラを薄めて市井の人を演じる機会が目立ちますが、そんな役も難なくこなしてしまう所は彼の演技力の高さを証明しています。
飼育係チーフ役のスカーレット・ヨハンソン(ジョハンソン)も、普通の人役は久々じゃないでしょうか。
また、『あの頃ペニー・レインと』の主人公の少年パトリック・フュジットが、すっかりムサい青年に成長していてびっくりです。
こんな楽しみもある映画でした。


それにしても『幸せへのキセキ』とは退屈で凡庸、且つすぐに忘れ去られてしまう邦題です。
いや、鑑賞中ですら思い出せなかった程でした。
原題通り『僕たちは動物園を買った』で何故悪いのでしょう。
配給会社の邦題に付ける「愛」「幸せ」依存症はいつまで続くのでしょうか。


ともあれ、お勧めの佳作です。