days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

"Novecento: Part One" on Blu-ray Disc


ベルナルド・ベルトルッチによる‎1976年の名作『1900年Blu-ray Discの第1部を鑑賞しました。
これは映画史に残る大傑作ですよ。
私が最初に観たのは大学生時代のテレビ朝日での深夜放送。
本編は第1部と第2部で合計5時間16分という超大作ですので、確か3夜か4夜に分けての放送でした。
しんどそうだけどなぁ…などと思いながら見始めたら、ジェットコースターに乗せられているようであっという間でした。
しかしボカシだらけなのにも参りました。
そう、この映画はエロたっぷりでもあったのです。
作者の意図していない「修正」であるボカシだのモザイクだのが入ると機嫌が悪くなる私としては、全くもう…という状態だったのですが、それでもこの映画のパワーには圧倒されたのです。
まぁそれにしても、何度も言っていますが、リアルタイムに観られなかった昔の名画を自宅ホームシアターで観られるようになるとは、本当に良い時代になったものです。


私はベルトルッチ作品を『暗殺の森』『ラスト・タンゴ・イン・パリ』『ラスト・エンペラー』『ドリーマーズ』、それに本作しか観ていませんが、圧倒的にこれが1番好きですね。
正直に言って他の映画は良い部分も認めるものの、好きではありません。
暗殺の森』はリバイバルで観たのですが、印象に残っているものの、本作には印象でも負けています。
今見直せば…という思いはあるのですが。


紀伊国屋書店パッケージソフトを購入するのは初めて。
パッケージデザインは正直に言って、余り気に入っていません。
まずスター3人の顔写真以下を紙で覆ったデザイン(トップ写真)。
下部はファシズムの台頭を描いている、という事なんでしょうね。
もっと土着的な感じで良いのに…綺麗過ぎだろ、これは。
と思って紙を取ったら…

プラ透明外箱がデジパックの表紙とまるで合っていないんですけど。
映画のタイトルも隠れているし。
これはどういう意図で??
そのプラケースからデジパックを取り出すと、こうなります。

うーん、やはり綺麗過ぎるなぁ。
でもこちらは農作業をする農夫達の姿か。
一応、最上部紙表紙と対になっている…って事かな。
デジパックはこうなっています。

第1部、第2部でそれぞれディスクを分けています。
これは当然でしょう。
封入の小冊子。

これは大力作です。
映画の各場面の要約から、解説、ベルトルッチのインタヴュー等、かなり内容が濃いです。
紙数のためか、スタッフ紹介がベルトルッチヴィットリオ・ストラーロだけ、キャストがデ・ニーロ、ドパルデュー、ドミニク・サンダだけなのが残念至極ですが…。
でも内容は読み応えありそうで、これは楽しみになりました。


さて今回は第1部を鑑賞しました。
ディスクを入れると即本編開始でびっくりしました。
BDの場合、飛ばせないメーカーロゴやら注意書きやらで、多少事前の鑑賞前の気分を盛り上げる習慣が知らぬ間に身に着いていたらしいので(^^;
デフォルトは英語版で最後までこれで鑑賞しました。
伊語が収録されていると知ったのは、映画が終わってからメインメニューを呼び出して確認してから。
でもこの映画は、口の動きを見ていると英語で撮影されたようですね。


イタリア北部、1901年1月。
同じ日に生まれた小作農レオ(スターリング・ヘイドン)の孫オルモと、大地主ベルリンギエリ(バート・ランカスター)の息子アルフレード
やがて親友となり、大人となった彼らでしたが、イタリアは次第にファシズムの波に飲まれ、彼らも時代に翻弄されていきます。


どれどれ、BDとしての質はどうか確認しようと数分だけ観るつもりが、うっかり最後まで観てしまった恐るべき求心力。
音は時々ヒスノイズが乗るし、画だってこんなものかですが、20年振りの鑑賞ではヴィットリオ・ストラーロの流麗なカメラワークにびっくり仰天しました。
テレ朝深夜放送では気づかなかった!
もしくは忘れていたのか!
自宅大画面シアター鑑賞で良かったと思ったのは、この撮影が堪能出来る事です。
構図も素晴らしいのが多いけど、カメラの動きがダンスのようで官能的。
映画を観る愉悦がここにあります。
劇場映えする撮影は大画面への耽溺を促す。
大画面持っている人にこそ見てもらいたい映画ですね。


内容は堂々たる大河ドラマでしかもテンポが良い。
各人物像はくっきりしていて、今回見直してやや類型的過ぎるきらいにも感じましたが、これはこれでありでしょう。
描写が残酷だったり性的だったりの強烈な描写も求心力の1つで、第1部だけで2時間半強でも飽きさせる事がありません。
役者も揃っています。
小作農の若者で、やがて労働運動に目覚める若者に、まだ精悍だったジェラール・ドパルデュー

日和見主義者でひ弱な御曹司ロバート・デ・ニーロ

そしてファシストとして台頭していくドナルド・サザーランド

間違いなく彼のフィルモグラフィにも燦然と輝く極悪っぷり!
凄いです。
目の玉ひんむいて歯を剥き出し、小動物から子供まで殺します。
陰惨、これに極まれり。
デ・ニーロの恋人役ドミニク・サンダに、ドパルデューの恋人役ステファニア・サンドレッリと、仏伊の眼福女優の共演も見もの。


主人公の祖父役スターリング・ヘイドンバート・ランカスターも貫禄満点。

この2人は大作に相応しい面構えですね。



イタリア近代史の書を読みたくなる内容ですが、難しい理屈抜きに娯楽映画としても成立していると思います。
エンニオ・モリコーネの音楽も素晴らしい!
弾圧され続けている農民達の団結と、一方のファシズムの台頭を描いて、第1部は終わります。
さぁて第2部もいつ観るか。
これは楽しみです。


劇中の英語テロップ(「Part One」とか)はヴィデオ処理だったので、マスターはどこの出生なのか気になるところです。
解像度は、まぁこんなものでしょうか。
理想を言えばリストアしてもらいたいものですが、そうもいかないでしょうし。


ボカシは最低限でまあ納得しました。
デ・ニーロとドパルデューが町で女を買う場面、2人が女に同時に手淫される場面のみでした。
しかしこれ、現代では作れない描写満載の映画です。
実際に蛙や鴨を大量に殺しているし、子供の性器丸出し描写もあるし。

はい、私のトラウマ映像。
少年時代のオルモは取った蛙を針金に刺してぶら下げているのです。
麦藁帽子にぐるりといるのは、刺されてうごめいている蛙さん達〜 (x_x)
子供の性器丸出し場面では、包茎かどうかというのを実際に見せ合う場面なのですが、現代だったら小児虐待とかで叩かれそうです。
実際、この映画の完全版はアメリカではNC-17といって17歳未満鑑賞禁止の映画扱いですから。
ともあれ、野趣溢れる強烈な描写が昔の映画らしいとも改めて思ったのでした。
映画好きにはお勧めしたい大傑作なのです。

1900年 Blu-ray (2枚組)

1900年 Blu-ray (2枚組)

1900年 オリジナル・サウンドトラック

1900年 オリジナル・サウンドトラック