days of cinema, music and food

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"The Dark Knight Rises: The IMAX Experience" again (spoiler!!)


アベンジャーズIMAX版公開に伴って、IMAXでの上映回数が激減予定の『ダークナイト ライジング』2度目の鑑賞をして来ました。
もちろん3週間前の鑑賞と同様、南町田にあるグランベリーモール内の109シネマズになります。
お盆週間の平日木曜20時からの回は20人程の入りでした。


★今回は全3部作のネタバレも含みますので、未見の方はお気を付け下さい。下記ネタバレコメント欄もどうぞ★


夕食後の鑑賞だったからか、証券所強盗のくだりでうとうとしてしまいましたが、それ以外は1回目よりもむしろ楽しめました。
但し脚本の不出来な箇所はいちいち気になります。


一般市民を含めて制圧されたゴッサム・シティなのに、それ以降は彼らがまるで登場しないのは解せません。
出て来るのは警官隊だけですからね。
それともテログループに一般市民も参加していたのか??
前作『ダークナイト』の結末で、「子供=市民は知っている」と描いているのだし、警官ジョン・ブレイクも、子供の時の体験からバットマンブルース・ウェインを信じている(もしくは信じたい)男として描かれています。
だったらバットマンを信じている人々の姿を少しでも描くべきだったのではないでしょうか。
もっともその『ダークナイト』でツゥーフェイスの罪を被ったのですから、その後の一般市民の反応も知りたいところ。
本作では警察等の表向き発表ではバットマンは犯罪人として扱われているものの、施設の子供たちは「信じている/待っている」者として描かれていますから。
上映時間の都合でカットされたのかも知れませんし、または上記施設の子供やブレイクの描写だけ残して十分という判断が下ったのか分かりませんが、食い足りなさは残ります。

不満なのはアルフレッド・ペニーワースとルーシャス・フォックスの描き方もそう。
2人共に記号に近い描き方になってしまいました。
特にフォックスは酷い。
ウェイン産業の経営者として、あるいは後半はベインの人質として出て来るだけですからね。
折角モーガン・フリーマンという名優を起用しているのだから、何とも勿体無く思いました。
一方のご存じアフルレッドは、過去作品ではブルースの保護者的役割を果たしていました。
これが前半であっさり退場してしまいます。
後半に登場してブルースを助けるのかと思いましたが、最後の墓参りの場面まで登場を待たなくてはなりません。
もっとも、本作はブルース・ウェインバットマンからの成長、アルフレッドからの独立を描いているものでもあるので、この描写は一方で納得はするのですが。
マイケル・ケインの演技は素晴らしかったですね。
本作で初めて彼を老優と思いましたが、それも老いて疲れた執事という役柄の成せる技なのかも知れません。


本作最大の欠点は悪役の弱さだと思います。
ベインは最強の敵として魅力的な造形、演ずるトム・ハーディも素晴らしい。
これは終幕の対決が楽しみだと思っていたら、実はボスはタリア・アル・グールでした!彼は操り人形でしかありませんでした!という種明かし。
これは残念でした。
本作と同じ構造を持つ『バットマン ビギンズ』でも思ったのですが、この手のアメコミヒーロー映画は、最初から最後まで悪役は首尾一貫していた方が面白いです。
前半と後半で観客が対象とする悪役が違うと、主人公が対峙する相手としてどうも印象が薄くなってしまうのです。
タリア役マリオン・コティヤールバットマンの脇腹にナイフ突き刺しての憎々しい表情や、死に際演技で頑張ってはいましたが、出番が少ないので印象は薄い。
これはクリストファー・ノーランのミステリ趣味が足を引っ張ったのではないでしょうか。


ところで本作は『バットマン ビギンズ』と対を成す3部作完結編ですが、高評価を得た『ダークナイト』への目配せが少ないからか、同作が大好きな人からは不満も多く聞かれるようです。
というのも一見すると『ビギンズ』のリメイクに見えてしまうのですよね。
但し私の意見では、『アビス』の興業的失敗を経たジェームズ・キャメロンが、『ターミネーター』を大金掛けてリメイクした『ターミネーター2』のとは違い、『ビギンズ』と『ライジング』とでは似て非なる同工異曲なのです。
同じような構造を持つ2作ですが、私が考える本3部作の構造はこうです。
『ビギンズ』では復讐心から自警員となりバットマンを名乗るようになった主人公が、父たる存在を打ち倒す物語。
ダークナイト』では、強力な悪によって存在がそれと対になり、単なるバットマンから高貴なる闇の騎士(ダークナイト)になった主人公の物語。
ライジング』では一度堕ちたものの、高潔なる精神を持って復活し、その精神は誰でも持ちうるというメッセージと共に消えて行った闇の騎士の物語。
よって闇の軍団(あぁ、『ビギンズ』の時点でもっと魅力的に描かれていれば!)の存在や、アル・グール父娘の正体が後半で明らかになるなど、『ビギンズ』とそっくりな展開を見せる本作は、全3部作の流れからすると完結編を目指した物語と言えます。


こんな事を観終えてから思えたのも、2度目の鑑賞だったからでしょう。
今回は先の展開が分かっているだけに、上記のような欠点や構造を念頭に置きながらも、役者の演技の質の高さに目が行きました。
特にジョゼフ・ゴードン=レヴィットとゲイリー・オールドマン、この新旧の良心的警官の2人が素晴らしい。
レヴィット君、制服着ているときはガタイが良くなったように見えて、「あぁハリウッドスターになると筋トレでガチムチになる法則から逃れられなかったか…」と、少々残念に思いました。
ところがTシャツ1枚になると、ハリウッド俳優にしては腕とか細くてちょっと安心しました。
このままリアリズム路線、市井の人体型でいてもらいたいものです。
時々、往年のスター、チャック・コナーズに見えたのはおデコの横しわのせいでしょうか??
セリーナ・カイル役アン・ハサウェイはやはり素晴らしい。
終幕の怒涛の展開では、改めてアドレナリンが沸騰。
特にセリーナが運転するバットポッド横回転ショットの2か所が超カッコ良いです。
いやぁ、あすこで泣きそうになりましたよ(←バカ)。
しかし物理的に一体どういう仕組みなんだ、あれは(^^;
で、あの2つのショットがあるお蔭で、セリーナの印象もアップしているのですね。
言わば彼女の演技とは違うVFXによるものですが、こうして見ると映画とは演技だけではなく、スタッフらとの共同作業というのが分かります。
セリーナがカッコ良く女前なのは、演技だけではなく編集や映像にもよるものなのです。


IMAXデジタルらしく物凄い低音でしたが、前回よりも相当にブーミーに感じました。
でもあの衣服肌が振動する感じ、多少ブーミーでもあれも映画館ならではという事で許せてしまいます。
自宅ホームシアターならば、「これは調整せねば」と色々大騒ぎしそうですからね。
通常の35mm撮影部分は天地黒味があり、IMAX撮影部分はフルスクリーンなのも改めて確認しました。
これはTwitterでも他の人に確認してその旨回答を頂きましたから、やはり元々がそのようなデータのようです。
という事は年末に出るとウワサされているBlu-ray Discは前作同様の画角仕様でしょうね。
いや、そうであってもらいたいです。


そして残念ながらプロジェクターの色ズレが気になりました。
輪郭に赤や緑が見えるのです。
IMAXデジタルは画面の光量を稼ぐ為に、映写機を2台使っています(スタックしている)。
つまりはどちらも同一画面を投射し、画面上でもピタと合せる、という仕組み。
だからなのか、調整が難しいのでしょうね。
先のタイタニック』でも気になりましたが、特に改善される様子も無いので109シネマズに質問を出しました。
さて回答は来るでしょうか。


実は今回の鑑賞で1番驚いたのは、本編前に『007/スカイフォール』のIMAX限定予告編が観られた事です。
前回鑑賞時は普通の予告編(通常の劇場でかかっているのとほぼ同じもの)だったので、これには驚きましたた。
これまた期待を煽る映像と音。
でも1.44:1のIMAX画面上では上下に黒味が出ている2.35:1の上映だったので、普通に「画面が大きい映画」という事なのでしょうね。
IMAXカメラの撮影じゃないみたいですし。
その点では少々残念ではありますが、映画そのものは非常に楽しみにしています。