days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Total Recall


近所の友人M田さんとご一緒に、『トータル・リコール』を鑑賞しました。
公開2週目の金曜ミッドナイトショウ、0時20分からの回は20人くらいの入りです。


21世紀末の世界大戦により世界は荒廃し、生き残った人類の富裕層はイギリスを中心としたブリテン連邦(UFB)に、貧困層はオーストラリアのコロニーに住んでいました。
コロニー労働者は地核を貫く巨大エレベータでUFBに移動し、そこで肉体労働を行うのです。
コロニー制圧用ロボット組み立て工場勤務の肉体労働者のダグ(コリン・ファレル)は、毎夜のように悪夢にうなされます。
夢の中でダグは、謎の女と共に兵士達に追われるのです。
しかも何か重大な任務をしているらしい。
愛する妻(ケイト・ベッキンセイル)が居るものの、仕事ばかりの日常に満たされないダグは、偽の記憶を埋め込んで現実逃避を楽しめるリコール社に向かいます。
そこで機械に接続された途端に警官隊の襲撃を受けるものの、返り討ちにして相手を全員倒してしまいます。
命からがら帰宅すると、今度は妻が襲いかかって来ました。
さらには危機一髪のときに謎の女メリーナ(ジェシカ・ビール)が助けてくれます。
彼女は夢に登場して来た女です。
一体何が起きているのでしょうか?


ポール・ヴァーホーヴェン監督、アーノルド・シュワルツェネッガー主演の1990年の同名名作SFの再映画化です。
監督は『アンダーワールド』シリーズ、『ダイ・ハード4.0』のレン・ワイズマン
ワイズマンはオリジナル版の大ファンなのでしょう。
至る所にオマージュが散見されて楽しい。
プロットは殆どオリジナル版準拠ですが、さすがに映像は現代の映画で、これは壮観でした。
オリジナル版でも登場するSFガジェットの数々を眺めるのが楽しかったですが、本作も同様の楽しみがあります。
大きいのから小さいのまで大挙登場。
SF好きには眼福、眼福なのです。
あの地球を貫く巨大エレベーターだけでも許してしまいましょう。
これならば、アーサー・C・クラークが書いたSF小説の数々、巨大建築物系も映画化可能です。
ロボット兵士達も実物と見まごうばかりにリアル。
意外な携帯電話も楽しい(痛そうだけど)。
ブレードランナー』そっくりな都市は、あちらと違って日本語は少なく、中国語とハングルだらけ。
これは当時との経済状況の差異を表していて、日本の経済の下落を実感しますね(^^;
オリジナル版で独特だったヴァホちゃんの内臓感覚は受け継がれなかったのと、結末の印象はかなり違うものになっていました。
但し、中盤の夢か現実かの説得場面がどちらも個人的には劇中のベストなのは共通です。
様式アクションばかりのレン・ワイズマンだから…と、現実の不確かさ等は期待していなかったので、これは嬉しい収穫でした。


筋骨隆々のシュワと違って、中肉中背で真面目に演技が出来るファレルが主役だから、映画の雰囲気はかなり違いました。
台詞が安心して聞けるのは在り難い。
でもやはり、台詞は少なくとも強烈だったのが鬼嫁ケイトです。
これは近年の彼女のベストパフォーマンスじゃないでしょうか。
いやぁ最高です。
字幕も「鬼嫁」となっていて笑いましたとも。
彼女の役柄はオリジナル版のシャロン・ストーンマイケル・アイアンサイドをまとめて1人したもの。
主人公を執念で追い詰める暗殺者役として上手い事アレンジしていました。


全体にオマージュというかリスペクトというか、そういうのにも溢れていた映画だったので、オリジナル版が好きだった私はにやにやしっぱなし。
アナログ映像最高峰のあちらと、デジタル全開のこちら。
映像の感触はまるで変わりましたが、どちらも楽しめました。
こうして観ると当時はテンポ早過ぎと思ったオリジナル版も、最近の映画に比べるとのんびり牧歌的なのでしょうね。
22年間でハリウッド映画のテンポはかなり変わりました。
そもそも編集が全然違いますからね。


ハリー・グレッグソン=ウィリアムズの音楽は面白くはなかったです。
さらりと出るタイトルも含めて、悪しき現代ハリウッド超音楽でした。
つまり打ち込み主体で面白くも何ともありません。
オリジナル版のジェリー・ゴールドスミスの音楽&ウェイン・フィッツジェラルドのデザインの冒頭タイトルは、わくわくさせられたものでした。

  • Total Recall 1990 Tri-Star Pictures Logo and Opening Credits

トライスターのロゴも懐かしいですね。


ともあれ、細かい突っ込みをしながら面白がれました。
お勧めです。


原作はちょい小噺調の短編でした。
映画とはまるで違いますが、ディックらしい妄想モードが織りなすスリルと、人を食ったユーモアが楽しい話です。
今回の映画公開に合わせて新たな短編集に収録されたようですので、この機会に読まれるのとお勧めします。