days of cinema, music and food

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Prometheus


既にTwitterやらネット上では賛否両論の『プロメテウス』デジタルIMAX 3D版を鑑賞しました。
場所は南町田の109シネマズグランベリーモールです。
日曜昼からの回は半分程の入りだから、結構良い方だったのではないでしょうか。


2089年、考古学者のエリザベス(ノオミ・ラパス)は世界各地の古代遺跡から共通のマークを発見します。
それはとある星座を示していました。
巨大企業ウェイランド社のバックアップを受けて、エリザベスは宇宙船プロメテウス号で目的の衛星LV-223に向かいます。
衛星に降り立った学者らを待っていたのは、巨大遺跡と人間そっくりな石像、そして巨大な異星人の遺体でした。
やがて、彼らには脅威が迫るのでしたが。


今や巨匠となった監督リドリー・スコット出世作であるSFホラーの古典、『エイリアン』(1979)の前日談を、スコット自身監督すると言われていましたが、成程、製作途中で別の話に変更されたとの報道通り、単純な前日談ではありませんでした。
だが同じ世界の話なのは確かなので、あちらも観ている方が楽しめます。
もっとも時間も舞台となる星も違うとの設定ですので、ここは要注意かも。
ともあれ、映像派スコットが初めてフィルムではなくHDの、しかも3D映画を監督という事で、どんな画を見せてくれるのかも楽しみでした。


冒頭のタイトルバックからIMAXの高解像度を活かした実景のロングショット映像が続き、荘厳かつA級大作の匂いがします。
映画全体に頻繁に挿入される超ロングショットという大画面を意識した画作りは、普通の劇場では堪能出来ないであろう事は想像出来、これは勿体無い。
ホームシアターでも物足りないでしょう。
これだけでもIMAXとそうでない環境での鑑賞では、印象が違う可能性があります。
しかしです、掴みOKな冒頭場面がまるで本編中で説明されないのも含めて、1本の映画としてはどうなのかと言いたくはなります。
続編が明らかにありそうな宙ぶらりんな結末も含めて、私が思い出したのはSFホラーの怪作『スペースバンパイア』です。
事前に「人類の起源」だの予告編から物々しく伝わる高級感を映画に期待すると、まるで当てが外れるであろう、これはまごう事無きB級SF法螺映画。
幸いにも私は前もって期待値をかなり下げて鑑賞したので面白かったです。
物凄くお金を掛けた高級感あふれる画作りをしようとも、奇想天外な低俗SFホラーと思えば、これはこれで楽しいではないですか。
これよりもっと酷い内容のB級C級SF映画もかつては散々観ていたので、次から次へと目まぐるしく(しかし残念ながらタメの無い)展開もニヤニヤしっぱなしです。
その場その場でショックを与えるためだけの展開に唖然とするよちも、むしろこれは観客サーヴィスだろう、と割り切って観ていました。
これでエロがあればB級SFホラーとしては最高だったのでしょうが、リドリー・スコットは巨匠だけに踏みとどまったのか、そっち方向はまるで無し。
まぁ元々セクシュアルな内容には殆ど興味の無い監督でしたからね。
折角当代随一の美女シャーリーズ・セロンが出ていたのに勿体無い…。


元々リドリー・スコットは物語を語る事に余り興味が無かった傾向がありましたが、本作も「よくこんな脚本で映画化したな」という内容です。
ジョン・スペイツとデイモン・リンデロフの脚本はその程度のシロモノ。
その場限り面白けりゃいいだろ的なちぐはぐな内容であっても、感情移入がまるで出来ない愚かな人物ばかりであっても、一向に構わなかったのでしょう。
「俺はこういう画を作りたいんだ」「『エイリアン』のこれを説明したいんだ、あれを見せたいんだ」というスコットの意思が前面に出ているようで、清々しささえ感じてしまいました。
晩年(そう、精力的に活躍していますが、巨匠も既に75歳なのです)にいきなりトチ狂ったかのような低俗映画を作っただけでも、むしろ私は尊敬してしまいました。


だからスコットが最近の映画を観て集めたと思しき配役陣の無駄遣いさえも、微笑ましい。
シャーリズ・セロンの如何にもマッチョな登場場面に『G.I.ジェーン』のデミ・ムーアを思い出して笑い、何であんたが演じなくちゃいけないんだのガイ・ピアースさえ、大監督の我儘として温かく観てあげたくなります。
唯一、多言語俳優ミヒャエル・ファスベンダー演ずるアンドロイドだけは魅力的に描かれていましたが、今回も多言語を操れる役、しかも宇宙人語まで喋れるとは!


よくよく考えれば『エイリアン』だって低俗SFホラー映画の内容だったのに、今では古典です(当時から怖くはなかったけど)。
しかし両作の間には近くて遠いものがあるのは確か。
明確な人物像やその納得の行く行動、これが最大の違いではないでしょう。
あと故ジェリー・ゴールドスミスの音楽の有無。
本作にも10秒程ゴールドスミスが作曲したテーマ曲が流れますが、あすこも全く無意味な無駄遣い。
やはり1番似ている映画は『スペースバンパイア』かなぁ。


さてIMAX 3Dですが、映像そのものは前述の通りに高解像度+ロングショット多用で、「大作映画」感満載です。
立体効果はというと、所々では感じられたものの、マーティン・スコセッシの『ヒューゴの不思議な発明』のような驚く程の効果は狙っておらず、余り興味がないのかな?と思いました。
もっともスコット本人は今後は全て3Dで撮りたいと言いながら、撮影中の最新作は題材が3Dに不向きだからと撤回していますが。
音響はもう、コケ脅しサウンド満載。
これはホームシアター族、サラウンド族なら楽しめそう。
パッケージソフトも高品質なものを期待したいですね。



さて本当は旅行前にこの劇場で観たかった映画でしたが、わざと帰国後に鑑賞しました。
これには訳があったのです。
という事で次回に続きます。