days of cinema, music and food

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The Bourne Lagacy


ポール・グリーングラスマット・デイモンにフラれた為、ジェイソン・ボーン3部作の続編ではなく、番外編として製作された『ボーン・レガシー』を観て来ました。
アクション映画好き、特殊部隊好き、ウィルス好きの近所の友人M田さんと御一緒です。
金曜夜の初日ミッドナイトショウ鑑賞は30人程の入りでした。
この入りからすると、世間ではやはり期待作という扱いなのでしょう。


トレッドストーン計画の申し子ジェイソン・ボーンがCIAと激闘を繰り広げている間、機密が世間に暴露されるのを恐れた当局は、他の計画も破棄に掛かります。
アラスカで訓練中だったアーロン・クロス(ジェレミー・レナー)も襲撃されるも、辛くも生き延びます。
しかし彼は薬無しに高度な身体・頭脳の能力を発揮出来ません。
薬が切れると、今の状況を生き延びられないでしょう。
そこで薬の開発に携わっているマータ・シェアリング博士(レイチェル・ワイズ)の元に向かいます。
2人は当局の追撃をかわして行きますが。


期待半分不安半分でしたが、思っていたよりもずっと面白かったです。
単なる焼き直し、題名通りボーンの遺産で食ってるだけじゃんという突っ込みはありますが。
今回は過去3部作の脚本家だったトニー・ギルロイが監督としてシリーズ初登板しています。
脚本家らしい丁寧な描写が、ダグ・リーマンポール・グリーングラスと違った個性で面白かったです。
アーロンの例えば身体に埋め込まれている発信機をどうするか、偽造パスポートをどうやって作るのか等の小細工を、具体的に見せてくれます。
特に前2・3作の監督ポール・グリーングラスだったら、偽装工作も何やってるか何となくしか分からないような神経症的ショット繋ぎで押した事でしょう。
しかしギルロイは丁寧に映してくれます。
そんなのもあって136分というシリーズ通して最も長尺の映画になってしまいまいしたが。


過去のギルロイ監督2作『フィクサー』『デュプリシティ 〜スパイは、スパイに嘘をつく〜』は、共に面白いけれども、やや間延びして緊張感が途切れてしまう傾向にありました。
本作もそうではという杞憂があったのは当然でしょう。
このシリーズ、テンポが命と言っても過言ではないですから。
実際のところ、アーロンとマータが逃亡を始めるまで、つまり物語が助走を終えて始動するまではやや長いです。
1場面1場面を丁寧に描いているのは、脚本家らしく全てを説明したいからなのでしょう。
このところ『エンジェル ウォーズ』『ドライヴ』等でよく顔を観るようになったオスカー・アイザックがもたらす緊張感なぞもあって、面白いのですが。
しかし「逃亡&追跡」という、常に前進せざるを得ないプロットとあって、最後まで面白く観られました。


アクションは過去3部作を彷彿とさせるのは当然でしょう。
シリーズを通してスタント・コーディネイター兼第2班監督というダン・ブラッドリーという優秀な人に任せているので、基調は変わりません。
激しい接近戦、息を呑むような追撃戦。
画面も活き活きします。
特に見せ場となっているクライマクスのマニラ市街戦は、かなり引っ張って引っ張って引っ張っる長いアクションシークェンスになっていて、ここは盛り上がります。
テンション上げる音楽は、ギルロイ作品常連のジェームズ・ニュートン・ハワードが担当。
前3部作のジョン・パウエルをかなり意識していると思しき、シンセと打ち込み主体でしたがが、クライマクスではオケを大々的に使っていて、しかし違和感はありませんでした。
ハワードは元々メロディの人ではないですしね。


個人的に嬉しかったのは、久々に大画面で観るレイチェル・ワイズ
その美貌にうっとりです。
大画面で贔屓のスターを眺めるのは喜ばしい。
いえ、贔屓のレナーも身体が動いて観ているだけで楽しい。


やはりこれは起動編・誕生編なのでしょう。
ボーンと共演させたいとの発言が伝えられるプロデューサー、フランク・マーシャルの意向が通れば面白くなるかも。
しかしアーロン単身だと、単なるボーンの二番煎じの感が強くなるのは確かでしょう。
本作が『ボーン・スプレマシー』『ボーン・アルティメイタム』に比べて物足りないのは、その2作で採用された「追われる者が追う」というプロットに比べて、単なる逃亡激だからです。
次回作も逃亡激に徹するのか、逃亡兼追撃にするのか、それとも全く新たなプロットを用意するのか。
「脚本家」トニー・ギルロイのお手並み拝見としましょう。