days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Iron Sky


土曜深夜は『アイアン・スカイ』のミッドナイトショウ鑑賞でした。
30人くらい入っていたのですから、好き者には注目作だったのでしょう。
映画秘宝』等でも騒いでいましたし。
そもそも製作資金不足だったのでネットで資金集めをしていたのは知っていましたが、無事に完成し、しかも日本でも公開されたのは喜ばしい限りです。


2018年。
再選を目指す為の人気取りとして、参謀のヴィヴィアン(ペータ・サージェント)に吹き込まれた女性アメリカ大統領(ステファニー・ポール)は、半世紀ぶりに月面に人類を送り込みます。
そこで宇宙飛行士が発見したのはナチスの残党が築き、コーツフライシュ総統(ウド・キア)が統括する巨大秘密基地でした。
彼らは飛行士ワシントン(クリストファー・カービイ)が黒人なのにびっくり仰天します。
彼らは実は空飛ぶ円盤艦隊を使っての地球侵略を目論んでいたのです。
虎視眈々と総統の座を狙う将校アドラーゲッツ・オットー)は、ファシズムを信じる純朴な学者レナーテ(ユリア・ディーツェ)と共に、艦隊に先立ってアメリカに降り立ちます。


フィンランド発のこの映画、馬鹿馬鹿しくも面白いアイディアを、皮肉と風刺を効かせたブラックコメディに仕立てたのはご立派です。
ティモ・ヴオレンソラマイケル・カレスニコの脚本は、『チャップリンの独裁者』や『博士の異常な愛情』等の過去の名作映画ネタを盛り込みつつ、面白い趣向を凝らそうとしています。
しかしながら、正直言って中盤まではまどろっこしくて、そこそこ面白い程度に留まっていました。
くすりニヤニヤする場面はあれど、弾み方が物足りない。
しかしです。
後半のナチス総攻撃から盛り上がります。
宇宙軍大元帥こと故・野田昌宏の名言「SFは絵だ!」を思い出しましたよ。
「絵」的には優れているこの映画、ナチの秘密基地がペンタゴンならぬハーケンクロイツの形をしているのは笑えますが、バカでかい巨大建造物が月面にどでんと立っている様が見られるのは、ファンタスティックで楽しい。
それと総攻撃に出陣する場面。
巨大な母艦がうようよいる艦隊から、攻撃用空飛ぶ円盤の大軍が出撃する様は絵としてカッコ良い。
そかもここからの後半では、地球側も一方的にやられる訳じゃないので益々面白いのです。
メカ群対メカ群の戦いは壮観ですし、もっともっと観たいと思わせます。
デザインの感触としては、『未来少年コナン』等における宮崎駿に近いでしょうか。
それらの合間に戦争批判もちらりと入れ、笑わせてくれます。
後半でぐんぐん伸びた映画でした。
アメリカ批判もキツいですが、世界各国の皮肉ネタも可笑しい。
ここでは余りギャグは書かないですけどね。


それでも少々物足りなく感じるのは、折角のトンデモ系ナチネタなのだから、もっと新兵器等に拘って撮っても良かったのでは、という点です。
だって第二次世界大戦中のナチスは、「人間って役に立たないものを、巨額のお金をかけてマジメに作るんだな」と思わせるヘンテコ武器の宝庫なのですから。
艦隊も如何にもナチっぽいデザインで嬉しくなりますが、活躍の場がもっとあっても良かった。
でもスタッフには余りそんな趣味はなかったのか、あるいは予算のせいなのか、少々残念です。


ヒロインのユニア・ディーツェは可愛かったです。
序盤から下着姿でしょーもないギャグまで見せてくれて。
この場面で笑えたあなたは、この映画のターゲット層でもあるのです。


こんな映画を劇場公開してくれて、配給会社プレシディオ、ありがとう!