days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Haywire


エージェント・マロリー』ミッドナイト鑑賞を、先週に引き続きM田さんと行って来ました。
平日金曜23時50分からの回は私らを入れて7人でしたか。
やはり余りヒットしていないようです。


政府御用達の民間工作会社の凄腕エージェント、マロリー(ジーナ・カラーノ)は、田舎町のダイナーにていきなり同僚アーロン(チャニング・テイタム)に襲われます。
危機一髪逃れた彼女は、ダイナーに客として居合わせたスコット(マイケル・アンガラーノ)を強引に引きずり込み、彼の車を奪って逃走します。
マロリーはスコットに事の経緯を話しますが、元恋人で会社社長ケネス(ユアン・マグレガー)が差し向ける工作員達は、執拗に追って来ます。


工作員が組織に裏切られて逃走、逆襲に転じて行く…というのは手に垢の付いたプロットもいい所です。
近年のそれの代表はジェイソン・ボーン・シリーズでしょう。
先週観たそのスピン・オフ『ボーン・レガシー』だって同じです。
ですから本作も元々話には期待していませんでした。
監督は曲者スティーヴン・ソダーバーグ
その彼がアクションをどう撮るか興味津々でしたが、こう来ましたか。
1970年代の映画のようにじっくりこってりで、人を殺すのは一瞬ではなく、時間が掛かります。
観ていて痛そうなリアリズム路線。
ボーン・シリーズのような神経症的編集は一切無く、役者の身体の動きを見せます。
何度か足を使った追跡場面があって、これも延々撮っていました。
トラックバック撮影の多用だけ観ると、『アウトランド』等での往年のピーター・ハイアムズみたいでしたが、もっと重みがある感じです。
ヒロインの息遣いもリアルな音響でしたから、格闘・殺人場面も生々しい。
これが結構な迫力で重厚でした。


話は大した事ないし上映時間も90分強と小ぢんまりした作り。
これはソダーバーグの語り口、ジーナ・カラーノの身体能力の高さ、倒される男優陣の顔ぶれを観る映画です。
で、これが楽しかったのですよ。
時制の交錯といった編集技もソダーバーグらしいし、ミヒャエル・ファスベンダーマイケル・ダグラスアントニオ・バンデラスといった顔ぶれも面白い。
カーチェイス場面のまさかのアクシデントも、劇場で声を出して笑いました。
まぁしかしです、やはり動けるアクション女優の誕生は嬉しい。
ジーナ・カラーノの動きだけで映画の印象が決まるとは思いもしませんでした。
ソダーバーグは彼女に寄り添って撮っています。
細かくない編集も彼女の重みのあるアクションを生かす為。
文字通り主役を生かす為のスタイルを採用した映画は、近年では珍しいのではないでしょうか。
ソダーバーグとは傑作『アウト・オブ・サイト』でも組んでいたデヴィッド・ホームズの音楽もあって、益々70年代調。
ラストもバッサリあっさりで良かったです。
ふらり劇場に入って短い時間楽しめる、そんな映画でした。


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