days of cinema, music and food

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アウトレイジ ビヨンド


109グランベリーモールにて『アウトレイジ ビヨンド』を鑑賞しました。
平日木曜の午後だというのに183席の劇場が4割程度の入とは結構な事です。
客の殆どが中高年男性で、鑑賞後のトイレでジャージ上下の男性が横に居たので、ひょっとしてあっちの世界の人では?と疑心暗鬼になりましたよ。
そしてこのシネコンもフルデジタル劇場になりました。
フィルムが無くなりつつあるのを実感します。


加藤(三浦友和)が巨大暴力団組織・山王会のトップに上り詰めてから5年後の現在。
金庫番の石原(加瀬亮)を重用し、山王会は政財界にまで影響を及ぼす程の勢力までなっていました。
マル暴の刑事片岡(小日向文世)は山王会の力を削ぐべく策謀を巡らします。
そして獄中で死んだ筈の大友(ビートたけし)が出所すると、何とか加藤潰しを炊きつけようとするのでしたが。


北野武マーティン・スコセッシは似ています。
突発的暴力の恐怖や、笑いと恐怖が一緒くたなのを、肌感覚で知っている点において。


先日観た、話より暴力描写の方が目立っていた前作『アウトレイジ』よりも、こちらは話が主眼に置かれていて、ずっと面白かったです。
まぁ結局は暴力で解決なんですけども (^^;
面白いのは前作では義理人情より徹底してドライなものとして描かれたヤクザ社会が、義理人情や恩義主体になっている事です。
北野武は過去のヤクザ映画への返歌として前作を作ったのでしょうが、今度は自作である前作への返歌としたのかも知れません。
私自身はそこが興味深かったです。
それにしても北野武のしたたかな事。
出番は余り少ないのに、良い所持って行って結局1番印象に残ってるのは、ビートたけしなのですから。
面白いのは、陰謀策謀張り巡らされた疑心暗鬼のギラギラした男達ばかりの中で、たけし演ずる大友だけが老い、疲れ、「もういいよ」と言っている事です。
彼だけが明らかに権力ゲームの外に居るのです。
この立ち位置の変遷も非常に面白いものになっているので、ご注目下さい。


個人的にはもっと怒号飛び交う場面を観たかった、という物足りなさはありました。
だって最高のギャグですよ、ああいった場面は。
相悪いおっさん達が青筋立ててまくし立てるのは、サム・ライミピーター・ジャクソンの『死霊のはらわた』や『ブレインデッド』といったスプラッター映画と同じで、やり過ぎるとギャグになる法則通りなのです。
この点においては前作を凌駕しており、スクリーンを眺めながら笑いを禁じ得ませんでした。
だからもっともっと観たかった、と欲も出てしまったのですね。
予告編で期待した西田敏行よりも、その横にいつもいる塩見三省の顔面演技とドスの効いた声が楽しい。
そう言えば往年のハリウッド映画も、見るからに人相の悪い俳優が何人も居たのを思い出しますね。
先日亡くなったアーネスト・ボーグナインなぞその筆頭です。
日米ともに若い俳優は皆綺麗な顔立ちになってしまい、こういった味のある役者は貴重な存在となってしまいました。


拡散せずとも連鎖した『アウトレイジ』に対し、『アウトレイジ ビヨンド』は刑事・片岡を中心に回り、拡散と収束を見せます。
観終えた直後は物足りなさを感じつつ、じわじわと後から来る映画。
淡々としつつも、これはこれで味のある面白い映画なのでした。