days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

The Raven


推理作家ポー 最期の5日間』をミッドナイトショウにて鑑賞しました。
公開1週間後の金曜22時半からの回、客は私を入れて10人程度でした。


1849年のボルティモアで、母子が密室で惨たらしく殺害される事件が起こります。
事件を捜査する警視フィールズ(ルーク・エヴァンス)は、エドガー・アラン・ポージョン・キューザック)の『モルグ街の殺人』に酷似しているのに気付き、酔いどれ作家ポーに捜査協力を依頼します。
しかし事件は次々起こり、やがて犯人からポーへの挑戦状が届きます。
知恵比べだけではなく、今回の事件について小説化し、新聞に掲載すべし、という要求だったのです。
そしてポーの恋人エミリー(アリス・イヴ)が誘拐されてしまいます。
彼女の命を助けるには、挑戦を受けて立ち、謎を解明しなくてはなりません。
必死になってポーは事件を調べ、小説を書きますが。


まず邦題に苦言を申し上げたいです。
今の世の中、ポーを知らない人が増えたという事でしょうか。
わざわざ「推理作家」等と説明しなくてはならんとは、世の中変わったものです。
ともあれ、ポーのコピーキャットものというアイディアは歓迎しましょう。
このアイディアはすこぶる魅力的です。
何しろ彼の短編には名作・傑作揃い。
『モルグ街の殺人』『黒猫』『黄金虫』『振り子と陥穽』…。
期待せずにいられません。
もっとも私がポーを読んだのは30年も前なので、かなり記憶は薄れていますが。
映画は2時間弱の上映時間、雰囲気ある映像等もあって退屈はしませんでした。
しかしながら、あんな小説やこんな小説を何でもっと引用しない!とストレスが溜まる映画でもありました。
ジェームズ・マクティーグは『Vフォー・ヴェンデッタ』でも同様でしたが、真面目は良いとして面白味がもっとあれば良いのに、という監督です。
折角のジューシーな題材も、目黒の秋刀魚みたいに脂を抜いてしまったようで勿体無い。
撮影等技術的には良いのですが。


ジョン・キューザックは『ブロードウェイと銃弾』同様に大騒ぎする役は下手。
好きな役者なのに、見ていてイライラしてしまいます。
とは言っても、いつまでも『シュア・シング』じゃないだろうし、やはり演技力不足という事なのでしょう。
それとこれは、やはり脚本が不出来なのでしょう。
史実を微妙になぞりつつ、しかしなぞり方が中途半端で、「あり得たかも知れない真実」ものとしても中途半端でした。
物凄く勿体無い映画でした。


残酷描写がデジタル処理されたものが多く、綺麗過ぎました。
往年の特殊メイク多用の方が、腐臭漂うポーの小説のどろどろ感が出て良かったのではないでしょうか。
例えば、ダリオ・アルジェントジョージ・A・ロメロ監督、トム・サヴィーニがメイク担当だった、ポー原作のオムニバス映画『マスターズ・オブ・ホラー/悪夢の狂宴』のように(あちらも映画の出来は悪かったですが…)。