days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Frankenweenie


慌ただしい日だったからか、書くのを忘れていました。
ティム・バートンの新作人形アニメーション映画『フランケンウィニー』をミッドナイトショウ鑑賞しました。
3連休中日の土曜23時25分からのミッドナイトショウ、観客は10人程度の入り、内4人程が女性でした(カップルばかりだっけど)。


科学が大好きな孤独な少年ヴィクター・フランケンシュタイン(声:チャーリー・ターハン)は、愛犬スパーキーだけが唯一の親友でした。
しかしある日、スパーキーは車に轢かれて呆気無く死んでしまいます。
悲嘆の底に沈むヴィクターは、新しく来た科学の先生(声:マーティン・ランドー)の授業で、カエルの死体に電流を流すと脚が痙攣するのにヒントを得、スパーキーを蘇らせるのですが…。


ティム・バートンがディズニー時代の1984年に監督した、同名の短編白黒実写映画を、長編白黒人形アニメ3D映画に再映画化。
そのオリジナル短編を知っているとびっくら仰天の後半…いや、知っていなくともびっくら仰天の展開が待ち受けています。
それまでの科学云々は何だったのか、という豹変振りなのですね、これが。
そうか、コレをやりたかったのね、ティム・バートンは…という暴走振りが可笑しい。
そもそも、今のご時世に白黒で、しかも3Dの人形アニメ映画を撮ろうという感性がバートンらしいですいし、全編に渡っての怪奇映画ネタのくすぐりも楽しい。
映画としてのバランスは明らかにぶっ壊れているし、全然傑作とか思いません。
が、ここ最近の『アリス・イン・ワンダーランド』(2010)や『ダーク・シャドウ』(2012)等と比べると、私は断然こちらが好きです。
これはこれで楽しい映画体験でした。


キャストではマーティン・ランドーの深みのある声も笑い所聴き所です。
勝手にクリストファー・リーが出ているものだと思っていたので、彼をどうやって出すのかと興味シンシンでしたが、まさかああいう方法でしたか。
ヴィクターのは母役キャサリン・オハラ、父役マーティン・ショートも相当に久々でした。
オハラはバートン製作の傑作人形アニメ『ナイトメアー・ボフォア・クリスマス』のヒロイン、サリー役も良かったですよね。


そう、この映画で顕著なのは両親の存在です。
過去のバートン作品ならば、家庭があっても孤独感を癒さない存在だった両親が、ここでは温かみのある視点で描かれています。
孤独でも才能に理解を示す母。
もっとスポーツとかしてもらいたいと、理解は出来なくとも自分なりに愛情表現をする父。
彼らはヴィクター少年にとって、帰るべき家の中心にいる存在なのです。
近年のバートン映画は、特に『ビッグ・フィッシュ』(2003)以降は家庭が肯定的に描かれるようになってきましたが、特に本作は明らかだと思います。
これを作家の成熟と見るか、それとも個性の減退という点で後退と見るか、意見は分かれましょうが、今後バートンがどのように個性を生かしつつ家庭を描いていくのか、注目したいものです。


人形アニメ映画としては非常に高度な技術が多用されており、これは見ものとなっています。
ドイツ表現主義的な影を強調した凝った映像もあって、視覚面でも非常に楽しめる映画でした。
一方、いわゆる「普通の映画」ばかり見ている人にとっては、何かこりゃ、という怪作になってはいるとも言えます。


それにしてもスパーキー、可愛い過ぎるぞ!