days of cinema, music and food

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Life of Pi


ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』をレイトショウ、3D字幕版で鑑賞しました。
これは大失敗でした!
何故かと言うと、通常の3D上映ではなく、IMAX 3Dで観るべき映画だったからです。


16歳のインド人青年パイ(スラージ・シャルマ)は、乗っていた貨物船の難破で家族全員を失う。
救命ボートで乗り合わせたのは、1匹のベンガルトラ
絶体絶命のピンチを、パイは知恵と勇気を振り絞って乗り切ろうとするが。


文字通り素晴らしい映像体験でした。
冒頭からラストまでこれだけ3D感が持続するのも珍しい。
ヤン・マーテルの原作は未読ですし、青年がトラと救命ボートで一緒になるという事しか知らなかったのですが、単純なプロットを如何に物語るかの手本ではないでしょうか。
アン・リーは元々好きな監督でしたが、その丁寧な語り部としての資質と、『ハルク』で得たVFX体験の融合(映画は失敗作の烙印を押されていますが)で、成功していると思います。
また全編に渡って使われているVFXが、物語を語る為に奉仕していました。
映像も美麗そのもの。
3Dも含めた映像設計も素晴らしい。
これは3Dも含めての映像体験。
絶対自宅での2D鑑賞ではダメな映画ですよ。


映画の序盤、というか前半では、パイの生い立ちがかなり丁寧に描写されます。
ですから中盤以降の危機また危機を乗り越える様も、説得力があったのですね。
単純な偶然や奇跡ではなく、一応論理的に危機を乗り越えるようになっているものの(無論、現実にはそんなに上手く行かないのでしょうが)、ちゃんと観客に納得させようという語り部達の姿勢も素晴らしい。
そしてそもそもこの物語は、壮大なホラなのか、はたまた事実なのか。
その意味で終盤にはかなり衝撃的な展開も用意していますが、その曖昧さも含めて、物語を物語る事の素晴らしさ、あるいは語り部が物語を物語る覚悟といったものが、映画のテーマだったのでしょう。
映画の半分以上が救命ボートの中で進行するという、小ぢんまりとした舞台設定でありながら、尚且つ壮大でもある世界観という矛盾が楽しい映画でもありました。


これは是非、劇場で、3Dで、出来ればIMAX 3Dで観てもらいたい映画です。
3Dのみならず、文字通り画角まで使いこなしていてびっくりしました。
凄かったなぁ。
映画は映像体験であるという点において、とても映画らしい映画でしたよ。