days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

桜のトンネル、"Cloud Atlas"


近所の桜通りが、ご覧のように満開となりました。
桜のトンネルとはこの事です。
いきなり渋滞になるのも例年同様。
危ないので気を付けないといけません (^^;
まだまだ肌寒いので、もう少々、この華やかさが続くと良いです。


さて土曜日、サーカスを観たその後の晩に、近所に住む友人のM田さんとウォシャウスキー姉弟トム・ティクヴァ共同監督作品『クラウド アトラス』を観て来ました。
公開2週目の土曜23時40分からの回は20人強の入りです。



1849年の南太平洋上で病に倒れた若き弁護士アダム(ジム・スタージェス)は、医者グース(トム・ハンクス)の治療を受ける事になりますが、実は陰謀が隠されていたのです。
1936年スコットランド、アダムの航海日誌を読んでいる若き作曲家ロバート(ベン・ウィショー)は、恋人シックススミス(ジェームズ・ダーシー)の元を離れ、大作曲家エアズ(ジム・ブロードベント)の元で採譜師として住み込みますが、やがて自分の作曲を始めます。
1973年サンフランシスコ、物理学者となった老シックススミス(ジェームズ・ダーシー)は、ひょんな事から知り合った記者レイ(ハリー・ベリー)に原発の報告書を渡そうとして殺害されます。
レイは原発職員サックス(トム・ハンクス)と知り合い、サックスは彼女に恋心を抱くようになりますが、彼らに魔手が迫ります。
2012年ロンドン、昨夏ホギンズ(トム・ハンクス)は一躍カルトスターになり、担当編集者カベンディッシュ(ジム・ブロードベント)は大儲け。
ところがホギンズの弟らに印税をかすめ取っているので返せと脅されるのですが。
2144年ネオ・ソウル、全体主義社会では遺伝子操作で生まれた人造人間を奴隷として扱っていました。
レストラン従業員ソンミ451(ペ・ドゥナ)は、隠れてカベンディッシュ原作の映画を隠れて観たりで自我に目覚めます。
そんなとき、謎の男ヘジュ(ジム・スタージェス)が現れます。
文明崩壊後の遥か後、ソンミは女神として崇められています。
ザックリー(トム・ハンクス)の原始的な村に、高度な文明を持つ社会からの使者メロニム(ハル・ベリー)がやって来るが、彼女の目的とは。


6本の短編が相互に関連しながら交錯していく3時間近い大作でした。
コミカル編あり、スリラー編あり、恋愛編あり、SF編ありと、1本30分の短編が同時進行で観られる、とも言えます。
それがまとめとしてSF映画になっていて、これは私好みでした。
賛否両論ありますが、私は賛。
安っぽいところもご都合主義的なところもありますが、映画らしい体験が出来たからです。
その一点だけでも観て良かったと思います。
1つ1つのエピソードは物凄い訳でもないけれど、各々のメッセージがパラレルで来られると何だか圧倒されてしまいます。
いや、基本的に非常にロマンティックな映画でした。
真のロマンティシズムとは実現するかどうかではなく、それに想いを馳せる事。
この映画は、その場で実現しない事、自分が目撃しない事、出来ない事に想いをはせる人々の話でもあったのです。
それが同時進行で徐々に全貌を表す。
これはやはり映像の力、編集の力なのでしょう。
だから映画らしい映画なのでした。
それとデヴィッド・ミッチェルの原作は未読ですが、役者が1人何役もやっているので、輪廻転生といったものが明確になったのは映画ならではの趣向だと思いました。
時に人種が変わり、時に性別が変わり、というのはエンドクレジットで初めて分かるところもありますが、これは映像の力、映画の力そのものです。


全然難解ではなく、各エピソードは分かりやすいものでした。
ただ映画の構成が複雑なので、誰がどこに出ていたとか、そういった確認は後でしたくなるでしょう。
また全てがハッピーエンディングでもありません。
でも世界の中で、歴史の中で、個々人の殆どは埋もれて行っているように思えるけれども、そうではなくて、皆それぞれ役割がきちんとあるのだというメッセージも含めて、基本的に前向きな映画になっていると思いました。


私が少々醒めたのは、殺し屋役ヒューゴ・ウィーヴィングが延々追っかけて来るくだりが安っぽかったのと、ラヴシーンでのボカシ。
特に後者はBD発売時には何とかしてもらいたいですなぁ。
というかPG12に下げる為に規制したのかしらん(修「正」と言いたくない)。
作者の意図した形で映画は観たいものです。