days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

"Paranorman" and "Wreck-It Ralph"


この土曜日は夜に3Dアニメ映画のハシゴをしました。


まずは『パラノーマン ブライス・ホローの謎』字幕3D版をレイトショウ鑑賞しました。
公開初日の土曜21時からの回は私を入れて10人強の入りです。


ブライス・ホローは300年前に魔女狩りが行われた町です。そこに住む11歳の少年ノーマン(声:コディ・スミット=マクフィー)は、ホラー映画や心霊ネタが大好きで、死者と交流が出来る特殊能力の持ち主でした。
しかしマッチョな父の理解は得られず、また悪ガキのアルヴィン(クリストファー・ミンツ=プラッセ)からのイジメも受けていました。
ある日、ノーマンは叔父(声:ジョン・グッドマン)から衝撃の事実を告げられます。
300年前に封印された魔女の魂が悪霊を呼び覚ましたら、町を滅ぼすだろう。
それを食い止められるのは、代々死者と会話が出来る者だけなのだ。
そしてノーマンこそがその役目を担うべきなのだ!と。


ロアルド・ダールの児童文学を人形アニメで映画化した『コララインとボタンの魔女 3D』と同じく、ライカ・プロによる長編人形アニメ映画です。
1コマ撮影するごとに数ミリ人形を動かし、顔面は表情を変える為にリプレイスし…といった作業を延々繰り返す、気の遠くなる作業が必要な、まさに職人芸が要求される手法。
でもモデルアニメーターは小学生の時に憧れていた職業の1つでもあるので、未だに興味のある技術でもあります。
もちろん、CGで補完したり、3D映画になっていたりで、技術的にはアップデートされているものの、カクカクとした動きが醸し出す温もりは、CG映画とはまた違った味わいがあるものです。


それはともかく、映像も素晴らしいのですが、ホラー映画の定番プロットを用いながらもそこかしこでひっくり返す脚本が面白い。
原作無しのオリジナルのようですが、芸が細かいのは人形アニメだけではなく、展開、ギャグ、ホラー映画ネタも、でした。
普通に観ても楽しめる映画なのは間違いありません。
しかし往年のホラー映画を見慣れた者ならばより楽しめるでしょう。
作者達は明らかにホラー映画、怪奇映画が大好きで、そういったジャンルへの愛情もたっぷり込められています。
ジョン・ブライオンの音楽もホラー映画をモチーフにした感じで面白かった。


終盤に用意されているテーマも力強い。
負の連鎖は自分で止めるんだというメッセージは、最近ハリウッド映画でちらほらと見掛けます。
これは戦争大国アメリカでも、忸怩たる想いを抱く映画人が多い証しでもありますね。


字幕版だったので知っている役者達の声も楽しめました。
コストの問題でしょうか、日本語吹き替え版は上映されていないようです。
ジョン・グッドマン、売れっ子ですね。
毎月観ている気分ですよ。
悪ガキ役クリストファー・ミンツ・プラッセ、姉役アナ・ケンドリック、親友の兄貴役ケイシー・アフレック
彼らにも笑わせてもらいました。
で、ジョデル・フェルランドは、やはりああいう役か、とか(^^;


機会があったら是非、ご覧あれ。
お勧めの映画です。


2本目の映画はこちら。
シュガー・ラッシュ』日本語吹替え3D版をミッドナイトショウにて鑑賞しました。
0時10分からの回は十数人の入り。
ヒットを伝え聞くし、1番大きい小屋でやっていたので、日中は入っているのでしょう。


舞台は昔ながらのゲームセンター。
夜になり閉店すると、ゲームの世界の住人達は自由意志の元で行動するようになります。
30年来の人気ゲーム「フィックス・イット・フェリックス」の悪役ラルフは、人に忌み嫌われ、友達も居ない悪役稼業にすっかり嫌気が差していました。
長年の不満が爆発したラルフは、通常はヒーローしか手に入れられない金メダルを自分が手に入れられれば、皆を見返す事が出来ると思い立ち、他のゲームでの金メダル獲得を目論みます。
しかし最新のグラフィックを用いたFPS「ヒーローズ・デューティー」で「最近のゲームはいつの間にこんなに暴力的になったんだぁ!」とパニックを起こし、すったもんだの騒動でカートレーシーングゲーム「シュガー・ラッシュ」に迷い込んでしまいます。
そこでバグキャラでレース出場を禁じられた少女ヴァネロペと知り合いますが。


ここ何年かピクサー作品の、以前に比べての質の低下が気になる昨今ですが、本作はピクサーの親会社ディズニー・ブランドのCGIアニメ映画です。
期待はしていたのですが、それ以上の出来栄えで、これが素晴らしい傑作でした。
友情、恋愛、ドラマ、アクション、ミステリ…色々な要素が過不足なく入っていて笑いもたっぷり。
さらにちょっと感動させられます。
扱っている題材からしピクサーの『トイ・ストーリー』シリーズを思わせるものの、実際これがピクサー作品と言われても分からないような、モダンな内容でした。
いや、堪能しましたよ。


ラルフは長年の仕事で勤続疲労を起こしている中年男性そのものでしょう。
非常に人間臭く、ダメなところも多いキャラです。
そんな彼に自分を重ねて感情移入するも良し、あるいはバグだからという理由で仲間外れにされており、レースに出場してプレイアブル・キャラ(客が操作出来るキャラ)の座を獲得したい、という少女ヴァネロペに感情移入するも良し。
どちらもとても魅力的なキャラです。
他にも、生真面目でも案外良いヤツのフェリックスや、女性の鬼軍曹カルフーンら、脇役も印象に残ります。
ピクサー作品に比べると印象に残るキャラは絞ってある感じなものの、これだけ内容盛りだくさんならば、これ以上の過剰なキャラ描写は不要でしょう。
ここら辺もバランス良く感じました。


映画はゲームを扱ってあるとあって、懐かしいキャラもあちこち出ています。
パックマン、テニスゲーム、ディグダグストリートファイター、それに一瞬だけメタルギア・ソリッドまで…。
ラルフは恐らくドンキーコングのイメージなのでしょう。
マンションを破壊しまくるラルフの投擲攻撃を避けて、フェリックスは何でも直すハンマーで修理していく、というゲームなのですから。
ちょっとマリオも入っているのかな。
シュガー・ラッシュ」は「マリオ・カート」の女の子版です。
カラフルでコミカル、キュートでエキサイティング。
レース場面のスピード感と爽快感、そして迫力は手に汗握ります。
笑いもたっぷり、終盤には感動させ、最後は大団円。
アニメならではの飛躍や誇張、省略も楽しい、スカッとする娯楽映画でした。
3D効果もとても良く、大満足の鑑賞でした。
大多数にお勧め出来る傑作です。


残念なのは字幕版は都心の1館のみ上映で、実質吹き替え版しか観られない事。
選択の自由という観点からも、もう少し字幕版の上映を望みたいものです。
例えばレイトショウ以降の回は字幕版に切り替えてしまうとか。
デジタル上映なのだから何とかならないものなのでしょうか。
ラルフ役はジョン・C・ライリーだし、カルフーン役は『glee』などのジェーン・リンチですよ。
彼らの声も聴きたかった。


冒頭に着いている6分間の短編『紙ひこうき』も良かったです。
台詞無しのパートカラー/モノクロ映画です。
原題の『Paperman』の方が内容に合っているので少々邦題は残念ですが、これもとても面白かった。
ネット上では早くも主人公が勤務中に色恋に夢中になって…等と言う批判もあり、まぁそれはそうなのですが、私は楽しめましたよ。
終盤のよもやの展開が、これまた好き嫌い分かれそうですが。
この映画が何気に凄いのは、男性の主人公が一瞬で恋におちるのが納得するくらいに、女性キャラが登場して即、魅力的に描かれている事です。
顔つきは近年のディズニー路線に近かった。
数分のアニメは瞬発力が問われるのです。
今年のアカデミー短編アニメーション部門受賞作、とか全く知らずに観ていたのですが、印象に残る映画でした。