days of cinema, music and food

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The Impossible


昨年の東京国際映画祭で話題を呼んだ『インポッシブル』をレイトショウ鑑賞しました。
津波を扱っているために日本での劇場公開が危ぶまれた映画でもあります。
公開2週目の土曜21時10分からの回は20人強の入り。
夕方以降の上映しかないのが残念です。


2004年12月24日。
タイのプーケット空港に降り立ったのはイギリス人家族のベネット家。
元医師のマリア(ナオミ・ワッツ)とヘンリー(ユアン・マクレガー)、3人の子供達はカオラックで冬休みを過ごすべくやって来たのだ。
だがクリスマス明けの26日、彼らを悪夢が襲う。
スマトラ沖で発生した大地震により、津波に飲み込まれた一家は離散してしまったのだ。
重症を負ったマリアを助けるべく、長男のルーカス(トム・ホランド)は奮闘するが。


真っ黒い画面の冒頭からして、不気味なノイズ音にこちらは身構えてしまいます。
不穏さを忍ばせる演出ゆえ、幸せな家族の描写であってもこちらは緊張してしまいますが、いざ津波が襲いかかると全身に力が入ってしまいました。
文字通り観客席を飲み込む、いや自分が飲み込まれてしまう凄まじい映像と音響。
クリント・イーストウッドの『ヒア アフター』同様、スペクタクルよりも体感型の描写が続きます。
津波に飲み込まれると痛いんだ、というのはあの映画で知りましたが、こちらはさらに痛い。
VFX、メイク、役者の演技もあって臨場感が物凄かった。
肉体的に痛い描写が多いので、見ているこちらもへとへとになります。
そして精神的にも痛さが伝わる場面も多い。
しかしこれは、家族の離散とその先にある希望の映画でもあるのです。
甘さや感傷は無く、それでも感動がありました。
そしてラスト、メモ書きには心が締め付けられます。


フアン・アントニオ・バヨナ監督作品は初めて観ました(本作はスペイン映画)。
優れた描写も多かったと思います。
全身に傷を負い、木の上で疲労困憊しているマリアの頭を優しく撫でる、助けた幼子。
避難場所から天空を見上げ、老女(ジェラルディン・チャップリン)と星と光について語る場面。
閉めたカーテンの向こうに見える見知った人影。
子供達が戯れる赤いゴムボール。
言葉ではなく映像で語る、映画らしい映画でした。
無論、序盤と幾度か繰り返される奔流に飲み込まれる描写の凄まじさも十分に映画的体験ですが、ドラマ部分も良い描写が多かったのです。


贔屓のナオミ・ワッツユアン・マクレガーも良かったのですが、実質主役のトム・ホランド少年が素晴らしかった。
実は映画は長男の成長物語にもなっていて、これがまた心に残るものなのです。
これはお勧めの映画でした。