days of cinema, music and food

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Song for Marion


映画『アンコール!!』を鑑賞しました。
日曜朝いちの回は20人弱の入り。
始まって1か月近く経ちましたが、まだ終わらずに上映してくれて有難いです。
評判も良いし、入りも良いのでしょうか。


ロンドンに住むアーサー(テレンス・スタンプ)とマリオン(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)は好対照の老夫婦。
気難しく無口な頑固老人のアーサーに対して、マリオンは明るく社交的、シニア合唱団の活動も楽しんでいた。
若く情熱のある音楽教師エリザベス(ジェマ・アータートン)指導の元、ロックやポップスを皆で歌う彼らに対し、アーサーは嫌悪を抱くかのように接する。
が、ある日、愛するマリオンの癌が再発してしまった。


60年代の英国退廃青年だったスタンプもすっかりいぶし銀の老人となりましたが、やはり画になるのは変わらずです。
それに大女優レッドグレイヴに、彼らの息子役はイヤな男を演じさせたらピカ一のクリストファー・エクルストン(この映画では良い役)、お気に入り女優の1人ジェマ・アータートンと、キャストは魅力的。
これだけで観たかったのですが、周囲でも好評なので期待していましたよ。


実際のところ、とても爽やかな感動と笑いが随所にちりばめられていた、チャーミングな映画になっていたと思います。
妻には献身的だが、それ以外の息子とも含めた人間関係が上手く行かない男アーサーが、とてもよく描けていました。
元々気難しかったようではありますが、年月の間に徐々に自分で作り上げて来た鎧でもあったのでしょう。
それは息子との接し方にもよく出ています。
妻や他の人には息子を褒めていても、直接本人を前にすると辛く当たってしまうのでした。
鎧はアーサーの弱さの裏返しでもあったのです。
周囲の温かさもあってアーサーはどう変わっていくか…というのも、とても良く描けていました。
脚本と監督をしたポール・アンドリュー・ウィリアムズという人は、これで初めて観ましたが、全体的にとても良い仕事をしていました。
キャメラワークも含めてこれ見よがしではないものの、奥ゆかしく効果的な演出でした。


またこの映画、人は何故歌うのかという問いに対する答えも描かれていたと思います。
歌は自分だけではなく、他人に与えられる喜びであり、力でもあるのです。
それは人生の喜びや力そのものに重なるのではないでしょうか。


尚、原題は『Song for Marion』ですが、米題は『Unfinished Song』となっているのでした。
エンドタイトルに流れる後者と同名主題歌はセリーヌ・ディオンが歌っていました。