days of cinema, music and food

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Pacific Rim


話題の超大作SFアクション映画『パシフィック・リム』を観て来ました。
字幕版IMAX 3Dでの鑑賞です。
日曜15時25分からの回、364席の劇場は約半分の入りでした。


2013年、海底地震の影響で太平洋海底の裂け目に異次元の扉が開き、巨大なKAIJUが多数出現、太平洋沿岸の大都市を次々襲った。
人類は結託して英知と莫大な費用を注ぎ込み、2人1組で操縦する巨大ロボット兵器イエーガーを開発。
KAIJUを撃退していく。
だがさらに強力なKAIJUが続々と出現、人類は存亡の危機へを追い込まれていった。
5年前の戦闘で悲劇に見舞われて心に傷を負い、世界を転々としていた元イエーガーパイロット、ローリー(チャーリー・ハナム)は、司令官ペントガスト(イドリス・エルバ)によって再び招集され、相性の良さを買われて実戦経験の無いマコ(菊地凛子)と組む事になるが。


事前の期待が大きかった為か、公開直後のネットでは賛否両論だったこの映画。
若干の不安とそこそこの期待でもって臨んでみたら…いやぁ面白かったですよ。
巨大ロボット対怪獣の単なるド付き合い映画かと思っていたら、ドラマ部分まで力が入っている良く出来た映画でした。
監督&脚本のギレルモ・デル・トロは才能は認めるものの、相性が良いんだか悪いんだかの監督だったので不安がありました。
しかしやはり彼は単なるオタク監督ではなく、プロの映画監督でした。
ロボも怪獣も大好きなのは良く伝わるけれども、映画全体のバランスを損なうことなく演出されていたのです。
もちろん、序盤にある無駄に凝った(褒めています)出撃メカニズムのくだりとか、必殺技を繰り出す当たりなど、日本の特撮もの・ロボットアニメの影響が散見されるものの、細部にのみ引っ張られる事なく、映画全体をまとめ上げていると感じられました。
それがちょい物足りなさにも通じるのも事実なのですが。
例えば必殺技を繰り出す場面も、日本のアニメならばもっと見栄を切るようなショットや「溜め」を多用するでしょうが、それも殆どありません。
またロボットはやはり道具であって、キャラといった特別扱いではありません。
多国籍軍でロボットも多種多様なのだから、それぞれにもう少し見せ場や描き分けが出来ていたら、と残念に思う部分もあります。
ここら辺のドライさは、日本のアニメ・特撮と、西洋のそれとの感覚的な違いなのでしょう。
同様に、自己犠牲や泣かせ所である筈の別れの場面等も、ドライなタッチで描かれています。


それでも、です。
心の傷を乗り越えて、やがて結束していくローリーとマコのドラマ(主役2人は好演だし、菊地凛子はSFヒロインを堂々と演じていました)、ペントコストとマコのドラマ等(イドリス・エルバ、素晴らしい)、定番ではあるもののエモーショナルな出来になっています。
私自身がドラマ部分で1番気に入ったのは、ローリーとマコが劇中では恋愛関係にならない事です。
彼らはまず何よりも、共に互いに命を預け合った信頼出来るパートナー同士なのです。
非常に西欧的であると同時に戦場でのリアリズムをも感じたし、また映画にノイズとなる余計な萌えやウェットな情感を排除したのは、清々しいし、非常に好感が持てました。
また、オタク科学者の描き方、香港で登場するデル・トロ組怪優ロン・パールマンなど脇役も笑わせてくれるし、意外に印象に残ります。
デル・トロ演出だけではなく、共同脚本化、原案者のトラヴィス・ビーチャムの功績も湛えましょう。


売りとなっているKAIJU対ロボットの戦闘場面はこれは凄まじい。
今回IMAX 3Dで観て大正解でした。
超高画質の大画面と超高音質の大音響でもって、空前絶後の映像・音響体験となったのです。
いや、本当に手に汗握りますよ。
2D撮影の3D変換映画とあって3D効果は余り期待していなかったら、こちらも好調。
かなり立体感、奥行き感がありました。
それでもショット繋ぎが細かくなる戦闘場面では3D効果はかなり減退するし、途中からは3Dに意識が行かなくなるのも事実ですが。


本作は高額の製作費が掛かっているものの、日米ともに興業的にはやや物足りないものとなっているそうです。
集客力のある大スターは出ていないし、そもそも怪獣対ロボットという男子心のみターゲットにした映画に見えているからでしょうう。
パシフィック・リム』は大傑作ではないし、脚本も含めて細部に粗さがあります。
でも正統派娯楽映画として十分以上に楽しめる映画に仕上がっているし、また前代未聞の映画らしい映画ともなっています。
これを映画館で見逃すなんて勿体無い。
そう、率直に言って私はこれが大層気に入ってしまったし、何よりもこの映画の持つパワーに参ってしまったのです。