days of cinema, music and food

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Star Trek Into Darkness


スター・トレック イントゥ・ダークネス』をIMAX 3Dで鑑賞しました。
公開2日目の土曜21時25分からの回、361席の劇場は半分程の入りです。


西暦2259年、USSエンタープライズ号艦長カーク(クリス・パイン)は、重大な規律違反を犯して解任される。
一方、ロンドンでは大規模テロが発生、首謀者はジョン・ハリソン(ベネディクト・カンバーバッチ)と判明するが…。


私はトレッキーという程の熱烈ファンではないですが、往年のTVシリーズ宇宙大作戦』はよく見ていたし、その劇場版は全てTVやらVHSやらでかなり楽しませてもらっていました。
その後の新シリーズはまるで観ていないですが。
で、そのリメイクだった本作の前作『スター・トレック』(2009)は、全世界で大ヒット、高評価でしたが、私は全く買っていません。
原点にあった暴力だけではなく知性を、というテーマを捨て去った脳筋展開、それに当時、TVシリーズエイリアス』『LOST』で注目されていたクリエイター、J・J・エイブラムスの演出が、ちまちましていてまるで映画を感じさせず、TVっぽかったからなのです(詳細は過去のレヴューをどうぞ)。
この男、映画監督として『M:i:III』で『スパイ大作戦』の脳筋化を実行化&ちまちま演出を行った戦犯であり、私の中では全く信用のおけない監督です。
SUPER 8/スーパーエイト』はやはり世間の高評価程には面白くなかったのですが、映像はようやく映画っぽさを見せるようになったので、本作の大ヒット&高評価でちょっとは期待出来ると思った次第でした。


長々書きましたが、結論から言うと、幸いにも『スター・トレック イントゥ・ダークネス』はとても楽しめるSF活劇に仕上がっています。
いやむしろ劇場の大画面、大音響で楽しんでもらいたいし、またIMAX鑑賞を推奨したくなる映画でした。
壮観なショットは散見されるものの、相変わらず映像は壮大さにはいささかかけるきらいはあります。
それでも過去作に比べるとJJは監督として進歩していると思いました。
今までは段取りだけで極めてTV的な話運びが目立っていましたが、本作はそこまで酷くはありません。
とは言え、例えば終幕はもう少し引っ張って盛り上げてもらいたいし、特に追撃場面はもっと引っ張って引っ張ってくれれば…と惜しく感じています。
そんなところもまだTVっぽいのですよね、JJは。
溜めとか間は余り無く、TV屋っぽさは気にはなるものの、それでも今までに比べると相当マシでしょう。
それにしても、最近はこういう話運びばかりの映画が多いですね。
だから泣きを意図した場面でも感動出来ないのですよ。


それでも、まずは劇場では意外な展開を楽しんでもらいたいです。
脚本家チームは、スター・トレックの過去の遺産を上手く活用し、現代的なSF活劇に上手くまとめあげました。
都合の良過ぎる展開も散見はされても許容範囲内でしたし、危機また危機を上手く配置していて楽しい。
うぬぼれた若造カークの成長物語という軸がブレないので、話のややもするとせわしない展開も、横道に逸れる事が無かったのが大きかったです。
またお馴染みのクルーも個性豊か、かつ皆が見せ場を持っていて楽しい。


映画最大の見どころは、悪役のベネ様ことベネディクト・カンバーバッチです。
人間ばなれした風貌と低い声、がっちりした演技でもって、映画をすっかり食っていました。
通常、この手の映画で主人公ら正義の味方連中に比して敵の数が少ない場合、「そんなに寄ってたかっていじめなくても…」と思う事がよくあります。
この映画は違いました。
ジョン・ハリソンは強い。
とにかく強い。
いや、強過ぎるくらいです。
だからエンタープライズ号の個性豊かなクルーが団結し、結束して、初めて対峙出来るような相手なのです。
しかもその正体が、まさか…ね。
カンバーバッチ起用は大成功。
彼が出ていない本作など想像も出来ません。


そのハリソンの正体や、毛玉生物の登場も含めて、スタトレ系ネタも楽しめました。
実は1番良かったのが、ラストシーンにするりと入り込む金管ソロ演奏のフレーズ。
そこまでは「やっぱり最近の映画音楽らしく記憶に残る旋律が無い…」と音楽に不満を覚えていたので、あれで許しましょう。
もっともあれも過去の遺産ですが…。
しかし本作はスタトレに詳しくない人、いや前作ですら観ていない人でも、1本の映画として楽しめるのではないでしょうか。
このポピュラリティの獲得はJJとそのチームの力によるものです。


スター・トレック イントゥ・ダークネス』は、色々問題はあるけれども、相対的に非常に楽しめる娯楽活劇に仕上がっています。
今夏はSF大作の当たり年ですね。
これも是非、機会を作って劇場で楽しんでもらいたいです。


しかし、です。
もう3D映画は3D撮影をする必要はなさそう。
2D撮影でも3D効果が考慮された撮影と、注意深い変換技術があれば全然OKなんですね。
それくらいに効果的な3Dでした。
尚、画角はIMAX(1.78:1)と2.35:1の混合上映。
IMAX撮影場面やVFX全面使用ショットになると、上下いっぱいに画面が広がっていました。