days of cinema, music and food

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Elysium


期待のSF映画エリジウム』をミッドナイト鑑賞しました。
近所のM田さんと御一緒です。
公開初日の金曜23時35分からの回は、20人強の入りでした。


2154年
人口爆発により地球上はスラム化、極一部の富裕層のみが軌道上にある宇宙コロニー・エリジウムに移住し、豊かな暮らしをしていた。
そこではあらゆる怪我や病気が治る医療システムがあり、富裕層はその恩恵を被っていた。
一方、大多数の貧民は、劣悪な住・労働環境での苦境を強いられていたが、エリジウムの強硬な長官デラコート(ジョディ・フォスター)により、エリジウムに向かう者は撃墜されてしまうのであった。
元札付きの肉体労働者マックス(マット・デイモン)は、ロボット工場での事故により多量の放射線を浴びてしまい、余命5日と宣告されてしまう。
犯罪組織のボスで顔見知りのスパイダー(ワグナー・モウラ)に、自分が助かる為にエリジウムに行かせてくれと懇願するが。


前作である処女作『第9地区』であっと驚かされたニール・ブロムカンプの監督&脚本第2作です。
今度は大作、しかもスターが主演と大掛かりな舞台とあって、見どころの多い映画になっています。
結論から言うと、私は『第9地区』の方が好きです。
あちらの終始予想のつかない展開に比べ、こちらは後半が割と予定調和、かつ粗くなってしまっています。
恋愛要素等、受けの良いものは入っているものの、どうも分かり切った部分が多かったように思えて仕方無かったのです。
身勝手な男が最後に奮起するという『第9地区』と似た構造は良いとして、マックスが途中からかなり強くなっているので、盛り上がりはあちらの方に軍配が上がります。
もう少し何らかのドラマ部分なりの工夫が必要だったのでしょう。
全体に脚本が弱く感じられました。
もっとも前半はあれよあれよという間に、思いも付かない方向に話が転がるので、相当にかなり面白いです。
前作同様に豪快に人体が弾け飛ぶアクション場面も迫力満点。
何より、社会批評性を盛り込みながらも、活劇精神が中心にどしりとあるのが良い。


前作同様、SF大道具小道具の楽しさも満載でした。
富裕層のそれらは色も鮮やかで美しい仕上がりなのに対し、地球上のは小汚くて見るからに危険そう、ゴツゴツとしたものばかりなのも面白い。
例えばウィリアム・フィクトナー演ずるマックスの勤務先である大企業社長が乗る、ヘリコプター。
イタリア製高級スポーツカーのような鮮やかな赤と流線型が美しい。
一方、ギャングや殺し屋達が乗るそれは、汚らしく、しかしメカとしての存在感に溢れています。
また銃器も含めた武器類。
当たると爆発して人体を木端微塵にする手裏剣や炸裂弾、あるいはレールガンや手持ち盾のようなバリア等、観ていてワクワクします。
これは昨夏観たトータル・リコール』を思い出させましたね。
特に強烈なのがマックスが身に付けるエクソ・スーツ。
外骨格というか、筋肉増強の大リーグ養成ギブスのごとき外観は、脳や神経系に直接ボルトで接続するという、乱暴極まりない代物で、これはかなり痛そう。
術後、手術した人間が「おいおい、生きてるゼ」とばかりひるむのがブラックで笑えました。
瀕死でよれよれのマックスは、こいつによってパワー満点の戦闘マシンになるのです。
その大立ち回りは痛快でした。
演じるマット・デイモンは相変わらずの好演で、マックスはどんぴしゃ。
ジェイソン・ボーンとは全く違った活劇ヒーローを演じていました。


ヒーローに対しての悪役という事で、冷徹な長官役ジョディ・フォスターが登場します。
彼女もやはり上手いのですが、その手先として暗躍…どころか、派手に暴れるのがクルーガーという暗殺者。
演じるのはシャールト・コプリー
第9地区』での明るい愛妻家、でも頭が悪くて義父の威光で役職に就いている小役人を演じていた彼が、こちらでは登場するだけでヤバそうな極悪人を演じています。
地声は高めなものの、眼光からして異様な迫力。
部下2人を率いて大暴れ、躊躇無く主人公に倒してもらいたくなる儲け役です。
コプリーの存在感が映画には大きく貢献していました。


エリジウム』は欠点も多いのに、娯楽活劇SF映画としてはかなり楽しめます。
私は気に入ったし、また『第9地区』を観直したくなりましたよ。