days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

ハロウィン風のカボチャムース@Lis Colline(リスコリヌ)→『凶悪』ミッドナイトショウ


息子の予防接種の為の通院を母にお願いしていたので、退社後は実家まで子供たちを引取りに行きます。
お土産は実家近くの美味しいケーキ屋さん、リス コリヌで幾つかケーキを買いました。
夕食後、私が食べたのは今の季節にぴったり。
ハロウィン風のカボチャムースです。
ふんわり軽く、美味しかった。
可愛らしい容器は洗って持ち帰りました。
何かに使えますからね。

  • Lis Colline(リスコリヌ)
  • 住所:東京都町田市玉川学園5-1-4
  • 電話:042-720-3830
  • 紹介サイト


明日は娘の運動会ですので、お弁当の準備をしてから、ミッドナイトショウに出掛けました。
観たのは『凶悪』です。
金曜0時20分からの回は20人近い入り。
結構ヒットしているのですね。
なのにこの3連休からは朝いちのみの上映、とは勿体無いなぁ。


雑誌記者の藤井(山田孝之)は、編集部に届いた手紙の差出人である拘置中の死刑囚・須藤(ピエール瀧)に会いに行く。
元ヤクザの須藤は、告発された事件以外にも3件の殺人事件に関わっており、その首謀者は自分が「先生」と呼んでいた男だという。
先生がのうのうとシャバで生きているのは許せない、というのが告発の同期だと言う。
やがて須藤はおぞましい事件を語り始めた。
藤井は須藤の言葉の裏付けを行うべく調査を進めて行く。
やがて藤井の前に、「先生」と呼ばれる不動産ブローカーの木村(リリー・フランキー)が現れる。


死刑囚の証言により別の殺人事件が浮上したという実話と、そのスクープをまとめたノンフィクションが原作です。
もっとも映画はかなり脚色が成されているらしく、冒頭にも「これは実話を基にしたフィクション」だとはっきり書かれています。
だから映画は実話の持つ迫力云々というよりも、如何に残酷な事をしてきた人たちがいたか、そしてそれを追い詰めようとする側がどのように変貌するのか、を描き出したスリリングなドラマとなっていました。


先生と須藤は2人で1人の男たちです。
不動産を持っている老人に目を付け、殺害し、略奪して売却するという手口は、鬼畜そのもの。
先生は獲物に目を付け、計画し、須藤は殺人や死体処理等の汚れ仕事を担います。
細身でにこやかな、でもどこか胡散臭く、その実は冷酷な中年男をリリー・フランキーが、凶暴で凶悪な、でも情にもろいヤクザをピエール瀧が、それぞれ好演していました。
いや実際この映画の役者は皆、素晴らしいと思います。
藤井役の山田孝之も、家庭を顧みずに事件に没頭して行く破滅型の記者を熱演しています。
脇役だって実力派が揃っていました。
藤井の妻で、ボケ気味である藤井の実母の世話で疲れ切った洋子役の池脇千鶴も良かった。
須藤の内縁の妻役、松岡依都美も印象に残りました。


これが長編2作目という白石和彌の演出と脚本(高橋泉と共同)はがっちりしており、生真面目に題材に取り組んでいます。
デヴィッド・フィンチャーの力作『ゾディアック』のように、連続殺人事件の謎を追う記者が事件にのめり込んでいくというパターンですが、終始緊張感が途切れず、扇情的にもならず、冷え冷えとしたタッチで人間を描こうとしていて、これは注目の監督でしょう。
しかし終盤、舞台劇調・説明調の台詞の幾つかで、私はすっかり醒めてしまいました。
あれは何とかならなかったのでしょうか。
急に綺麗に映画をまとめようとする邪念が、映画の持つ力を邪魔してしまったのです。
映画の製作陣は、もっと映画の力、映像の力、役者の力、観客の想像の力を信じても良かったのではないでしょうか。
求心力のある映画だっただけに、勿体無い、本当に勿体無い。
惜しい。
クリント・イーストウッドが監督だったらこうはならなかったろう…等と言っても始まらないのですが。


また須藤が、藤井が、追いかける木村という男。
リリー・フランキーは良かったのですが、唾棄すべき冷徹な狂気の男だからこそ、どこか「憧れの対象」として描くべきでした。
いや、須藤と木村で1人なのだから、この2人共、藤井や観客にとっての「アイドル」として描くべきでした。
その点でも、白石監督の上品さが邪魔したように思えました。


ともあれ、『凶悪』が見応えのあるスリラー/ドラマなのは間違いありません。
機会があったらご覧下さいな。