days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

夢と狂気の王国


夢と狂気の王国』をミッドナイトショウ鑑賞して来ました。
公開1週目が終わる金曜23時50分からの回は、私を入れて男性4人のみの入り。
今一番観たい映画は『キャプテン・フィリップス』だと言うのに、すぐに上映回数が少なくなってしまいそうな映画から観に行くというのは、良いのだか悪いのだか。


映画はスタジオジブリの裏側、素顔を明らかにしたドキュメンタリ映画です。
面白いのは、ドキュメンタリ映画って監督が前面に出て来ても良いのだな、と改めて思わされる事。
マイケル・ムーアの映画ほどではないけれども、監督・撮影・ナレーションを手掛ける砂田麻美の極私的視点が面白い。
可愛らしい小物やちょっとしたファニーな事物にも、例え数秒でも挿入して、独特の雰囲気を醸し出していました。


とは言え、彼女の目の前に立ちはだかるのは巨人たちであります。
宮崎駿鈴木敏夫、それに高畑勲の3人です。
建屋が違うからか、高畑勲は過去のアーカイヴ以外では殆ど登場しないのが残念。
ともあれ、砂田は宮崎、鈴木に密着して行きます。
風立ちぬ』メイキング映画としても鑑賞可能な本作は、同時にジブリの裏側で何が起きているのかを抜き出していきます。
切れ者でいささか山師的な、世間への売り込み上手で食えない鈴木。
私のようなものぐさ人間にはとても出来ないような、日々の儀式を繰り返す宮崎。
改めて宮崎駿は偉大なる変人で、未だに憤怒に満ちた天才だと映画は知らしめています。


宮崎は自分の映画が描くテーマ同様に、素顔は辛辣な人でした。
ジブリの将来は無いとまで言っている厳しいリアリストです。
そして徹底した反戦主義者でもあります。
しかしファンタシーに秀でた作家でもあるし、また軍用の機械にも入れ込んでいる男でもあります。
これらの矛盾は鈴木や宮崎自身の言葉で解説されてはいますが、ここら辺は既に既知の情報なので、驚くに当たりませんでした。
個人的にはもっと宮崎と高畑の心の闇にまで突っ込んでもらいたかったところ。
しかしこれはこれで、ジブリの様子や宮崎像を殆ど映画本編でしか知らないような人にとっては、見やすく興味深い映画には仕上がっていると思います。