days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Gravity


ゼロ・グラビティ』をIMAX 3Dにて鑑賞しました。
今回は2度目になります。
1度目は12月20日ユナイテッドシネマとしまえんにて、2度目は1月4日に109シネマズグランベリーモールにて。
共にIMAX 3Dでした。


高度600kmの軌道上で、スペースシャトルがスペース・デブリ(宇宙のゴミ)に当たり大破、船外活動中だった医療技師のライアン・ストーン博士(サンドラ・ブロック)と、ヴェテラン宇宙飛行士マット・コワルスキー(ジョージ・クルーニー)だけが生き残ってしまう。
地上との通信は途絶え、2人を繋ぐのは命綱のみ。
残っている酸素はわずか。
絶体絶命の状況下、2人は必死に地球への帰還を目指すが。


上映時間91分、舞台は殆どが宇宙空間、登場人物は殆ど2人のみ。
これだけ聞くと地味な小品に思える向きもありましょうが、冒頭の10分程(しかも1ショット映像)を除いては危機また危機のアクション・スリラー映画としても観られる映画なのです。
無駄な人物やドラマ、場面やショットですら削ぎ落としたかのような作りですが、サンドラ・ブロック演ずるストーン博士のドラマも描かれており、密度の濃い1時間半でした。
それに何よりも壮大な映像が物凄い。
ドキュメンタリ調に臨場感あふれるものとする為に、極力1場面を1ショットに収めようという強い意志で作られた映画は、何しろ冒頭の船外活動から事故に至るまでの十数分が1ショット(に見えるように)撮られているのです。
キャメラは何百キロもの遠くから、時にはヘルメットの中にまで入り込み、また主観映像にすらなります。
最新技術を投入した映像体験は他に代えがたいもの。
3D効果によって宇宙空間の「深さ」がより体感出来るようになっているし、また無重力空間に浮かぶ物体も時にはドラマとして効果的な役目すら担っているのです。
強烈なのは宇宙空間の恐怖です。
上下左右も分からず、ただ深淵に投げ出されたおののきが体感できます。
まずは3D上映での鑑賞を、出来れば高画質大画面・大音響のIMAX上映を強くお勧めしたい。


そしてサンドラ・ブロックです。
正直に言って彼女が、演技者としてこんなに素晴らしい女優だとは思いもしませんでした。
感情の起伏や人物の変化を見せつつ、多面的な人物像を見せてくれるし、しかも感動的な場面は彼女の演技によるところも大きい。
文字通りに、この映画を背負って立っているのです。
もちろん、軽妙なクルーニーの好演も見逃せません。
ブロックとの対比にもなっていて、儲け役だが印象に残るものとなっていました。


映画は1人の女性の死闘を描きつつ、普遍的な「生と死」に関するドラマになっており、こちらも面白い。
劇中で幾度か登場する再生もしくは誕生のメタファーは、本作に大きな影響を与えている『2001年宇宙の旅』とリンクするもの。
実際、あちらを想起させるイメージは幾つもあり、そこに気付いてほくそ笑むのもSF映画ファンならではの楽しみです。


宇宙空間では音が無い筈なのですが、本作は独自のルールを設けています。
基本的に人物が触れたものしか音がしません。
つまり触感を音で表現しているのです。
もっとも、物語が進行するに連れてルールは破られ、効果音が大きくなっていきます。
後半の劇的効果を盛り上げる為なのでしょうが、『2001年』以来の宇宙では音がしない映画を期待していたので、少々残念でありました。


スティーヴン・プライスの音楽は、マイケル・ナイマンの『ガタカ』を思い出させる哀愁を帯びた旋律もあるものの、こちらもヒロインの心理を描こうとしていて効果的でした。