days of cinema, music and food

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The Hunger Games: Catching Fire


ハンガー・ゲーム2』を土曜のミッドナイトショウ鑑賞with近所のM田さん。
0時5分からの回は6人の入りとは寂しい。


文明崩壊後のアメリカ大陸は独裁国家ネムと化しており、そこでは富裕層のみが居住を許される都市キャピトルが12の地区を支配していた。
ネムでは毎年1回、12歳から18歳の少年少女を選別して最後の1人になるまで殺し合いをさせるサバイバル・ゲーム「ハンガー・ゲーム」が開催されており、勝者は一生困らない巨額の富を得られた。
一家を狩猟で養う少女カットニス(ジェニファー・ローレンス)は、幼い妹がハンガー・ゲームに選出された事から、とっさに身代わりを申し出る。
精鋭達相手に死闘を繰り広げ、同級生ピータ(ジョシュ・ハッチャーソン)と共に生き残ったカットニスだが、ゲームは心に深い傷を残していた。
一方、カットニスを自由の象徴として、反乱の気運が高まる国民の気配を察した大統領スノウ(ドナルド・サザーランド)は、新任ゲームメイカーのプルタークフィリップ・シーモア・ホフマン)と共に策略を練る。
ハンガーゲーム開催の第75回を記念して、過去の優勝者のみを選出して、カットニス抹殺を狙うのだ。


前作はいつ面白くなるのか、と思っている内に終わってしまった凡作でした。
監督が珍しく凡打を放ったゲイリー・ロスから交代したとは言え、その続編だから余り期待出来ないのは正直なところ。
しかし嬉しい事に、今度のは単に面白いだけではなく、かなり上出来の映画にすらなっているのです。
前半はじっくりと時間を掛けて、カットニスの内面や、彼女に想いを寄せるピータを描きつつ、不穏なパネムの状況を描いています。
各人の様々な思いが交錯する中、殆ど八百長でカットニスが選ばれ、しかもピータも立候補するのです。
カットニスにはゲイル(リアム・ヘムズワース)という恋人がいるのですが、パネムはハンガーゲームの生き残りの2人をカップルとして演出し、彼らは世間的には恋人同士としてふるまわなくてはなりません。
ここら辺、スーザン・コリンズの原作がジュブナイルだからなのでしょうが、大人から見ても赤面しないで済むような節度ある脚本と演出、説得力のある演技で、きちんと観られるようになっています。
脚本はダニー・ボイルの『スラムドッグ$ミリオネア』や『127時間』のサイモン・ビュアフォイと、『リトル・ミス・サンシャイン』のマイケル・アーント
人間を描ける脚本家を揃えてのドラマ部分強化はかなり効果が出たと言って良いでしょう。
もっともこれは原作の欠点でもあるのでしょうが、不確定要素の多過ぎる「計画」など、本当に大丈夫なのかと思わせますが、観ていて許容範囲内でもありました。
第一、面白いし充実しているのだから良いじゃないか、という気にさせます。


監督はフランシス・ローレンス
コンスタンティン』や、リチャード・マシスンの原作をブチ壊した『アイ・アム・レジェンド』といった、大掛かりな視覚効果を用いた凡作映画の監督だけに、まさかの大当たりです。
中盤からハンガーゲーム開催への緊張感も盛り上がり、またいざ実際にゲームの幕が切って落とされると、アクションとサスペンスもきちんと描けていました。
2時間半近い長尺の映画なのに、最初から最後まで興味と緊張感が持続し、これはあっぱれ。
余談ですが、先日の映画仲間飲み会で、3部作の第2部は傑作が多いという意見が出ていました。
スター・ウォーズ/帝国の逆襲』に『ロード・オブ・ザ・リング二つの塔』に『ダークナイト』がその証しである、と。
なるほど、本作もそれに当てはまる資格は十分にありそうです。
第3部は2本に分割した映画になるようですが、本作以上の内容と出来となると、相当にハードルは高いのではないでしょうか。


それにしても、若きジェニファー・ローレンスです。
型通りのカリスマティックな役どころにならず、深みのある、多面的なヒロインを演じていました。
もちろん大作の中心人物として十分。
本作での彼女は観客の興味を引っぱる点では牽引者なのに、物語上は翻弄される役どころ。
次回作以降は彼女が物語上も牽引して行くのでは、と想像されます。
まだ若いし演技力もあるし、次回作も含めて、これからが本当に楽しみな女優ですよ。


脇役も楽しい。
大統領サザーランド、歴戦勝者でアドバイザーのウディ・ハレルソン、常にハイテンションでエキセントリックな司会者スタンリー・トゥッチ、浮世離れしているPR担当エリザベス・バンクス、スタイリスト役レニー・クラヴィッツら前作からの続投組は安心して観られます。
加えて今回は新参組も面白い顔触れなのです。シーモア・ホフマン、歴代勝者役のジェフリー・ライトジェナ・マローン、さらに超久しぶりのアマンダ・プラマーと、中堅どころを揃えて厚みを出していました。


字幕で気になったのが1点。
邦題はポスターでは『ハンガーゲーム』と「・(ナカグロ)」が無いのに、劇中の字幕ではナカグロありの「ハンガー・ゲーム」表記でした。
ポスターが正しいのか。
でも公式サイトではナカグロありですし。
統一されていないと気になって仕方なかったですよ。


これは上出来のSF映画なのです。
お勧めです。