days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

"Tombstone" on DVD-VIDEO


親切な同僚からお借りした『トゥームストーン』DVDを自宅にて鑑賞しました。


1881年アメリカ西部の無法の町トゥームストーン。
保安官を引退したワイアット・アープ(カート・ラッセル)と、その兄ヴァージル(サム・エリオット)、弟モーガンビル・パクストン)らは、それぞれ妻を連れ添って町にやって来る。
ここで腰を据えて財を成そうというのだ。
アープ兄弟は賭博場の胴元になって商売は順風満帆となるが、やがて無法者集団カウボーイズとの緊張が高まり、OKコラルの銃撃戦となってしまう。
死者が出たこの撃ち合いをきっかけに、血で血を洗う両者の復讐戦の幕が切って落とされる。







長年観たくて観られなかった1993年の映画。
そうかぁ、もう20年も前の映画なのですね。
当時のハリウッドでは西部劇復古調第2弾とばかり、同じくワイアット・アープを主人公にしたケヴィン・コスナーの『ワイアット・アープ』も封切られたりしたものでした。
あちらは渋谷パンテオンで観ましたが、本作は見逃しています。
どちらも史実に近いというのが売りの映画ですが、人間ドラマ重視のあちらに対し、こちらはアクション重視の映画になっていました。
で、どちらが面白いかと言うと、歯切れの良いこちらなのです。


言うまでも無く、「OKコラルの決闘」は「OK牧場の決闘」としても知られる、西部劇史上最も有名な銃撃戦です。
この決闘を題材にした映画には、『荒野の決闘』や『OK牧場の決斗』など、名作が既にあります。
どちらもアープ兄弟らとクライトン一家との緊張が高まって、牧場での決闘で決着が着くという内容でした。
こちらは史実同様にそうではありません。
そもそも牧場ではない、牛馬をつなぐ狭い場所のコラルでの至近距離での撃ち合いという、全く爽快感の無い殺し合いをきっかけに、アープ一派もクライトン一派も、お互いに保安官の資格を持って相手を無法者呼ばわりして殺し合うようになる、という事件なのですから。
映画もコラルでの撃ち合い以降、流血描写も含めて現代アクション映画風の暴力描写になるのが興味深い。
往年の古き良き西部劇など構っていやしない映画なのです。
アクション描写は『ランボー/怒りの脱出』を得たジョージ・P・コスマトス監督だけあって、迫力あるものになっていました。


ドラマ的には食い足りない部分もあります。
特に有名な肺病持ちのドク・ホリデイとワイアットの繋がりが前半でもう少し欲しい。
テンポ重視でカットされたのでしょうか。
それでもラッセルもキルマーも楽しい。
キルマーは常に青白いメイクに汗が顔に浮いていて、如何にも具合が悪そうでございな演技で少々臭いのですが、この映画ではそれで良いのです。
この映画の見せ場をかっさらってしまうのですからね。
悪役リンゴー・キッド役のマイケル・ビーンは、出色の悪党です。
史実通りに教養ある人物としても描かれていますが、何よりビーンの銃さばきは見ものですらあります。
他にも後のスターがぞろぞろ出ているので、彼らの顔を探すのも楽しい。
アイク・クラントンはどっかで見た顔だ…と思ったら、スティーヴン・ラング
後年の『アバター』の悪役大佐が超卑劣漢役とは。
他に一目で分かるトーマス・ヘイデン・チャーチに、ハンサムなビリー・ゼインマイケル・ルーカーチャールトン・ヘストンまで出ています。
ビリー・ボブ・ソーントンってどこに出ていたんだ!?
贔屓だったジョアナ・パクラはやはり眼福。
ナレーションがロバート・ミッチャムで、これは嬉しい。


本作で一番感銘を受けたのは、ウィリアム・A・フレイカーの撮影でした。
ワイド画面を目いっぱい使った構図がビシバシ出て来て痺れます。
手前に人物の顔のアップ、奥手にピントのあった人物といった構図も多い。
顔や目のどアップが多いのはマカロニ調でしょうね。
ワイドスクリーンならではの楽しみが満載でした。
もちろん、ブルース・ブロートンの音楽も素晴らしかったのは言うまでもありません。
黒で決めた男達のスーツ姿も美しい。


リンゴの台詞に旧約聖書の「青白い騎士」が登場します。
これってクリント・イーストウッドの傑作西部劇『ペイルライダー』への目配せなのかな?


トゥームストーン [DVD]

トゥームストーン [DVD]