days of cinema, music and food

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American Hustle


期待の『アメリカン・ハッスル』を鑑賞しました。
土曜日、12時15分からの回は映画の日だからか、401席の劇場はほぼ5割の入り。
…そう、この日は映画の日だとすっかり忘れてしまったのです。
TOHOシネマズのポイントを消費してしまったのでした… (T-T)


1970年代後半。
詐欺師アーヴィン(クリスチャン・ベイル)と、その愛人兼ビジネス・パートナーのシドニーエイミー・アダムス)は、とうとう年貢の納め時を知る。
自分達を逮捕したFBI捜査官リッチー(ブラッドリー・クーパー)に、自由の身と引き換えに囮捜査への協力を強いられたのだ。
偽のアラブの富豪をでっちあげ、カジノ建設の利権に群がる政治家に金を渡し、次々捕まえようという捜査だ。
ターゲットとなった善良な市長カーマイン(ジェレミー・レナー)に近付くアーヴィンだったが、マフィアの暗躍も始まり、またアーヴィンの若妻ロザリン(ジェニファー・ローレンス)も危なっかしい動きを見せるようになる。


1979年に起きた大物政治家が次々逮捕されたというアブスキャム事件は知りませんでしたが、これはかなりフィクショナルな映画のようです。
ともあれ、ここはまず、演技の出来る美形スター達の異形振りを楽しむのが先でしょう。
でっぷり太り、頭髪がかなり薄くなったベイル(冒頭から笑わせてくれます)。
常に胸の谷間が露わになっているアダムス。
パンチパーマのクーパー。
リーゼント・ヘアの変種のレナー。
ローレンスのセクシー・ブロンド。
彼ら彼女らの普段とは違うルックスと70年代衣装で、目を楽しませてくれます。


狡猾で見栄っ張りなのに、善良な部分も持ち合わせている憎めない男役ベイルも、切れやすいクーパーも、善良なレナーも良い。
しかしこの映画で主導権を握っているのは2人の美女達です。
アダムスはパートナーよりも強気で、いざとなったら度胸でも勝負出来る詐欺師として、映画を引っ張ります。
ローレンスは混沌とした状況を混ぜっ返し、時に頭の冴えを見せ、さらに混迷度を深めます。
この2人の善悪好悪など気にせず、活き活きと泳ぎ回る姿は痛快でした。
特に実質の主役はアダムスと言って良く、これは彼女の間違いなく代表作です。
華やかでありながら孤独感を抱えている女。
頭脳と度胸、センスで生き延びてきた女。
ローレンスも出番は左程多くないものの、出て来るだけで画面が華やぎます。
本作はこの女優2人の輝きを観るのが最大の楽しみと言えます。


デヴィッド・O・ラッセルの演出は、珍しくマーティン・スコセッシ調でした。
動き回るカメラ、素早いカッティングやクロースアップ、そして当時のポップスの氾濫。
スコセッシの『グッドフェローズ』、『カジノ』といった傑作を思い出せば良いでしょう。
あの過剰なスタイルへのオマージュを捧げながらも、温かみのある眼差しで欠点だらけの人間達を見つめ、愛でているのがラッセルの個性です。
とある大スターのカメオロールも嬉しい驚きでした。
音楽ではポール・マッカートニーウィングスの『007/死ぬのは奴らだ』の使い方に笑わせられます。


物語としても非常に面白い。
詐欺師映画としての痛快度も高い。
特に終盤は爽快感があり、軽やかな足取りで劇場を後に出来ました。
アメリカン・ハッスル』はスター達のアンサンブルや、リッチな映像と音楽、ひねくれた物語で、映画的興奮が詰まっています。
お勧めの映画です。