days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Captain America: The Winter Soldier


キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』を近所のM田さんとミッドナイト鑑賞しました。
土曜0時15分からの回は15人程度の入り。
うーん、寂しいですなぁ。
とても良い映画だったのに。


2年前にアベンジャーズの一員として、異星人種族チタウリの地球侵略を退けたキャプテン・アメリカことスティーヴ・ロジャース(クリス・エヴァンス)は、共に活躍したブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフ(スカーレット・ヨハンソン)と一緒に諜報機関S.H.I.E.L.D.の下で働いていた。
ジョルジュ・バトロック(ジョルジュ・サンピエール)に統率されているアルジェリア系海賊にシージャックされた船舶から、人質に取られているS.H.I.E.L.D.隊員達を救出を任されたロジャースとロマノフは、これをきっかけに巨大な陰謀に巻き込まれて行く。
今まで仲間だったS.H.I.E.L.D.隊員らに襲い掛かられ、さらには長官ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)までもが襲撃を受けてしまう。
そして彼らの前には、無敵かつ正体不明の殺し屋ウィンター・ソルジャーが立ちはだかる。


自らが所属する巨大諜報機関の陰謀を知った職員が、追手から逃げ回りながら真相に近付いて行く…というプロットでまず思い出されるのが、ロバート・レッドフォード主演の1975年の名作スリラー『コンドル』です。
リベラルで人間味のあるヒーローを多く演じて長年活躍してきたそのレッドフォードが、本作ではS.H.I.E.L.D.トップとして配役されているのがとても面白い。
キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』は、1970年代風の政治スリラーを、現代アメコミ・ヒーロー映画として映画化するとこうなる、という好例になりました。
こう書くとアナクロなスリラーに思えるかも知れません。
しかし我々には、CIA末端職員だったエドワード・スノーデンオバマ政権の諜報活動をバラし、追われているのが記憶に残っています。
また映画に活かされているネタとして、オバマ政権が無人機を多用して「テロリスト」と目した人々を攻撃しているのも知っています。
つまりこの映画は、同時代性を盛り込んだスリラーにもなっているのです。
クリストファー・マルクスとスティーヴン・マクフィーリーの脚本家コンビには称賛を送りたい。


キャプテン・アメリカは純情すぎるくらいに真っ直ぐな性格の、名前通りに愛国心溢れる男です。
その彼が、愛してやまない国家への疑問を抱き、忠誠心を試されます。
しかし彼は悩みません。
自らに正直に決断し、行動します。
近年の悩めるヒーロー映画群に対して、何と潔い事でしょうか。
136分と長尺の、しかし緊張感満点のこの映画にスピード感をもたらしているのは、間違いなく主人公の真っ直ぐさです。
キャプテン・アメリカは考えても悩まないのですから。
荒唐無稽そのものと思える彼を、今回もクリス・エヴァンスは嫌味なく演じています。
見逃せないのはエヴァンスと共演者達との相性の良さです。
ロマンスではない感情が芽生えるブラック・ウィドウ役スカーレット・ヨハンソンとも、退役軍人にしてカウンセラーでもある後のファルコンことサム・ウィルソン演じるアンソニー・マッキーとも、です。
彼ら3人の関係には居心地の良さ、リラックスしたものが見て取れ、緊張感のある映画の清涼剤ともなっています。


そして何より、この映画は優れたアクション・スリラーです。
映画には素晴らしい、文字通り息を呑むようなアクション場面が幾つも用意されているのです。
序盤のシージャック船制圧からして良いが、市街戦へと展開していく2つの場面は、近年のアクション映画の中でも屈指の出来栄えでしょう。
ニック・フューリーが襲撃を受ける場面と、キャップ、ブラック・ウィドウ、ファルコンがハイウェイでウィンター・ソルジャー率いる傭兵軍団から襲撃を受ける場面がそうです。
絶体絶命の状況下での緊張と、反撃のカタルシスを盛り込んだアクションの引っ張り方が見事だし、文字通り手に汗握る迫力満点の展開をなっています。
もしこれがアクション映画の基準になったとしたら、ハードルはかなり高くなったと言わざるを得ません。
私にはこれがお初のアンソニー・ルッソジョー・ルッソの兄弟監督は、マーベルの起用に応えて思い切りの良さと緻密さを兼ね備えた演出を見せてくれました。
映画後半では加速度的な盛り上がりと、目もくらむような大アクションを楽しませてくれます。
ユーモアの配分も良い。


幾つものモラルの問題を織り込みながら同時代性を抱き、優れたアクション・スリラーでありながらも、スーパー・ヒーロー映画として成立しています。
アメリカン・コミック映画の中でもかなり上出来の部類に入りました。
お見逃し無きよう。