days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Lone Suvivor


邦題『ローン・サバイバー』鑑賞with近所のM田さん。
3月21日の鑑賞です。


2005年6月。アメリカ海軍の特殊部隊ネイビー・シールズに対して、極秘任務が下される。アフガニスタン山岳地帯に潜むビン・ラディンの側近でタリバンのリーダー、アフマド・シャー殺害をせよ、というのだ。実行部隊は4人。リーダーのマイケル・マーフィ大尉(テイラー・キッチュ)、マーカス・ラトレル二等兵曹(マーク・ウォールバーグ)、マシュー・アクセルソン二等兵曹(ベン・フォスター)、ダニー・ディーツ二等兵曹(エミール・ハーシュ)がメンバーだ。エリック・クリステンセン少佐(エリック・バナ)指揮の元、電波の悪い険しい山に降り立った彼らだが、隠密作戦の最中、羊飼い達に見つかってしまう。民間人である彼らを殺害すれば、倫理に背くだけではなく、世界中からの非難を浴びて大問題へとなる。しかし見逃せばタリバンに通報され、追われる危険が高い。無線が通じない孤立した中で、4人は激論し、遂には羊飼いたちを解放する。その結果…200人ものタリバン兵らが追って来たのだった。


アメリカ軍に大損害をもたらしたというレッド・ウィング作戦の映画化です。
私はこの作戦自体知らなかったのですが、孤立無援で絶体絶命の中、奇跡的に生き延びた兵士の手記を基にしているようです。


映画はシールズの過酷な訓練模様を捉えたドキュメンタリ映像で幕を開けます。
常人だったらとても耐えられないような、文字通りしごきとしか言いようのない、理不尽なまでの訓練では、脱落者も続々出て来ます。
この試練をくぐり抜けられた者達だけが持ち得る一心同体の精神は、必然でしょう。
これが映画中盤以降の戦闘場面で効いて来ます。


監督と脚本はピーター・バーグ
近年は俳優としてよりも監督&脚本家として活動中の人です。
特に『キングダム/見えざる敵』『バトルシップ』での歯切れの良いアクションが印象的でした。
本作は作戦遂行と同時に緊張感が澱み無く続き、アクションも観ていて痛い描写が満載。
一般人ならばとっくに死んでいるであろう状況でさえ、シールズ隊員らは戦い続けるのですから。
観客を実戦に放り込んだかのような、臨場感満点で力強い演出が目を引きます。
私は彼の監督作品全作を観た訳ではありませんが、これは監督としての力量が最高に発揮された作品ではないでしょうか。


一方で気になる点も出て来ました。
冒頭のドキュメンタリ映像から、仲間同士の強固な結束、自己犠牲等、余りに海兵隊万歳の映画ではないのか、と。
観終えた直後はそう思いました。
しかし時間が経ってから、この映画での山場は実は好戦性とは対照的な事に気付かされまます。
映画序盤の最初の山場は、捕えた羊飼い達をどうするか、という場面です。
シールズ隊員同士での、生かすか殺すかの大激論。
しかし最終的に彼らは、自分達を死地へと追い込むであろう選択を行います。
そして後半の山場。
生き残った兵士に思わぬ助けがやって来るのです。


苛烈な戦闘場面が強烈な映画ですが、最も重きを置かれているのは、「殺す」のではなく「生かす」「助ける」行動であり、その精神の気高さでした。
バーグは軍事マニアだそうですが、そのような視点を持っているところが単なるマニアではない証し。
これは中々に骨太な映画なのです。


主要人物が皆髭面、戦闘場面もカタルシスがまるでない臨場感重視という映画ですが、静と動の音響デザインも含めて細部まで丁寧に作られていました。
俳優達も皆、熱演しています。